野菜のなかでも身近な存在である「にんじん」。
カレーやサラダ、煮物など、日常的に口にすることが多い食材です。
そのにんじんについて、「よく食べる人はがんのリスクが低い」
という観察結果があることをご存じでしょうか。
なぜにんじんががんのリスクを下げるのか
――その詳しい仕組みはまだ完全には解明されていません。
しかし、近年の研究で、にんじんに含まれる特有の成分が健康に
大きな効果をもたらす可能性があることがわかってきました。
今回はその最新研究を紹介するとともに、私たちの生活に
どのように活かせるのかを考えていきます。

にんじんといえば「カロテンが豊富」というイメージを持つ方も多いでしょう。
実際に、にんじんには強力な抗酸化作用をもつカロテノイドが豊富に含まれています。
特に代表的なのが アルファカロテン や ベータカロテン。
これらは体内でビタミンAに変換され、細胞の老化を防ぐ働きや、免疫をサポートする働きがあります。研究によって、発がんの抑制や腫瘍の進行を遅らせる効果があることも報告されてきました。
にんじんはこうしたカロテノイド以外にも、まだ十分に解明されていない
数多くの「ファイトケミカル(植物由来の機能性成分)」を含んでいると考えられています。
2024年12月に国際的な学術誌 Nature Communications に掲載された研究で、にんじんからこれまで知られていなかった新しい成分が見つかりました。
その名は イソファルカリントリオール(Isofalcarinol-triol, IFT)
と呼ばれる天然のポリアセチレンです。
研究チームは1200種類以上の植物由来成分を調べ、細胞のエネルギー代謝や
抗酸化作用に関与する「NRF2」という分子を活性化させる物質を探しました。
その中で最も有望だったのが、このIFTでした。
IFTには、従来知られているカロテノイドとは異なる働きがあります。
さらに驚くべきことに、このIFTには がん細胞の増殖を抑える作用 も確認されました。
乳がん、肝がん、大腸がんの細胞を対象にした実験では、
IFTを加えた培養皿ではコロニー形成(がん細胞の増殖)が大幅に減少したのです。
ただし、ここで強調しておきたいのは、これらの結果は 基礎研究の段階 にあるということです。
現時点では細胞や動物を用いた実験であり、人間に対する臨床試験は行われていません。
したがって「にんじんを食べればがんが治る」といった短絡的な結論を出すことはできません。
それでも、「にんじんを食べる人はがんのリスクが低い」という過去の観察研究を裏付ける可能性があり、今後の展開に大きな期待が寄せられています。
研究者たちはこのIFTを、老化を遅らせ、健康を底上げする
有望なファイトケミカルとして注目しています。
既に特許の対象として申請されており、将来的にはサプリメントなど
の商品に応用されるかもしれません。
他の有名な成分と比較しても、IFTは非常に低い濃度で効果を発揮するという特徴があります。
しかも天然由来であるため、過剰摂取さえ避ければ副作用の心配も少ないとされています。
これは私たちにとっても大きな安心材料といえるでしょう。
「研究段階だからまだ先の話」と思うかもしれませんが、にんじんを
普段の食生活に取り入れること自体が健康にとってプラスになるのは間違いありません。
例えば、
特にポタージュスープは体を温め、野菜の栄養をまるごと摂れるためおすすめです。
寒い季節には「にんじんポタージュ」で心も体も温まりながら、
健康習慣を続けてみてはいかがでしょうか。

にんじんは昔から「体に良い野菜」として親しまれてきました。
そこに最新研究が加わり、がんの抑制や老化防止にまで
つながる可能性が示されたことで、その価値はさらに高まっています。
もちろん、まだ人への効果が確定したわけではありません。
しかし、日々の食事でにんじんを多めに取り入れることは、
健康維持のためにできるシンプルで現実的な一歩です。
「食卓の常連」が、実は私たちの未来の健康を支えてくれるかもしれない――。
にんじんの新たな可能性に、これからも注目していきたいですね。