私たちの生活の中で、思いがけない場面で「火傷」や「怪我」をしてしまうことがあります。料理をしているとき、熱い鍋や油に触れてしまったり、子どもが遊んでいるときに転んで擦り傷を作ってしまったりすることは、誰にでも起こり得ることです。そんなときに、どのように応急処置を行うかで、その後の治り方や傷跡の残り方が大きく変わってきます。
本記事では、火傷や怪我をしたときに多くの方がやってしまいがちな「誤った応急処置」と、その代わりに本当に有効な「正しい応急処置」について、分かりやすく解説します。

火傷をしたとき、人が直感的に取ってしまう行動にはいくつかの誤りがあります。代表的なものを三つ挙げてみましょう。
(1)氷で冷やそうとする
火傷と聞くと、「まずは冷やさないと!」と考える方が多いでしょう。そこで氷を直接あててしまうことがあります。しかし、これは誤った方法です。氷のように極端に冷たいものを直接皮膚にあてると、火傷した細胞だけでなく、周囲の正常な細胞まで凍結して傷めてしまう危険があります。
(2)すぐに消毒薬を使う
「火傷した部分は雑菌が入るかもしれないから、まずは消毒しなければ」と考えて、市販の消毒液をすぐに塗る方も多いでしょう。ですが、これは必ずしも必要ではありません。消毒は傷口に強い刺激を与えるため、かえって治りを遅くする可能性があります。
(3)すぐにガーゼを当てる
「傷口が空気に触れると感染しやすいから」と、慌ててガーゼを当てる方もいます。しかし、ガーゼは皮膚に貼りついてしまうことがあり、病院で処置を受ける際に無理に剝がすと、皮膚をさらに傷つけてしまいます。
これらは一見正しそうに思えますが、実際にはかえって悪化の原因になり得るのです。

火傷をしてしまった場合、最も重要なことは 「流水で冷やす」 ということです。
流水で15分以上冷やす
まず水道水を出しっぱなしにし、その流水で火傷した部分を15分以上冷やしてください。水道水は衛生的であり、ほぼ無菌に近いため、感染の心配も少なく、安全に利用できます。
流水で冷やすことで得られる効果は二つあります。
氷ではなく流水を使う理由
「冷やすなら氷の方が効果的では?」と思うかもしれません。しかし、氷の温度は低すぎて、凍傷のように細胞を壊してしまう可能性があります。一方で水道水の温度は10~20度前後と、人間の体にとって冷却効果がありつつも安全な温度です。ですから、氷ではなく流水が適しているのです。
ガーゼを使う場合の注意点
どうしても保護のためにガーゼを当てたい場合は、強く圧迫せず、軽く覆う程度にしましょう。ガーゼは「摩擦から守る」という点では有効ですが、貼りついてしまうと剝がすときに二次的な損傷を招きます。そのため、病院に行くまでは応急的に軽く覆う程度にとどめておくのが望ましいです。
火傷は、皮膚のどの層までダメージが及んでいるかによって「1度」「2度」「3度」に分類されます。
このように、火傷の深さによって重症度は大きく異なります。どの段階の火傷であっても、広範囲の場合や痛みが強い場合は、必ず医療機関を受診することが大切です。

次に、火傷ではなく「怪我」をした場合の応急処置についてご紹介します。こちらも誤解されやすい点が多いので、ぜひ正しい知識を身につけてください。
やってしまいがちな間違い
怪我をしたとき、多くの人が「消毒してガーゼを当てる」と考えます。もちろん全く間違いではありませんが、必ずしも最善の方法ではありません。消毒薬は皮膚の細胞を傷つけ、自然治癒力を妨げることがあるのです。
正しい応急処置
まず大切なのは、火傷と同じく 流水でしっかり洗い流す ことです。泥やホコリが残ったまま消毒するのは逆効果で、感染のリスクを高めます。水道水で数分間、出血していても構わず洗い流しましょう。
その後、出血がある場合は清潔なガーゼを当てて 上から圧迫する ことで止血します。多くの出血は5分ほど圧迫を続ければ自然に止まります。
ここまで火傷や怪我の応急処置についてご紹介しましたが、応急処置はあくまでも「その場での一時的な対応」にすぎません。火傷や傷は時間が経つにつれて症状が進行したり、感染が広がったりする可能性があります。
したがって、処置をした後はできるだけ早く医療機関を受診し、専門的な診察と処置を受けることが何より重要です。
火傷や怪我をしたときに大切なのは、慌てて消毒やガーゼを用いるのではなく、 まず流水でしっかり洗い流すこと です。火傷の場合は冷却と雑菌除去のために流水で15分以上、怪我の場合は泥や汚れを洗い流すために流水を使うことが基本となります。
そのうえで、必要に応じてガーゼを軽く当てたり、出血時には圧迫止血を行ったりします。そして何より、応急処置の後は医療機関を受診し、専門家の判断を仰ぐことが欠かせません。
正しい知識を身につけておけば、もしものときに落ち着いて対応でき、大切な体を守ることにつながります。