
骨折や関節のケガをしたときに多くの方が経験する「ギプス」。一度は名前を聞いたことがあると思いますが、実際に「なぜギプスを巻くのか」「どの範囲まで巻くのか」「どのくらいの期間巻き続けるのか」といった疑問を持つ方は少なくありません。
本記事では、ギプスに関してよく寄せられる5つの疑問を取り上げ、それぞれを分かりやすく解説していきたいと思います。
1.なぜギプスを巻くの?
2.どこからどこまで巻くの?
3.いつまで巻くの?
4.どうやってつけるの?
5.どうやって外すの?
これらは、患者さんやご家族が診察の際によく尋ねられる代表的な質問です。それでは一つずつ丁寧にみていきましょう。
ギプスを巻く目的は、大きく分けて2つあります。
ケガをした部位を動かしてしまうと、炎症や痛みが強くなり、治りも遅くなります。ギプスで固定することで、患部を安静に保つことができ、自然治癒の過程を助けることができます。
骨が折れると、骨同士がわずかに動くだけでも強い痛みが生じます。さらに、骨が動いたままでは正しく癒合せず、将来的に変形や機能障害の原因にもなります。ギプスは骨の動きを防ぎ、折れた骨をしっかり固定する役割を果たします。
つまり、ギプスは「安静」と「固定」を同時に実現するための非常に重要な医療器具なのです。
ギプスは「ケガをした部位そのもの」だけではなく、その周辺を含めて固定する必要があります。なぜなら、関節や筋肉の動きによって骨や靭帯が引っ張られ、損傷部位が再びずれてしまう可能性があるからです。
いくつかの例を見てみましょう。
すね(下腿)の中央あたりから足の指先まで巻きます。こうすることで足首の動きを完全に制限できます。
太ももの中央からすねの中央までを覆う必要があります。膝関節を固定するときには、膝を少し曲げた状態でギプスを巻きます。伸ばしたままだと、ギプスが抜け落ちてしまうためです。
脛骨の中央で骨折したとしても、その周囲の筋肉の動きを考慮しなければなりません。筋肉は太ももから足先にかけて広く付着しているため、ギプスは太ももの中央から足先までの広範囲に巻かれるのです。
一見すると「折れていない部分まで覆われてしまう」と感じるかもしれませんが、これは骨のずれを防ぐために必要な理論的根拠に基づいた処置です。

固定期間は「骨折」と「関節のケガ(捻挫など)」で異なります。
この期間の根拠は、骨の治癒過程にあります。骨は次のような段階を経て回復していきます。
折れた部分に血の塊ができ、修復の準備が始まります。
柔らかい仮骨(かこつ)ができ、骨がグラつかないようになります。
硬い骨組織が形成され、折れた部分が強固にくっついていきます。
元の骨と同じような構造に修復されていきます。
この流れから、骨折直後の1~2か月が治癒のゴールデンタイムであることが分かります。特に骨性仮骨ができ始めるまでは骨が安定しないため、ギプス固定が不可欠なのです。
ギプスは単なる「石膏」ではなく、現在はグラスファイバー製のものが主流です。軽くて強度が高く、耐水性もあるため、従来よりも使いやすくなっています。
装着の流れは以下の通りです。
グラスファイバーの巻物が真空状態で保存されています。
バケツの水に浸すことで、化学反応(重合)が始まります。
水を軽く絞り、5~10分の硬化する前の時間を使って患部に巻きつけます。
数分後にはカチカチに固まり、強固な固定具となります。
この工程は一見シンプルですが、実際には固定したい関節の角度や体型に合わせて調整する必要があるため、経験豊富な医療従事者が行います。

「固いギプスをどうやって外すのだろう?」と不思議に思う方も多いでしょう。ここで登場するのがギプスカッターです。
ギプスカッターは電動ノコギリのような見た目ですが、刃が前後に細かく振動する仕組みになっています。強力な音と振動により、子どもが怖がって泣いてしまうこともありますが、皮膚は切れないので安心です。
医師や看護師が自分の指に当てて「ほら、切れないでしょう」と見せてくれることもあります。それほど安全性の高い器具なのです。
こうしてギプスは割られ、パカッと開くようにして外されます。
ギプスは単に「骨折したら巻くもの」というイメージ以上に、医学的根拠に基づいた治療法です。
このように、ギプスには多くの工夫と理論が詰め込まれています。実際に装着する機会はあまり歓迎できるものではありませんが、仕組みを理解しておくと安心につながります。
もし今後ギプスを使う場面に遭遇したら、この記事を思い出していただき、少しでも不安の軽減につながれば幸いです。