
近年、私たちの生活は大きく変わってきました。特に新型コロナウイルスの感染拡大以降、リモートワークや在宅勤務が一気に広まり、家で長時間パソコンに向かって座る人が増えました。さらに、休日の過ごし方も外出して体を動かすより、自宅でテレビや動画配信、ゲーム、スマートフォンやタブレットを眺める時間が中心になりがちです。つまり、仕事も遊びも「座って過ごす時間」がどんどん長くなっているのです。
実際、日本人は世界的に見ても座っている時間が非常に長いと言われています。世界20か国で平日に座っている時間を調べた調査によると、平均は1日5時間でした。しかし日本人はその平均を2時間も上回り、なんと7時間も座っているという結果が出ています。これは単純に「座りすぎ」と言わざるを得ない数字です。
そして、ここからが大切なポイントなのですが、座って過ごす時間が長い人は、健康面でさまざまなリスクを抱えやすいことが分かってきています。太りやすくなる、糖が体に溜まりやすくなるといった生活習慣の問題だけでなく、がんにかかる可能性が高くなるという報告が多く出ているのです。特に大腸がん、すい臓がん、子宮体がん、肺がんなどは座る時間との関係が深いと言われています。
日本人を対象とした大規模な調査でも、仕事中に座っている時間が長い人はがんのリスクが全体的に高くなる傾向が見られました。特に男性ではすい臓、女性では肺に関わるリスクが上昇するとの結果が示されています。
ではなぜ、ただ座っているだけでそのような影響が出るのでしょうか。実はその理由はひとつに決まっているわけではなく、いくつかの要因が複雑に関わっていると考えられています。

まず第一に、長時間座ると体を動かさない分、消費するエネルギーが減ります。その結果、体重が増えたり肥満につながりやすくなります。肥満はさまざまな病気の入り口になりやすく、がんのリスクもそのひとつだと考えられています。
第二に、座りながらの娯楽が中心になると、食生活にも影響が出ます。例えばテレビを見ながらスナック菓子や甘い飲み物を口にすることはありませんか。ゲームをしながらついファーストフードを食べる、という人もいるでしょう。こうした「つい手軽に食べられるもの」は高カロリーで栄養バランスを崩しやすく、体に負担をかける原因になります。
第三に、体を動かさない生活は血糖値のコントロールにも悪影響を与えます。食べたものをエネルギーに変える働きが鈍くなり、余分な糖が体に残りやすくなります。これが続くと、体の中で余計なトラブルを引き起こす土台となり、結果的に病気のリスクを押し上げるのです。
そして第四に、運動不足の状態が続くと、体の中で小さな炎症が慢性的に起こりやすくなると言われています。この炎症は目に見える症状としては表れにくいのですが、細胞にとっては負担となり、がん細胞の増殖を助けてしまう要因になると考えられています。
このように複数の悪循環が重なることで、長時間の「座りすぎ」はがんのリスクを押し上げてしまうと考えられているのです。
裏を返せば、座る時間を減らすだけで、がんを含むさまざまな病気の予防につながる可能性があるということです。特別な薬や高価な治療が必要なわけではありません。普段の生活習慣を少し見直すだけで、誰でもすぐに始められる「最も安上がりながん予防法」のひとつが「座る時間を減らすこと」なのです。
では具体的に、日常生活の中でどうすれば座る時間を減らせるのでしょうか。ここからは、すぐに実践できる工夫をいくつかご紹介します。

私たちの生活は便利になる一方で、体を動かす機会が減り、座る時間が増えてしまっています。その積み重ねが、気づかぬうちに健康リスクを高めているのです。しかし逆に考えれば、座る時間を減らすだけで、健康を守る大きな一歩になります。
がん予防と聞くと、大がかりで特別なことを想像するかもしれませんが、実際には日常の小さな習慣の積み重ねが大きな差を生みます。歩く、立つ、体を少し動かす。こうした「座らない工夫」が、最も安上がりで効果的な方法なのです。
今日から少しずつ、生活の中で「座る時間を減らす工夫」を取り入れてみませんか。それが、未来の自分の健康を守る確かな一歩になるはずです。