がんという病気について、多くの人が
「大きくなって体を圧迫する」
「転移して広がっていく」
といったイメージを持っていると思います。
では、がんそのものが「破裂する」ことはあるのでしょうか。
もし破裂した場合、体にはどのような影響が起こるのでしょうか。
今回は、このテーマについて詳しく解説していきたいと思います。

がんが成長すると、腫瘍の内部に圧がかかり、ある時点でその表面が破れてしまう、
いわば「破裂」のような状態になることがあります。
特に消化管にできたがん(胃や大腸など)では
「穿孔(せんこう)」といって、がんが進行し
臓器に穴が空いてしまう場合があります。
つまり、がんは種類や発生部位によっては破裂することがあるのです。
その中でも特に破裂が多いのが「肝細胞がん」です。
肝細胞がんは、日本では比較的多いがんのひとつで、患者さんのおよそ
10%前後が「破裂」を契機に診断されるといわれています。
近年は健康診断や人間ドックで早期発見されることが増えたため、
破裂するほど大きくなるケースは減ってきていますが、依然として注意が必要です。

CT画像では、大きな腫瘍の一部から血管が破れて出血し、腹腔内に血液が溜まっている様子が確認されます。実際の手術の場面でも、がんの一部が破れて出血している状態が観察されることがあります。
肝細胞がんが破裂した場合、最初に現れるのは急激な腹痛です。
出血が多い場合は血圧が急激に低下し、「出血性ショック」
と呼ばれる命にかかわる状態に陥ることもあります。
そのため、破裂は肝細胞がんにおける最も怖い合併症の一つといえるでしょう。
破裂した肝細胞がんの治療は段階的に行われます。
ただし、破裂によってがん細胞が腹腔内に散らばると
「腹膜播種」という転移の形が起こる可能性があります。
そのため再発のリスクが高まり、従来は予後が非常に悪いと考えられていました。
ところが、近年は治療法の進歩により、破裂した場合でも予後が改善してきています。
中国の大規模病院で行われた臨床研究では、破裂した肝細胞がん患者と、
破裂していない患者を年齢・栄養状態・肝機能・腫瘍の大きさ・病期などを
そろえて比較したところ、生存率に有意な差はなかったと報告されています。
つまり、
適切に止血・手術が行われれば、破裂の有無が生存率に影響しない
という結果が得られているのです。

もちろん、破裂する前にがんを見つけることが最も重要です。
では、そのために何ができるでしょうか。
残念ながら日本には「肝がん検診」というものはありません。
しかし、腹部超音波(エコー)検査で肝臓がんを早期発見できる場合があります。
人間ドックや医療機関で一度は受けておくことをおすすめします。
肝細胞がんの背景には、肝炎ウイルス感染があるケースが多く、
とくにB型肝炎ウイルスとの関連が強いことが知られています。
市町村の委託機関では無料でB型・C型肝炎の検査ができることが多いので、ぜひ確認してください。
「お腹が張る」「違和感がある」など軽い症状を放置する人は少なくありません。
しかし症状が長引く場合は、早めに病院を受診することが大切です。
がんは大きくなると「破裂」や「穿孔」を起こすことがあり、その代表例が肝細胞がんです。
破裂した場合は激しい腹痛や出血性ショックなど命に関わる症状を引き起こしますが、
現代の医療では適切な止血処置と手術により、
破裂していないケースと変わらない予後が得られるまでになってきました。
しかし、やはり最も望ましいのは破裂する前に発見することです。
そのためには、定期的な検査、肝炎ウイルスチェック、
体の異変に気づいたときの早めの受診が欠かせません。
「がんが破裂する」という言葉だけ聞くととても
恐ろしく感じますが、知識を持ち、予防や早期発見を意識することで
リスクを大きく減らすことができます。