私たちが日常的に「体が柔らかい」「硬い」と表現するとき、その基準はいったい何によって決まるのでしょうか。実は、柔軟性を形づくる大きな要素は二つあります。
つまり、骨と骨をつなぐ関節がどれほど動くか、そして筋肉がどれほど伸び縮みできるか。この二つのバランスが、身体全体の柔軟性を決定づけているのです。ここでは、関節と筋肉それぞれの特徴と仕組みを掘り下げながら、柔軟性の重要性について解説していきましょう。

関節は骨と骨をつなぐ部位で、その表面を包んでいるのが関節包と呼ばれる袋状の組織です。この関節包の中には潤滑油のような役割を持つ関節液が存在し、関節の動きをスムーズにしています。膝に「水が溜まる」と表現されるのは、この関節液が過剰になった状態を指します。
関節を曲げたり伸ばしたりすると、関節包の一方は引き伸ばされ、反対側は弛む仕組みになっています。そして、伸ばされる側が限界に達すると、それ以上動かなくなります。したがって、関節の柔軟性は、関節包そのものの柔軟性によって大きく左右されるのです。
さらに詳しく見ていくと、関節の柔軟性を決定づける要因は二つあります。
このように、関節の柔らかさは先天的な体質や年齢の影響が大きいのです。特に高齢になると関節包が硬化しやすく、柔軟性は自然と低下していきます。

「自分の関節は柔らかいのか?」を調べる目安として、日本臨床整形外科学会は7つのチェックポイントを示しています。いくつか例を挙げましょう。
この7項目のうち、3つ以上できれば「関節が比較的柔らかい体質」と言えます。ただし、すべてできてしまう場合は逆に柔らかすぎて関節が不安定になる恐れもあり、スポーツ障害や関節痛の原因になり得ます。一方で全くできない場合は、柔軟性が低く硬い体質といえるでしょう。
関節の柔軟性に加えて重要なのが、筋肉の柔軟性です。ここでいう柔らかさは、単に筋肉の組織そのものが「柔らかいか硬いか」ではなく、実は神経反射の仕組みと深く関わっています。
例えば、片足立ちで反対の足首を手でつかみ、大腿前面(大腿四頭筋)を伸ばすポーズを想像してください。このとき筋肉はゆっくりと引き伸ばされます。すると筋肉にあるセンサーが脊髄へ「伸ばされている」という信号を送り、脊髄からは逆に「筋肉を緩めなさい」という指令が戻ってきます。この神経のやり取りによって筋肉がリラックスし、より伸ばされやすくなるのです。
この仕組みは専門的には1b抑制反射と呼ばれます。毎日ストレッチを続けていると、この神経反射がスムーズに働くようになり、結果として筋肉が柔らかく、伸ばしやすくなるのです。つまり、ストレッチによって「筋肉自体が柔らかくなる」のではなく、「神経が筋肉を緩めやすい状態になる」ことが柔軟性向上の本質なのです。

柔軟性を高めることは、単なる身体能力の向上にとどまりません。日常生活や健康維持に直結する重要なポイントがあります。
特に高齢者にとっては、柔軟性の維持が自立した生活を長く続けるカギとなります。
柔軟性は「生まれつき」である程度決まりますが、日々の習慣で向上させることも可能です。大切なのは継続的にストレッチや運動を取り入れることです。
また、急激に無理をすると筋肉や腱を傷める可能性があるため、自分の体調や年齢に合わせて無理なく進めることが重要です。
身体の柔軟性は「関節の柔らかさ」と「筋肉の伸びやすさ」という二つの要素から成り立っています。そして、その背景には関節包の構造や神経反射といった専門的な仕組みが存在します。
柔軟性は決してアスリートだけに必要なものではなく、日常生活の快適さや健康寿命の延伸に直結する大切な要素です。毎日のちょっとしたストレッチや習慣の積み重ねで、誰でも柔軟性を高めることができます。年齢を重ねても快適に動ける体を維持するために、今日から少しずつ柔軟性を意識してみてはいかがでしょうか。