
~骨の仕組みから治療まで~
骨粗鬆症という言葉は、多くの方が耳にされたことがあると思います。しかし、「骨の中で何が起きているのか」「なぜ特に女性に多いのか」「どのように診断し治療していくのか」といった具体的な内容まではご存じない方も少なくありません。本稿では、骨の基本的な構造から骨粗鬆症の原因・診断・治療までを順を追ってご紹介いたします。
私たちの骨は単なる「カルシウムのかたまり」ではありません。大きく分けて、次の3つの成分から成り立っています。
無機成分(約70%)
主成分はカルシウムで、骨の硬さや強度を保っています。
有機成分(約20%)
骨の中には細胞が存在し、その働きによってコラーゲンやヒアルロン酸、プロテオグリカンといったたんぱく質が作られます。これらは骨のしなやかさを担っています。
水分(約10%)
骨も生きた組織であるため、一定の水分を含んでいます。
この3つの成分がバランスよく存在することで、硬さと柔軟性を兼ね備えた骨が維持されているのです。
骨粗鬆症とは、骨の中からカルシウムが減少し、骨がスカスカになってもろくなった状態を指します。大きく分けると次の2種類があります。
原発性骨粗鬆症
加齢や閉経に伴う女性ホルモンの減少が主な原因です。年齢を重ねることで誰にでも起こり得ます。
続発性骨粗鬆症
糖尿病や甲状腺機能亢進症、関節リウマチ、慢性腎臓病など、他の病気の影響で発症します。
つまり、骨粗鬆症は「自然な老化現象」として起こる場合と、「他の病気の影響」で生じる場合があるということです。

「自分は骨粗鬆症なのだろうか」と心配される方も多いと思います。その診断には専用の機械を用います。
原理はシンプルで、レントゲン(X線)を応用して骨の中のカルシウム量を推定します。骨のカルシウムが多い部分は白く、少ない部分は黒っぽく映ります。この白さの程度から、骨のカルシウム量を計算しているのです。
測定結果は BMD(骨密度) という数値で示されますが、さらに分かりやすい指標として YAM値 が用いられます。これは「若年成人平均値(20~44歳の健康な人の骨密度)を100%としたときに、自分の骨密度がどのくらいあるか」を示すものです。
YAM値が 80%以上 … 正常
YAM値が 70%未満 … 骨粗鬆症と診断
このように数値化することで、自分の骨の状態を直感的に理解できるのです。
統計データによると、年齢が高くなるにつれて骨粗鬆症の割合は増加します。特に女性は男性の約2倍以上の割合で発症し、80歳代では2人に1人が骨粗鬆症と診断されるほどです。
なぜ女性に多いのかというと、閉経後に女性ホルモンが急激に減少し、それに伴って骨密度も急速に低下するためです。いわば、50歳前後は「骨の曲がり角」と言えるでしょう。
カルシウムは骨に多く存在しますが、実は血液中にも常に一定量が必要です。心臓や筋肉を正常に動かすために、血中カルシウム濃度は厳密にコントロールされています。
この調整を担うのが 腸・腎臓・骨 です。腸はカルシウムの吸収量を変え、腎臓は排泄量を調節し、骨は「カルシウムの貯蔵庫」として血中に出し入れを行います。
これらを指令しているのがホルモンです。
カルシトニン(甲状腺から分泌) … 骨からカルシウムを放出させず、腎臓からの排泄を増やす
パラトルモン(副甲状腺から分泌) … 骨からカルシウムを出させ、腎臓での排泄を抑える
両者は正反対の働きをしますが、結果的には血中カルシウムを一定に保つためのバランスをとっているのです。
骨の中では、次の2種類の細胞が働いています。
骨芽細胞 … 骨にカルシウムを沈着させ、骨を強くする
破骨細胞 … 骨からカルシウムを取り出し、血液に供給する
一見すると骨芽細胞が「善玉」、破骨細胞が「悪玉」に見えますが、実際にはどちらも必要不可欠です。血中カルシウム濃度を一定に保つため、両者がバランスをとりながら働いています。

現在、骨粗鬆症の治療薬は多岐にわたります。代表的なものとして以下が挙げられます。
副甲状腺ホルモン製剤(テリパラチドなど)
RANKL抗体製剤(デノスマブ=プラリア)
スクレロスチン抗体製剤(イベニティ)
ビスホスホネート系薬剤(破骨細胞の働きを抑える)
これらの薬は骨のカルシウム量を直接増やすことを目的としているわけではなく、本来は「血中カルシウムを一定に保つ」という生体の仕組みに基づいて作用しています。その調整を応用することで骨密度を改善し、骨折リスクを減らすのです。
ただし、薬を使ったからといって骨が劇的に強くなるわけではありません。「骨を若返らせる」薬ではなく、「骨の弱り方を抑える」薬と理解するのが正確です。
骨粗鬆症は「骨からカルシウムが減少した状態」であり、加齢や閉経、病気などが原因となって発症します。診断には骨密度測定が用いられ、若年成人との比較(YAM値)が重要な指標となります。
治療にはさまざまな薬剤が存在しますが、その本質は「血中カルシウムを一定に保つ仕組みを利用して骨密度を改善する」ことにあります。したがって、治療を始めても即座に骨が強くなるわけではありません。
大切なのは、医師と相談しながら適切な治療を受けつつ、日常生活での工夫(バランスのよい食事、十分なカルシウム・ビタミンDの摂取、適度な運動、日光浴)を続けることです。
骨粗鬆症は誰にでも起こり得る病気ですが、正しい知識を持ち、早期に予防・対策を行うことでその進行を抑えることができます。特に女性にとっては、閉経を迎える50歳前後が大きな分岐点です。ぜひ健康診断などで骨密度を確認し、自分の骨の状態を知ることから始めていただければと思います。