健康で長生きするためには、日々の生活習慣や食事がとても重要です。
特に「どの栄養素を意識して摂るべきか」という点は、
多くの方が気になるところではないでしょうか。
ビタミンやミネラル、食物繊維など、体に良いとされる栄養素はたくさんありますが、
近年の研究で「たんぱく質」が健康寿命を大きく左右することが分かってきました。
今回は、たんぱく質の摂取が長生きとどのように関係するのか、
そしてがんを含む病気との関連性について、最新の研究結果を
交えながら解説していきます。

まず基本に立ち返りましょう。たんぱく質は「炭水化物」「脂質」
と並ぶ三大栄養素のひとつで、私たちの体をつくる重要な材料です。
つまり、たんぱく質が不足すると筋力が低下するだけでなく、体調を崩しやすくなったり、
病気にかかりやすくなるリスクが高まります。
特に高齢者では食欲の低下や咀嚼力の衰えから
摂取量が減少しがちで、それが健康寿命を縮める要因にもなるのです。
今年(2025年)の8月に国際誌 BMC Geriatrics に掲載された、日本の高齢者を対象とした
大規模研究があります。
これは「川崎元気高齢者研究」と呼ばれる調査の一環で、
85~89歳の高齢者800人以上を対象に、詳細な食事調査が行われました。
研究では、全体の摂取カロリーに占めるたんぱく質の割合によって4つのグループに分類。
その後、平均約3年半(1200日)追跡し、がんを含むあらゆる原因による死亡率を比較しました。
結果は明確で、たんぱく質を多く摂取しているグループほど死亡リスクが低いことが分かったのです。もっとも摂取量の多いグループ(総摂取カロリーの19%以上がたんぱく質)は、摂取量の少ないグループと比べて明らかに生存率が高いという結果でした。
つまり、高齢の日本人においても、しっかりたんぱく質を摂ることが
「長生き」につながることが科学的に示されたのです。
次に紹介するのは、2022年に報告されたオーストラリアの研究です。
対象は70歳以上の高齢男性で、食事内容を詳細に調査し、動物性・植物性
それぞれのたんぱく質摂取量を算出しました。
そのうえで「がんによる死亡率」との関連を調べたのです。
結果は興味深いものでした。
・植物性たんぱく質を多く摂取するほど、がんによる死亡リスクが低下
・最も摂取量が多いグループでは、少ないグループと比べて死亡リスクが28%低下
・一方で、動物性たんぱく質を過剰に摂取すると、がんのリスクがむしろ上昇
特に赤肉(牛肉・豚肉など)を多く食べる習慣は、
がんのリスクを高める可能性があると報告されています。
日本人の一般的な食生活では過剰摂取のケースは少ないですが、意識して
植物性たんぱく質(豆類や大豆製品)を取り入れることが望ましいといえるでしょう。
健康な人に限らず、がん患者さんにとってもたんぱく質は極めて重要です。
膵臓がんの患者さん38人を対象に行われた臨床研究では、抗がん剤治療を
始める段階で食事中のたんぱく質摂取量を調査し、その後の経過を追跡しました。
その結果、
という驚くべき結果が示されています。
さらに、総摂取カロリー量そのものは生存率と相関していなかったことから、
「何カロリー食べたか」ではなく「どれだけたんぱく質を摂取したか」
が予後を左右すると考えられています。
それでは、高齢者が無理なく摂れるたんぱく質はどのような食品でしょうか。
特に植物性たんぱく質は、がんのリスク低下との関連が示されているため、意識的に取り入れることが望ましいです。
「毎日意識してたんぱく質を摂ろう」と思っても、なかなか続けるのは難しいですよね。
そこでおすすめなのが、スープや汁物にたんぱく質を取り入れる方法です。
先日出版された『がんにも勝てる長生きスープ』でも、たんぱく質をしっかりとれるレシピが紹介されています。
スープは消化が良く、高齢者にも優しい調理法です。寒い時期や体調が優れないときでも取り入れやすいでしょう。

ここまで紹介した研究を総合すると、次のようにまとめられます。
高齢になると、どうしても食欲や咀嚼力の低下からたんぱく質不足に陥りがちです。
しかし、少し工夫をすれば日常の食事でしっかり摂取することができます。
「長生きしたい」「健康寿命を延ばしたい」と願う方は、ぜひ
今日からたんぱく質を意識してみてください。