痛み止め薬の話

はじめに

はじめに

私たちが日常生活の中で「痛み」を感じることは珍しくありません。頭痛や生理痛、腰痛といった身近なものから、関節リウマチやがんによる強い痛みまで、その原因や強さはさまざまです。こうした痛みに対処するために用いられるのが「痛み止め薬」です。医学的には「鎮痛薬」と呼ばれ、症状に合わせていくつもの種類があります。

一口に鎮痛薬といっても、作用の仕組みや効果の強さ、副作用の特徴は薬ごとに異なります。本記事では、代表的な痛み止め薬を整理しながら、それぞれの特徴や使われ方をわかりやすく解説していきます。

鎮痛薬の大分類

鎮痛薬の大分類

痛み止め薬は大きく分けると以下のような種類に分けられます。

  1. 消炎鎮痛薬(NSAIDsなど)
  2. アセトアミノフェン
  3. 抗うつ薬の一部
  4. てんかん薬の一部
  5. 麻薬性鎮痛薬(オピオイド)

ここからは、それぞれの代表的な薬について詳しく見ていきます。

1. 消炎鎮痛薬(NSAIDs)

最もよく使われる痛み止めが、この「消炎鎮痛薬」です。英語で Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs(非ステロイド性抗炎症薬) と呼ばれ、略して NSAIDs(エヌセイズ) といいます。

NSAIDs は「炎症を抑える」「熱を下げる」「痛みを和らげる」という3つの作用を持っています。炎症のもととなる プロスタグランジン という物質の産生を抑えることで効果を発揮します。

代表的な薬には以下のようなものがあります。

  • アスピリン
     世界で最も古くから使われてきた鎮痛薬の一つ。解熱鎮痛作用のほか、少量では血液を固まりにくくする作用があるため、心筋梗塞や脳梗塞の予防にも用いられます。
  • ロキソプロフェン(商品名:ロキソニンなど)
     日本で特に広く使われている薬。即効性があり、頭痛、歯痛、生理痛など幅広い痛みに対応します。市販薬としても手に入る身近な薬です。
  • ジクロフェナク(商品名:ボルタレンなど)
     鎮痛効果が強い薬で、関節リウマチや術後の強い痛みによく使われます。ただし、胃腸障害や心血管リスクに注意が必要です。
  • インドメタシン
     強力な抗炎症作用を持ちますが、胃への負担が比較的大きいため、慎重に使用されます。坐薬や外用薬(塗り薬)としても利用されています。
  • メフェナム酸
     月経痛や歯痛に効果的とされる薬です。ただし副作用として胃腸障害や肝機能への影響が報告されているため、長期連用は避けられます。
  • スルピリン(メタミゾール)
     日本では限られた場面でしか使われませんが、海外では広く利用されています。強い解熱鎮痛作用を持つ一方で、ごくまれに重い副作用(無顆粒球症)を起こすことがあるため注意が必要です。
  • セレコキシブ
     比較的新しいタイプのNSAIDsで、「COX-2阻害薬」と呼ばれます。胃腸障害のリスクが従来の薬より低いとされ、慢性関節リウマチや変形性関節症に用いられています。

NSAIDsは効果が高く、日常的に使われる機会が多い薬ですが、副作用として 胃潰瘍・胃炎、腎機能障害、心血管系への影響 があるため、特に長期使用時には医師の指導が不可欠です。

2. アセトアミノフェン

NSAIDsと並んでよく使われるのが アセトアミノフェン です。解熱・鎮痛作用を持ちますが、消炎作用はほとんどありません。そのため「炎症による痛み」にはNSAIDsほど強くありませんが、安全性が高く、子どもから高齢者まで幅広く使えるのが特徴です。

風邪やインフルエンザの発熱時にも用いられるほか、妊娠中の女性にも比較的安全に使える薬とされています。ただし、大量に服用すると肝臓に障害を起こすことがあるため、用量を守ることが重要です。

3. 抗うつ薬(デュロキセチンなど)

一見、痛み止めとは関係がなさそうに見える抗うつ薬ですが、実は「慢性的な痛み」には有効な場合があります。

代表例が デュロキセチン です。これはセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を調整し、脳内で痛みを感じにくくする作用を持ちます。うつ病の治療薬として開発されましたが、現在では糖尿病性神経障害や慢性腰痛、線維筋痛症など「神経が関与する痛み」にも使われています。

精神面と身体の痛みは深くつながっており、抗うつ薬を使うことで気分の改善とともに痛みがやわらぐことがあるのです。

4. てんかん薬(プレガバリンなど)

てんかん治療薬として登場した薬の中にも、鎮痛作用を持つものがあります。その代表が プレガバリン(商品名:リリカなど) です。

プレガバリンは神経の過剰な興奮を抑えることで、しびれや痛みを和らげます。特に神経痛、たとえば帯状疱疹後神経痛や坐骨神経痛などに効果が期待できます。また、線維筋痛症など全身に広がる慢性疼痛にも用いられています。

副作用としてめまいやふらつき、体重増加などがあるため注意が必要ですが、従来の鎮痛薬では効きにくかった「神経の痛み」に新しい選択肢をもたらしました。

5. 麻薬性鎮痛薬(オピオイド)

最後に紹介するのが、オピオイド と呼ばれる麻薬性鎮痛薬です。モルヒネをはじめとするこれらの薬は、がんによる強い痛みや、手術後の激しい痛みに対して使われます。

オピオイドは脳や脊髄にある「オピオイド受容体」に作用し、痛みの信号を強力に遮断します。その効果は非常に強力で、他の鎮痛薬では対応できない痛みにも有効です。

かつては「中毒になるのでは」と敬遠されることもありましたが、医師の管理下で正しく使えば安全に使用できます。副作用として便秘や吐き気、眠気などがありますが、これらも適切な薬を組み合わせることでコントロール可能です。

近年では「ペインクリニック」や「緩和ケア」の分野で積極的に使われ、患者さんの生活の質を大きく改善する役割を担っています。

痛み止め薬を安全に使うために

痛み止め薬を安全に使うために

痛み止め薬は非常に身近な存在ですが、「効き目が強い薬ほど副作用もある」というのは薬全般に共通する特徴です。自己判断で長期間服用したり、複数の薬を重ねて飲んだりすると、思わぬ健康被害を招くことがあります。

大切なのは、 症状や体質に合わせて適切な薬を選ぶこと です。市販薬で対応できる痛みもありますが、慢性的な痛みや強い痛みが続く場合は、必ず医師に相談することが望まれます。

まとめ

痛み止め薬にはさまざまな種類があり、炎症を抑えるNSAIDs、幅広い年齢で使えるアセトアミノフェン、神経に作用する抗うつ薬やてんかん薬、そして強力なオピオイドまで、目的や症状に応じて使い分けられています。

それぞれの薬には利点と注意点があり、正しく理解して使うことで、痛みによる生活の不便や苦しみを和らげることができます。
「痛みとどう向き合うか」は生活の質に直結する大切なテーマです。薬に頼ることをためらうのではなく、正しい知識を持ち、医師や薬剤師と相談しながら上手に利用していくことが、健やかな日常につながっていくでしょう。