私たちの食生活に欠かせない食材のひとつが「お肉」です。
牛肉や豚肉、そしてラム肉(羊肉)は、その味わいはもちろん、
栄養価の高さからも多くの人に親しまれています。
焼き肉、バーベキュー、ステーキなど、家族や友人と
囲む肉料理は格別の楽しみですよね。
しかし近年、「赤肉」と呼ばれるこれらの肉の摂取
とがんとの関連が、世界中で注目されています。
今回は、最新の研究結果をもとに、お肉とがんの関係に
ついて整理し、健康的に肉料理を楽しむための工夫
を考えていきたいと思います。

牛肉や豚肉、羊肉はまとめて「赤肉(red meat)」と呼ばれます。
2015年、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は、
赤肉について「人に対しておそらく発がん性がある」と分類しました。
これは「グループ2A」というカテゴリーに位置づけられ、
十分な科学的根拠があるわけではないものの、
発がんリスクとの関連性が疑われている
という意味を持ちます。
では実際に、どのくらいの量を食べるとリスクが高まるのでしょうか。
2018年に国際学術誌 International Journal of Cancer に報告された研究では、
フランスで6万人以上を対象に肉の摂取量とがんの発症リスクを長期的に追跡しました。
その結果、赤肉の摂取量がもっとも多いグループは、もっとも少ないグループと比べて、
していたと報告されました。
このグループでは、平均して
1日100グラム程度の赤肉
を摂取していたとされています。
100グラムといえばステーキ1枚程度。
決して大量ではなく、日常的な食事の中で十分食べられる量です。
「欧米の人たちに比べれば、日本人は肉の摂取量が少ないから大丈夫」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、日本でも同様の結果が得られています。
国立がん研究センターが日本人約8万人を対象に行った調査によると、
毎日赤肉(牛肉や豚肉)を80グラム以上食べる女性では、結腸がんの
リスクが 48%高くなる ことが分かりました。
つまり、日本の食生活においても、赤肉の食べ過ぎは
がんリスクを高める可能性があるということです。
赤肉そのものの問題だけでなく、調理法にもリスクがあります。
肉を高温で調理すると、「AGE(終末糖化産物)」と呼ばれる物質が生成されます。
AGEは糖とタンパク質が反応することでできるもので、
揚げる・焼くといった高温調理で大量に生じます。
AGEには強い毒性があり、
といった作用が報告されています。
実際、AGEの摂取量が多い人は、
乳がん、大腸がん、すい臓がん、肝臓がんなどのリスクが高い
という研究結果もあります。

2020年に Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention に
発表されたアメリカでの研究では、約5万人の女性を
対象に肉の摂取と調理法を調査しました。
その結果、
「グリルやバーベキューで焼いたステーキ肉を
多く食べる女性は、大腸がんのリスクが2倍以上に増加」
していました。
また、2018年に European Journal of Nutrition に報告された研究でも、
鉄板焼きやバーベキューといった高温調理で肉を食べる人では
大腸がんリスクが上昇する一方、加熱を控えめにして生に
近い調理法を好む人では、リスクが低下していたのです。
つまり、焼き肉やバーベキューの「焦げ」や「強い加熱」が、
がんのリスクを押し上げている可能性が高いのです。

お肉はタンパク質や鉄分、亜鉛、ビタミン類などを豊富に含む優秀な食材です。
「がんのリスクがあるなら一切食べない方がいいのでは?」
と思う方もいるかもしれませんが、完全に避ける必要はありません。
大切なのは「食べる量」と「調理法」に注意することです。
焼き肉やバーベキューは楽しく美味しい食事ですが、食べ過ぎや調理法によって
はがんのリスクを高めてしまうことが、数多くの研究から示されています。
肉は私たちの体に欠かせない栄養源でもあります。
だからこそ、調理法や食べ方を工夫し、適量を守りながらおいしく味わうことが大切です。
家族や友人との食事を楽しみながら、健康を守る。
そのために今日から少し、お肉の食べ方を見直してみてはいかがでしょうか。