健康診断やメタボ健診で
「内臓脂肪が多いですね」
と言われた経験のある方も多いかもしれません。
内臓脂肪は、生活習慣病のリスクを高める要因として
広く知られていますが、近年では「がんの生存率」
にも関係しているのではないかと注目されています。
今回は、内臓脂肪とがんの生存率の関係について、
最新の研究結果をもとに詳しく見ていきましょう。

まず、脂肪と一口に言っても、
体内には「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があります。
見た目では判断しにくいのですが、CTなどの画像検査を行うと、脂肪の分布が明確に分かります。
同じ「お腹まわりが大きい人」でも、皮下脂肪が多いタイプと内臓脂肪が多いタイプでは、体の中の状態がまったく違うのです。

これまでの研究では、「がんの診断時に皮下脂肪が多い人ほど、手術後や薬物療法後の生存率が良好である」という報告がありました。
一見、脂肪が多いと不健康に思えますが、皮下脂肪は体力の蓄えやホルモンバランスの維持に関係しており、治療中の体力低下を防ぐ役割があるのではないかと考えられています。
しかし、それでは「内臓脂肪が多い場合」はどうなのでしょうか?
実は、ここが今回のテーマの中心です。
2025年9月に医学雑誌『Gynecologic Oncology』に発表された研究によると、子宮頸がんの患者316人を対象に、治療前のCT画像で脂肪分布を調べた結果、
内臓脂肪が多い患者は、少ない患者に比べて治療後の生存期間が短い
ことがわかりました。
CT画像を見比べると、皮下脂肪が厚くても内臓脂肪が少ない人と、
皮下脂肪は薄くても内臓脂肪が多い人とでは、がん治療後の経過が異なっていたのです。
つまり、見た目のスリムさにかかわらず、体の中の脂肪の質が
予後に影響しているということです。

同様の結果は、大腸がんの研究でも報告されています。
2022年に『Gut and Liver』誌に発表された韓国の研究では、
ステージ3の大腸がん患者472人
を対象にCT画像を解析。
その結果、内臓脂肪が多い人は、
がんによる生存率が有意に低く、再発率も約5倍高い
という結果が得られました。
特に、腹膜にがんが広がる「腹膜播種(ふくまくはしゅ)」
と呼ばれる再発パターンが多く見られ、内臓脂肪が多い人ほどその傾向が顕著だったといいます。
この結果は、内臓脂肪ががんの再発環境を作りやすくしている可能性を示唆しています。
一方で、2022年に『American Journal of Clinical Nutrition』に
発表された日本の研究では、胃がんや食道がんなど上部消化管のがん患者では、
内臓脂肪が多いほうが生存率が良かったという報告もあります。
この研究では、過去に発表された91件の研究を総合的に解析したところ、内臓脂肪が多い患者は少ない患者に比べて、全生存率が向上し、死亡リスクがおよそ30%低下していました。
つまり、がんの種類によって、内臓脂肪が良い影響を与えるケースもあるということです。
では、なぜ内臓脂肪が多いと予後が悪くなることがあるのでしょうか?
いくつかの理由が考えられています。

内臓脂肪は、皮下脂肪よりも落としやすい脂肪といわれています。
生活習慣を少し見直すだけでも改善が期待できます。
内臓脂肪は、単なる「お腹の脂肪」ではなく、体の内側から健康を左右する重要な指標です。
がんの治療成績や生存率にまで影響を与えることが明らかになりつつあります。
もちろん、脂肪はすべて悪者ではなく、体にとって必要なエネルギー源でもあります。
大切なのは、内臓脂肪をためすぎない生活習慣を続けること。
CTや健診で自分の体の中を「見える化」しながら、バランスのとれた体づくりを心がけていきたいですね。