赤筋と白筋【ワンポイントトリビア】

赤筋と白筋【ワンポイントトリビア】

赤筋と白筋 ― 体を支える2つの筋肉のちがい

私たちの体を動かす「筋肉」は、一見どれも同じように見えますが、実は性質の異なる2種類の筋線維からできています。
それが「赤筋(せっきん)」と「白筋(はっきん)」です。
これらは色の違いだけでなく、エネルギーの使い方や疲れやすさ、得意な運動の種類までもがまったく異なります。
ここでは、赤筋と白筋の特徴や働き、鍛え方の違いについて、わかりやすく紹介します。

赤筋とは ― 「持久力の筋肉」

赤筋とは ― 「持久力の筋肉」

赤筋は、正式には「遅筋(ちきん)」とも呼ばれる筋線維で、その名の通り赤っぽい色をしています。
この赤色は、筋肉の中に含まれるミオグロビンという赤い色素によるものです。ミオグロビンは酸素を運ぶタンパク質で、筋肉の中で酸素を蓄え、必要なときに供給する役割を持っています。

また、赤筋は毛細血管が多く、酸素が運ばれやすいため、酸素を利用してエネルギーを作り出す「有酸素代謝」が得意です。
エネルギーを作る場であるミトコンドリアも非常に多く含まれています。ミトコンドリアでは、脂肪酸やグルコース(糖)から「アセチルCoA」という物質をつくり、それをクエン酸回路電子伝達系で分解して、大量のATP(エネルギー分子)を生み出します。

このため赤筋は、ゆっくりとした動きで長時間働き続けられるという特徴を持っています。
日常生活でいえば、姿勢を保つために働く背筋や、長時間歩いたり走ったりする際に使う太ももの筋肉などが代表的です。
また、マラソン選手や長距離サイクリストのように、持久力が求められる競技の選手は、赤筋線維が多い傾向にあります。

白筋とは ― 「瞬発力の筋肉」

白筋とは ― 「瞬発力の筋肉」

一方の白筋は、「速筋(そっきん)」と呼ばれる筋線維で、見た目は白っぽく、太くて力強いのが特徴です。
白筋にはミオグロビンが少なく、血管の分布も赤筋ほど豊富ではありません。その代わりに、筋肉の中に「グリコーゲン」という糖の貯蔵物質が多く、短時間で大量のエネルギーを生み出す能力に優れています。

白筋がエネルギーを作る主な仕組みは「無酸素解糖」です。
これは酸素を使わず、筋細胞の中(サイトゾル)でグリコーゲンを分解してエネルギーを作る方法です。
このとき、ブドウ糖が「ピルビン酸」へと変化し、酸素が不足している状況ではさらに「乳酸」に変わります。
この反応によってすぐにエネルギー(ATP)を得ることができますが、生成される量は少なく、乳酸の蓄積によって筋肉が酸性化し、疲労が早く起こります。

したがって、白筋は「瞬発的な力を出すのが得意だが、長くは持たない」筋肉です。
短距離走、ジャンプ、ウエイトリフティングなど、一瞬の爆発的な力を必要とする運動では、白筋が主に使われています。
短距離選手やスプリンターの脚の筋肉には、この白筋線維が多く含まれています。

ミオシンの違い ― 収縮速度を決める分子

赤筋と白筋の性質の違いは、筋肉を動かす主要なタンパク質「ミオシン」のタイプによっても決まります。
赤筋には「Ⅰ型ミオシン」、白筋には「Ⅱ型ミオシン」が多く含まれています。

Ⅰ型ミオシンはATP(エネルギー)の分解速度が遅く、収縮スピードがゆっくりです。
しかし、エネルギーを効率よく使うため、疲れにくく、長時間動き続けることができます。
一方、Ⅱ型ミオシンはATP分解が速く、収縮スピードも非常に速いですが、エネルギー消費が激しく疲れやすいという特徴があります。

白筋に含まれるⅡ型ミオシンには、さらにいくつかのサブタイプ(ⅡA型・ⅡX型など)があり、ⅡA型は比較的持久力のある中間的な筋線維として働きます。
このように、筋肉は単純に赤と白の二種類ではなく、さまざまなタイプが混ざり合って構成されているのです。

脂肪酸と糖の使い分け ― エネルギー源のちがい

脂肪酸と糖の使い分け ― エネルギー源のちがい

赤筋と白筋では、使うエネルギー源にも違いがあります。
赤筋は酸素を利用して脂肪酸や糖を燃やすのに適しており、脂肪酸代謝が活発です。
特に運動強度が最大酸素摂取量(VO₂max)の50〜65%程度、つまり「ややきつい」と感じる中程度の運動では、脂肪酸が最も効率的に使われます。
ウォーキングや軽いジョギングのような有酸素運動が、まさに赤筋が主に働く場面です。

一方の白筋は酸素を使わない代謝が中心で、主にグリコーゲンを分解してエネルギーを得ます
高強度の運動になると、酸素供給が追いつかないため脂肪は燃焼できず、糖質中心の代謝に切り替わります。
その結果、乳酸がたまりやすく、筋肉がすぐに疲労するのです。

トレーニングで変わる筋肉の性質

人の体の中には、赤筋と白筋が混在していますが、その割合は生まれつきある程度決まっています。
それでも、トレーニングによって筋線維の性質をある程度変化させることは可能です。

有酸素運動(ジョギング、サイクリング、水泳など)を続けると、赤筋線維が刺激され、ミトコンドリアや毛細血管の数が増加します。
これにより、より多くの酸素を使って脂肪を燃やせるようになり、持久力が高まります。
逆に、短距離ダッシュや筋力トレーニングのような高強度運動を行うと、白筋線維が発達し、筋肉が太くなり、瞬発力が向上します。

つまり、トレーニングの内容によって、「持久力型の体」か「パワー型の体」かをある程度方向づけることができるのです。

健康づくりに活かす赤筋・白筋の知識

赤筋を鍛えるには、20〜60分ほど続けられる有酸素運動がおすすめです。
ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、登山などが典型的です。
会話ができる程度のペースで「少し息が上がるくらい」が理想です。

白筋を鍛えるには、筋トレや短距離走などの無酸素運動が効果的です。
スクワットや腕立て伏せ、バーベル運動などで一気に力を出す動作を繰り返すことで、筋線維が太くなり、基礎代謝も上がります。

また、両方の筋肉をバランスよく鍛えることが健康維持には大切です。
赤筋がしっかり働けば、姿勢を保ち、疲れにくい体を作れます。
白筋を鍛えれば、転倒防止や瞬発的な動作にも強くなります。
年齢を重ねると白筋が減りやすいため、筋トレと有酸素運動を組み合わせるのが理想的です。

まとめ

比較項目赤筋(遅筋)白筋(速筋)
赤い(ミオグロビンが多い)白い(ミオグロビンが少ない)
主な代謝有酸素代謝無酸素解糖
エネルギー源脂質・糖グリコーゲン
収縮速度ゆっくり速い
疲れやすさ疲れにくい疲れやすい
得意な運動持久走・姿勢保持短距離・ジャンプ・筋トレ

私たちの体の中では、赤筋と白筋が互いに補い合いながら動いています。
長く動き続ける力と、一瞬で力を発揮する力――どちらも日常生活に欠かせません。
赤筋と白筋の特徴を理解し、バランスの取れた運動を習慣にすることが、健康で疲れにくい体づくりへの第一歩です。