「油=体に悪いもの」と思っていませんか?
実は、脂質は脳や細胞を作るために欠かせない大切な栄養素です。
しかし、摂る“種類”と“バランス”を誤ると、がん細胞が増えやすい体を作ってしまうのです。
近年の研究では、がん細胞は糖質だけでなく脂質もエネルギー源として利用し、
転移や増殖に脂質代謝が関わっていることが明らかになりました。
2017年の科学誌『Nature』では「がん細胞は脂肪を利用して転移する」との報告もあり、
脂質の種類と摂取量のコントロールが、がん予防の新たな鍵として注目されています。
本記事では、がんが“喜ぶ脂質”を3つ紹介し、
そのリスクを減らすための実践的な食事法、そして“体が喜ぶ脂質”であるオメガ3脂肪酸の力についても解説します。

脂肪酸は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。
このうち飽和脂肪酸は、常温で固まりやすく、次のような食品に多く含まれます。
フランスの大規模研究によると、飽和脂肪酸を多く摂る人は全がんリスクが44%高いことが報告されています。
また、別の研究では、飽和脂肪酸摂取量が最も多い女性は乳がんによる死亡率が51%高かったとも報告されています。
バターや肉の脂身などはおいしさを引き立てる一方で、摂りすぎると炎症や酸化ストレスを促し、がん細胞の成長を助けてしまう可能性があります。
「完全に避ける」のではなく、「量を控えめにし、植物性の油や魚油に置き換える」のが理想的です。
次に注意したいのが、トランス脂肪酸です。
これは植物油を加工してマーガリンやショートニングを作る際に発生する“人工の脂質”です。
主な食品は次の通りです。
トランス脂肪酸は体内で分解されにくく、慢性的な炎症や血管障害、がんリスク上昇を引き起こすとされています。
2021年の研究では、摂取量が多い人ほど前立腺がんリスクが49%増加、大腸がんが26%増加。
さらに、ヨーロッパの追跡研究では、乳がんリスクが14%上昇することも示されています。
多くの国ではすでに使用規制が進んでいますが、日本ではまだ完全禁止には至っていません。
“トランス脂肪酸ゼロ”と書かれていても、実際には微量を含んでいるケースもあるため、
原材料表示で「ショートニング」「マーガリン」と書かれている食品は控えるのが無難です。
オメガ6脂肪酸は、リノール酸やアラキドン酸などの脂肪酸を含みます。
これらはサラダ油やコーン油、大豆油、ごま油、そして肉類・卵などにも多く含まれます。
現代の日本人の食生活は、外食・加工食品・惣菜などにより、オメガ6を過剰に摂取しやすい環境です。
オメガ6は体に必要な脂ですが、過剰になると炎症を促進し、がん細胞の成長を後押しすることがわかっています。
福岡県・久山町の研究では、血中のオメガ6脂肪酸(アラキドン酸)が高く、オメガ3脂肪酸(EPA)が低い人は、
がんによる死亡率が90%以上高かったという結果もあります。
つまり、現代の「肉・揚げ物中心」型の食生活は、がんのリスクを高める一因になっているのです。
ここまで「がんが喜ぶ油」を紹介してきましたが、反対にがんを遠ざける油も存在します。
それが、魚やナッツなどに含まれるオメガ3脂肪酸です。
オメガ3脂肪酸には、DHA・EPA(魚由来)とαリノレン酸(植物由来)があります。
これらは体内で炎症を抑える物質を作り出し、細胞膜を柔軟に保つ働きを持っています。
がんの発生や進行には「慢性炎症」が深く関わっていることが分かっています。
オメガ3脂肪酸はこの炎症を鎮め、がん細胞の増殖シグナルを抑えることで、
“がんが育ちにくい体”をつくるサポート役となります。
例えばDHA・EPAを多く含む魚(サバ・イワシ・サンマなど)を週2〜3回食べるだけで、
血液中の炎症マーカーが低下し、腫瘍増殖に関与する酵素の活性も抑えられるという報告があります。
また、植物由来のアマニ油やエゴマ油に含まれるαリノレン酸も、体内でEPAに変換され、同様の効果が期待できます。
つまり、「オメガ6を減らし、オメガ3を増やす」ことが、
がんを遠ざける脂質バランスの鍵なのです。
がんのリスクを下げるために、特別な食事制限やサプリメントは必要ありません。
毎日の食事をほんの少し見直すだけで、体は確実に変わります。
“食べない”よりも“置き換える”という考え方が、続けるコツです。
無理なく続けられる習慣こそ、最も強力ながん予防法といえます。

現代の私たちは、便利でおいしい食品に囲まれている一方で、
知らぬ間に飽和脂肪酸・トランス脂肪酸・オメガ6脂肪酸を摂りすぎています。
一方で、魚やナッツ、アマニ油などに含まれるオメガ3脂肪酸を増やすことで、
体の炎症を抑え、がんや生活習慣病のリスクを確実に減らすことができます。
脂質は“敵”ではなく、選び方次第で最良の味方になります。
今日の油の選択が、未来のあなたの健康を形づくります。
ほんの少しの意識の違いが、がんを遠ざけ、あなたの体を守る力になるのです。