【動作の名称】体の動き方とその名称について解説

人体の関節運動の名称を正しく理解する 〜基本動作を正確に表現するために〜

私たち人間の体は、全身のさまざまな関節の動きによって、自由で多彩な動作を行うことができます。首を回す、腕を上げる、指を曲げる、足を蹴り出す——これらはすべて、関節の動きによって成り立っています。
しかし、その動きを正確に言葉で表すとなると、実は非常に混乱しやすいものです。医療やリハビリ、トレーニングの現場では、こうした「関節の動きの名称」を正確に理解し、使い分けることが大切です。
本稿では、各部位ごとに代表的な関節の動きを整理しながら、その正しい名称と意味をわかりやすく解説していきます。

首(頸椎)の動き

首(頸椎)の動き

まずは首、すなわち頸椎の動きから見ていきましょう。
首を前に倒す動きは「頸椎の前屈」、後ろに反らす動きは「頸椎の後屈」と呼ばれます。
また、首を左右に傾ける動きは「側屈」、左右を向くように回す動きは「回旋」です。
これらの言葉は、リハビリテーションやマッサージ、ストレッチなどの現場でもよく使われます。たとえば「首を少し前屈して」などの指示は、こうした正確な用語に基づいています。

肩関節の動き

肩関節の動き

次に、可動域が非常に広い「肩関節」を見てみましょう。
肩には8つの代表的な動きがあります。

  1. 手を前に上げる動き:肩の屈曲
  2. 手を後ろに引く動き:肩の伸展
  3. 手を横から上げる動き:肩の外転
  4. 手を体側に戻す動き:肩の内転
  5. 腕を外向きにひねる動き:肩の外旋
  6. 腕を内向きにひねる動き:肩の内旋
  7. 腕を水平に前へ動かす動き:肩の水平屈曲
  8. 腕を水平に後ろへ動かす動き:肩の水平伸展

これらの動きが組み合わさることで、私たちはボールを投げたり、髪をとかしたりといった複雑な動作を自然に行うことができるのです。

肘と前腕の動き

肘と前腕の動き

肘関節の基本的な動きは「屈曲(曲げる)」と「伸展(伸ばす)」です。
一方で、前腕(肘から手首までの部分)には、もう少し複雑な動きがあります。
手のひらを上に向ける動きは「回外」、下に向ける動きは「回内」といいます。

これらの動きは、前腕の中にある「橈骨(とうこつ)」と「尺骨(しゃっこつ)」という2本の骨が交差したり戻ったりすることで生じます。つまり、単に肘の関節が動いているのではなく、前腕の骨同士の動きによって生み出されているのです。

手と指の動き

手と指の動き

次に手指の動きを見てみましょう。
手の指には複数の関節があり、それぞれに名前があります。

  • MP関節(指の付け根)
  • PIP関節(第2関節)
  • DIP関節(第1関節・指先に近い)

指を曲げる動きを「屈曲」、伸ばす動きを「伸展」と呼びます。
また、指を外に広げるのが「外転」、内側にすぼめるのが「内転」です。

親指の特殊な動き

親指の特殊な動き

親指(母指)は、他の指にはない独特な動きを持っています。
まず、親指を外側に開いたり内側に戻したりする動きは「外転」「内転」と呼ばれます。
次に、親指の付け根の関節(CM関節)には、手のひらの面とは異なる方向への動きがあります。親指を立てるように上へ持ち上げる動きが「掌側外転」、元に戻す動きが「掌側内転」です。

また、親指と小指を合わせる「つまむ」動きは「母指の対立」といい、これも親指特有の運動です。掌側外転と似ていますが、使用される筋肉が異なり、別の動きとして区別されます。
このように、親指の動きは非常に複雑で、人間の手の器用さを支える重要な要素となっています。

股関節の動き

股関節の動き

次に下肢に移りましょう。
股関節は球状の関節であり、広い可動域を持っています。代表的な動きは以下の6つです。

  1. 足を前に上げる:屈曲
  2. 足を後ろに引く:伸展
  3. 足を外に開く:外転
  4. 足を内に閉じる:内転
  5. 足全体を外向きに回す:外旋
  6. 内向きに回す:内旋

これらの動きは、歩行や走行、立ち上がりなど、日常生活のすべての基本動作に関わっています。特に外旋・内旋の動きは膝ではなく股関節で起こっている点を誤解しないようにしましょう。

膝関節の動き

膝関節の動き

膝関節は比較的単純で、基本的には「屈曲(曲げる)」と「伸展(伸ばす)」の2種類です。
ただし、わずかに回旋運動も可能で、完全に直線的なヒンジ(蝶番)関節ではありません。とはいえ、主たる動きは屈曲と伸展と考えてよいでしょう。

足首(足関節)の動き

足首(足関節)の動き

最後に足首です。
足首を下方向に伸ばす動きを「底屈」、上にそらす動きを「背屈」と呼びます。
さらに、足を内側や外側にひねる動きもあり、これを「回内」「回外」といいます。
サッカーのインサイドキックやアウトサイドキックはまさにこの動きの応用です。

なお、数年前に学術的な定義が改訂され、足の回内・回外の表現がより厳密に区別されるようになりました。医療やスポーツ現場では、最新の定義に沿った用語を使用することが求められています。

正確な用語を使う意義

関節の動きを正確に言葉で表すことは、医療従事者やトレーナー、理学療法士、マッサージ師にとって不可欠です。
たとえば「腕を上げる」と一言でいっても、肩の屈曲なのか外転なのか、あるいは水平屈曲なのかによって、関与する筋肉や関節の動きがまったく異なります。
誤った用語を使うと、意図する運動や治療の方向性がずれてしまう可能性もあります。

だからこそ、専門家は日常から「屈曲」「伸展」「外旋」などの用語を正確に使い分け、患者さんや利用者に伝えることが大切なのです。

まとめ

まとめ

人間の体の動きは、一見単純に見えても、実際には関節ごとに非常に多様で繊細なメカニズムによって成り立っています。
首の前屈から足首の回外まで、それぞれの動きには正確な名称があり、それを理解することが「身体を正しく使う第一歩」といえます。

理学療法士やトレーナー、医療に携わる方はもちろん、身体に関心のあるすべての人が、これらの動きを正しい言葉で認識し、自分の体の仕組みを理解することが、健康で効率的な動作の習得につながるでしょう。