
今回は、「胆道がん」という少し聞き慣れないがんと、そのリスクを減らすかもしれない“ある飲み物”についてのお話です。
まず、胆道がんについて簡単に説明しておきましょう。
「胆道(たんどう)」とは、肝臓で作られた胆汁という消化液が流れる通り道のことです。胆汁は脂肪を消化するときに欠かせないもので、この通り道は肝臓の中の細い管(胆管)から始まり、胆のうを通って十二指腸までつながっています。
この胆道のどこにがんができるかによって、名前が少しずつ違ってきます。たとえば、肝臓の中なら「肝内胆管がん」、肝臓の出口近くなら「肝門部胆管がん」、胆のうにできた場合は「胆のうがん」、そして十二指腸に近い部分にできたら「乳頭部がん」と呼ばれます。
つまり、「胆道がん」とはこれらをまとめた総称ということです。
胆道がんはほかのがんに比べると発症する人の数は少ないのですが、残念ながら「治りにくいがん」として知られています。
症状としては黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、お腹の痛み、発熱などがありますが、早い段階では自覚症状が出にくく、見つかったときにはすでに進行していることも多いのです。
さらに、手術ができるケースが限られていたり、効く薬が少なかったりするため、治療が難しいという特徴もあります。
実際に、日本でのデータを見ても、胆道がんの「生存率(治療後に生きている人の割合)」はほかのがんよりも低く、特に進行がんになると非常に厳しい数字になります。
ステージ(進行度)ごとの生存率を見ると、もっとも早く見つかった場合でも半分程度の人しか助からず、進行してしまうとその確率は数%にまで下がります。
全体としては、およそ5人に1人しか助からないというのが現実です。
日本では、女優の川島なお美さん、ラグビーの平尾誠二さん、柔道家の斎藤仁さんなど、有名な方々が50代という若さでこの病気で亡くなっています。こうしたニュースを通じて「胆道がん」という名前を耳にしたことがある方も多いかもしれません。
それでは、この胆道がんを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。
実は、食生活や生活習慣の中に、リスクを減らすヒントが隠されています。
中でも注目されているのが、私たちの生活にごく身近な「ある飲み物」です。毎日のように口にしている方も多いでしょう。
その飲み物とは――緑茶です。
2016年に発表された国立がん研究センターの大規模な研究があります。
この研究は「JPHC Study(多目的コホート研究)」と呼ばれ、45歳から74歳までの約9万人の日本人を長期間にわたって追跡したものです。
研究では、参加者にアンケートを行い、1日にどのくらいコーヒーや緑茶を飲むかを調べました。さらに緑茶については、「煎茶(せんちゃ)」「番茶」「玄米茶」といった種類ごとにも分けて詳しく分析しました。
その結果、1日に720ml以上(およそ湯呑6杯分)の緑茶を飲む人は、ほとんど飲まない人(120ml未満)に比べて、胆道がんの発症リスクが33%低かったということがわかりました。
つまり、緑茶をたっぷり飲んでいる人は、そうでない人よりも3分の1ほど胆道がんになりにくかった、ということです。
さらに詳しくみると、煎茶にこの効果がはっきり見られ、番茶や玄米茶ではそれほど明確な差は出ませんでした。
一方、コーヒーの摂取量と胆道がんの発症との間には、特に関連は見られませんでした。
では、なぜ緑茶を飲むとがんのリスクが下がるのでしょうか。
その理由として考えられているのが、緑茶に含まれる「カテキン」という成分です。
カテキンには、体の中で起こる酸化(いわば“サビつき”のようなもの)を防ぐ働きがあります。酸化は老化や病気の原因にもなるため、カテキンの抗酸化作用が細胞を守ってくれると考えられています。
また、緑茶には免疫力を整えたり、炎症を抑えたりする働きもあるとされており、これらの作用が結果的にがんの予防につながっている可能性があります。
実は、緑茶のがん予防効果は胆道がんだけではありません。
これまでの研究でも、さまざまながんに対して良い影響があることが報告されています。
たとえば、日本人を対象にした研究では、緑茶をたくさん飲む人は「血液のがん」と呼ばれる急性骨髄性白血病などのリスクが最大で37%も低くなっていました。
また、別の調査では、1日5杯以上緑茶を飲む女性は、ほとんど飲まない女性に比べて腎臓がんのリスクが半分近くに減っていたという結果も出ています。
このように、緑茶の健康効果については科学的な裏づけが少しずつ増えており、「毎日飲むだけで体を守る力を高められる」飲み物として改めて注目されています。
もちろん、「1日6杯以上飲まないと効果がない」というわけではありません。
大切なのは、無理なく日常の中に取り入れることです。
朝食のときに1杯、昼食や休憩時間に1杯、夕食後に1杯――といったように、普段の飲み物を緑茶に置き換えるだけでもいいでしょう。
ペットボトルのお茶でもかまいませんが、できれば急須で入れた煎茶のほうが香りもよく、カテキンの量も多いとされています。
また、緑茶にはカフェインが含まれているため、就寝前は控えめにしたほうが安心です。体質や体調に合わせて、無理のない範囲で楽しむことが大切です。

胆道がんは、早期発見が難しく、治療も大変ながんなので、日ごろからの予防がとても重要です。
そして、そんな難しい病気のリスクを少しでも下げる手助けをしてくれるのが、私たちの身近にある“緑茶”かもしれません。
寒い季節には、湯気の立つ温かいお茶をゆっくり味わいながら、心も体もほっとひと息つく――。
そんな日常の小さな習慣が、将来の健康を守る力につながっていくのです。