今回ご紹介するのは、疲れやすい方の更年期症状や月経前症候群(PMS)などに用いられる漢方薬「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」です。体のむくみやめまい、頭痛などに効果が期待されるほか、不安や緊張といった心の不調にも穏やかに働きかけるとされています。ここでは、当帰芍薬散の特徴や、他の治療法・漢方薬との違い、使用上の注意点について詳しく見ていきましょう。

当帰芍薬散は、主に疲れやすく、色白で、やや体力の少ない方に用いられることが多い漢方薬です。更年期障害やPMS(月経前症候群)といったホルモンの変化による心身の不調に対して処方されます。
漢方薬とは、いくつかの「生薬(しょうやく)」を組み合わせて作られる薬で、それぞれの作用を組み合わせることで、体全体のバランスを整えることを目的としています。当帰芍薬散も例外ではなく、血液の巡りを改善し、水分代謝を整えることで、むくみや冷え、倦怠感(だるさ)を和らげるとされています。
心の面では、不安感や緊張感、動悸などの症状を穏やかに和らげる効果も期待されます。効果のあらわれ方はゆるやかですが、副作用が少ないことが特徴です。体調を少しずつ整えながら、長期的に心身の安定を図るのが漢方治療の魅力です。

更年期障害やPMSはいずれも、ホルモンバランスの変化によって心身にさまざまな症状が現れる状態です。
■ 更年期障害とは
女性ホルモンの分泌が急激に減少する閉経前後の時期にあらわれます。ほてり、のぼせ、発汗、頭痛、肩こり、動悸などの身体的な症状に加え、不安感や抑うつ、イライラ、集中力の低下といった精神的な不調が出ることがあります。症状の程度や現れ方には個人差が大きく、「何となく不調」という形で長く続くことも少なくありません。
■ PMS(月経前症候群)とは
排卵後から月経開始までの期間に起こる心身の不調で、ホルモンの急激な変動が関係していると考えられています。情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、不眠などの精神症状のほか、下腹部痛や頭痛、乳房の張り、むくみなどが現れます。こちらも人によって症状や強さはさまざまです。
■ 治療法の選択肢
更年期障害やPMSの治療には、症状の種類や程度に応じて次のような治療法が検討されます。

更年期障害やPMSに用いられる代表的な漢方薬には、次の三つがあります。
体力があまりなく、疲れやすい方、冷えやすい方に向いています。主にむくみ、めまい、頭痛などの身体症状に効果が期待されますが、不安感を伴う場合にも有用です。
精神的な不安定さやイライラ、気分の落ち込みなど、心の症状が中心の方に適しています。幅広い症状に穏やかに作用するため、「症状が多彩でどこに効くかわからない」といったケースにも用いられます。
体力があり、比較的しっかりした体格の方に向いています。血の巡りを改善する作用があり、頭痛、肩こり、のぼせなどの身体症状に加え、イライラにも効果を期待できます。
この三つはしばしば「女性の三大漢方薬」と呼ばれ、それぞれ体質や症状によって使い分けられます。

当帰芍薬散は、他の漢方薬に含まれる「甘草(かんぞう)」を使っていないため、比較的安全性が高いとされています。ただし、どの薬にも共通して起こりうるように、体質によっては過敏反応や肝機能の変化、胃のもたれなどの消化器症状が出ることがあります。違和感を感じた場合は、自己判断せず医師・薬剤師に相談することが大切です。
通常は1日2~3回、食前に服用します。粉末状で処方されることが多いですが、錠剤タイプもあります。食後の服用でも大きな問題はありません。
効果のあらわれ方には個人差がありますが、一般的には1か月ほど継続して様子を見るのが目安です。続けても効果がはっきりしない場合は、他の漢方薬や治療法に切り替えることも検討されます。
当帰芍薬散は、疲れやすい方の更年期症状やPMSに用いられる代表的な漢方薬です。特に、むくみ・めまい・頭痛などの身体的な不調に有効とされ、あわせて不安や緊張といった精神的な症状を和らげる効果も期待できます。
加味逍遙散や桂枝茯苓丸と並ぶ「女性の三大漢方薬」の一つとして知られ、体質や症状に応じて適切に選択することが大切です。
副作用が少なく、長期的に安心して使いやすいという利点がありますが、効果がゆっくり現れるため、焦らずじっくり取り組む姿勢が必要です。
当帰芍薬散は、体と心の両面から女性のバランスを整える頼もしい味方です。
もし更年期やPMSにともなう不調でお悩みの方は、医師や薬剤師に相談のうえ、漢方薬によるケアを検討してみるのもよいでしょう。