「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」について、皆さんはどれほど理解されていますか?
職場や日常の中でADHDを持つ方に対し、「本当はできるのにやる気がないだけ」というような誤解に基づく評価がされる場面を目にしたことがあるかもしれません。
しかし、このような誤解はADHDの特性について正しく理解していないことによるものです。特性に起因する疲れやすさ、注意力の問題などは表面的に分かりづらいものです。
本記事では、「ADHDの方はなぜ疲れやすいのか?」というテーマに焦点を当て、その理由を3つの観点から詳しく解説します。理解を深めることで、ADHDを持つ方々の暮らしや働きやすさを向上させる対策が立てられるでしょう。

ADHDを持つ方の多くが、自分自身で「疲れやすい体質だ」と感じています。これは特性に起因するものが大きく、例えば以下のような場面で疲労を感じやすくなります。
これらが複合的に絡み合い、結果として日常的な疲労感が強まるのです。

ADHDの特性の一つとして、「脳内多動」が挙げられます。これは、頭の中で思考が途切れることなく動き続け、次々と連想が広がっていく状態を指します。ある当事者の方は、この現象を「止まらない『連想ゲーム』」と表現しました。
ADHDを持つ方の場合、この連想ゲームが意図せず頻繁に頭の中で繰り広げられます。
また、視覚的に刺激の多い環境ではこの現象が加速します。例えば、大型ショッピングモールで靴屋に入った場合、「靴→ランニング→スポーツ→試合…」というように連想が止まらなくなります。
このような脳内活動が継続的に行われるため、ADHDの方は脳が常に働き続け、休む暇がありません。これが疲労感の大きな原因となっています。
ADHDの特性には、「不注意」が含まれます。集中力が持続しづらく、注意が散漫になって、仕事や日常生活においてミスをしやすくなります。その結果として上司や家族などから指摘を受ける場面が多くなります。繰り返し叱責されると、次第に自己評価が低下し、「自分にはできない」という思い込みが生じることも少なくありません。
他者からのストレスだけでなく、自分自身を責めることによるストレスが加わり、精神的な疲労が増幅されるのです。

ADHDの特性の一つとして、最近ようやく認知されてきた「過集中」があります。過集中とは、特定の物事に極度に没頭してしまう状態を指します。これは時にADHDの強みとして発揮されることもありますが、反面、大きな疲労を引き起こす原因にもなります。
過集中の状態では、時間の感覚を忘れ、エネルギーをすべて使い切るまで物事に取り組んでしまいます。そのため、集中が途切れた後には強い疲労感が押し寄せ、場合によっては何もできないほど疲れ切ってしまうこともあります。
歴史上の人物では、野口英世がこの特性を持っていたと言われています。彼は研究に没頭し、疲れたらそのまま靴を履いたまま寝床に横になり、目覚めると再び研究に没頭する生活を送っていたそうです。そしてロックフェラー医学研究所の仲間は彼のことを人間発電機、24時間仕事男と呼んだというエピソードがあります。
ADHDを持つ方の疲労感は、身体的な疲れというよりも「脳の疲れ」に近いと言われています。ADHDの方でなくても、試験前に徹夜で猛勉強した経験はありませんか?試験後に感じる、脳がフル回転した後の重い疲労感が、ADHDの方には日常的に繰り返されるのです。
ある当事者の方は、「仕事が始まる前からすでに疲れている」と話していました。このように想像するだけでもADHDの方がどれだけ強い疲労を抱えていることが想像できるのではないでしょうか?

ADHDを持つ方とともに働く、または日常生活を送る上で、以下のような配慮や工夫が役立ちます。
1.短時間の休憩を定期的に取り入れる
ADHDの方にとって、短時間の休息を定期的に挟むことは重要です。脳を休ませる時間を設けることで、疲労の蓄積を防ぐことができます。
2.失敗を責めるだけでなく、解決策を共に考える
ミスを責めるだけではなく、前向きに解決策を考える姿勢が重要です。このような対応が、ストレスの軽減につながります。
3.過集中をコントロールするサポートをする
ADHDの方の過集中は大きな強みとなる反面、制御が難しい場合があります。そのため、適切なタイミングで声をかけるなど、サポートがあると、特性を強みとして生かしていくことが可能になります。

ADHDを持つ方が感じる「疲れやすさ」には、脳内多動、ストレス、過集中といった特性が深く関わっています。これらの特性を正しく理解し、共感を持って接することが、ADHDの方とのより良い関係を築く鍵となります。
この記事を読んで、ADHDの特性について新たな視点を得られたと感じた方は、ぜひ周囲の方々と情報を共有してください。この理解の広がりが、ADHDを持つ方々の生活を支える力となるはずです。