私たちは日常の中で「足がむくんで重い」「靴下のあとが消えない」といった経験をすることがあります。
この「むくみ」は、医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれ、体の中の水分の流れに関係する現象です。今日は、この足のむくみについて、体の仕組みを踏まえながら、ていねいに説明していきましょう。

「むくみ」は、体の中で水分が過剰にたまり、皮下にしみ出してしまう状態を指します。
健康な状態では、心臓から送り出された血液が動脈を通って全身に行きわたり、酸素や栄養を細胞に届けたあと、静脈を通って再び心臓へ戻っていきます。この循環がスムーズに行われている限り、余分な水分は体内にたまりません。
しかし、血液の流れが滞ると、細胞と細胞のすき間(間質)に水分がたまり、ふくらはぎや足首が膨らんで見えるようになります。これが、足のむくみです。
むくみには大きく2つのタイプがあります。
1つ目は**「局所のむくみ」で、主に足や手など体の一部だけが腫れるタイプです。
2つ目は「全身のむくみ」**で、腎臓や心臓などの臓器の病気によって全身に水分がたまるタイプです。
今回取り上げるのは、日常生活でもよく見られる「足のむくみ」です。
足は心臓から最も遠い位置にあるため、血液を上に戻すには重力に逆らわなければなりません。
このとき重要な働きをしているのが「ふくらはぎの筋肉」です。ふくらはぎの筋肉は歩いたり動いたりするたびに収縮し、血液を押し上げるポンプのような働きをします。これを「筋肉ポンプ作用」といいます。
しかし、長時間の立ち仕事やデスクワークなどで動かない状態が続くと、このポンプ作用が弱まり、静脈の中で血液が滞ります。その結果、血液中の水分が血管の外へしみ出し、間質にたまってむくみが生じます。

静脈の内側には、血液が逆流しないように「弁」という構造があります。
この弁がしっかり閉まることで、血液は常に心臓の方向に流れ続けることができます。
ところが、年齢や生活習慣などの影響でこの弁の働きが弱まると、血液が下へ逆流してしまい、静脈内にたまりやすくなります。この状態を放置すると、血管が拡張して「下肢静脈瘤」という病気につながります。静脈瘤では血液の滞留がひどくなり、周囲の組織に水分が漏れ出して、足がむくむのです。
私たちの筋肉や臓器は、無数の細胞が集まってできています。細胞と細胞のすき間(間質)には水分が含まれ、これが栄養や酸素の通り道になっています。
血液が動脈から流れてくると、その中の一部の水分や栄養分がろ過されて細胞へ渡され、余った水分は静脈やリンパ管を通って心臓へ戻ります。
ところが、静脈の流れが悪くなると、この余分な水分が戻れずに間質にたまり続けてしまいます。つまり、「血液の流れの渋滞」が起こることで、むくみが発生するのです。
足のむくみの原因のひとつに、「変形性ひざ関節症」があります。
これは、ひざの関節の軟骨がすり減り、歩くと痛みを感じる病気です。痛みがあるために歩く量が減り、ふくらはぎの筋肉を動かさなくなってしまいます。結果として筋肉のポンプ作用が弱まり、静脈の血流が滞ってむくみが生じます。
このような場合には、ふくらはぎを動かす運動がとても効果的です。
たとえば、椅子に座ったままでもできる「つま先立ち運動」。足の裏を床につけたまま、かかとを持ち上げてゆっくり戻す――これを1日20回、3セット程度行うことで、血液の流れを促し、むくみを軽減できます。
もう一つ代表的な原因が「下肢静脈瘤」です。
静脈の弁が壊れて血液が逆流し、血管が膨らんでしまう状態です。見た目では、足に青紫色の血管が浮き出て見えるのが特徴です。
治療法にはいくつかあり、軽い場合は弾性ストッキング(着圧ソックス)を用います。これによって足を適度に圧迫し、血液の逆流を防ぐことができます。
より重度の場合は、カテーテル治療や手術が行われます。壊れた弁の部分を閉じて血液の流れを改善したり、機能しなくなった静脈を取り除くことで、正常な循環を取り戻します。

足のむくみを防ぐためには、次のような日常的な工夫が大切です。
また、必要に応じて医師の判断で利尿薬を用いることもあります。これは体の中の余分な水分を尿として排出し、むくみを軽減する薬です。
足のむくみは、多くの場合「血液と水分の流れの滞り」が原因です。
長時間の姿勢や運動不足、年齢による変化など、誰にでも起こりうるものですが、体の仕組みを理解し、少しの工夫を積み重ねることで、十分に改善が期待できます。日々の小さなケアが、軽やかな足と健康な体を保つ第一歩になるのです。