みなさんは、夜しっかりと休めていますか?
朝起きたときに「ぐっすり眠れた」と感じられる人もいれば、「なんとなく疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚める」という人もいると思います。
実は、この「眠りの質」や「寝ている間の体の状態」が、健康だけでなく“がん”のリスクにも関係していることがわかってきています。

がんの原因と聞くと、多くの人は「食生活」や「喫煙」「運動不足」などを思い浮かべると思います。
けれども、最近では“睡眠”も見逃せない要因のひとつだと考えられています。
いくつかの研究では、睡眠時間が短い人(6時間未満)だけでなく、逆に長すぎる人(9時間以上)でも、乳がんや大腸がんの発症リスクが高くなる傾向があることがわかっています。
つまり、「長く寝れば安心」というわけでもないのです。
ただし、睡眠時間よりももっと大切なのが「眠りの質」。
しっかり眠っているつもりでも、実際には途中で何度も呼吸が止まっていたり、体が十分に休まっていなかったりする場合があります。
これが「睡眠時無呼吸」と呼ばれる状態です。
夜、寝ている間に呼吸が止まる――。
想像すると少し怖いですが、実際には多くの人が気づかないまま、この「無呼吸」を繰り返しています。
ある海外の大規模な研究では、睡眠時無呼吸と診断された約3万4千人を長期間追跡したところ、一般の人と比べて「がん全体の発症リスク」が約26%も高かったという結果が出ています。
さらに詳しく見ると、子宮のがんが約2.8倍、腎臓のがんが約2.2倍、皮膚の悪性黒色腫が約1.7倍、乳がんが約1.4倍と、特定のがんで明らかな増加が見られました。
この結果から、「寝ている間の呼吸の乱れ」が体に大きな影響を与える可能性があることがわかります。

では、「いびき」はどうでしょうか。
家族やパートナーに「いびきがうるさい」と言われた経験のある人も少なくないかもしれません。
アメリカで行われた研究によると、10万人以上の成人を対象に、睡眠時間といびきの有無を調べ、22年間にわたって大腸がんの発症を追跡したところ、平均7時間睡眠の人に比べて「9時間以上寝ていて、いびきをかく人」は、大腸がんのリスクが男性で1.8倍、女性で2.3倍にも高くなっていたそうです。
また、別の研究では、「6時間以下の短い睡眠」で「ほぼ毎晩いびきをかく女性」は、乳がんによる死亡リスクが2倍以上になるという結果も報告されています。
つまり、いびきも無呼吸と同じように、放っておくと体に悪影響を与えるサインの可能性があるのです。
それでは、どうして寝ている間に呼吸が止まったり、いびきをかいたりすると、がんのリスクが上がるのでしょうか。
はっきりとした理由はまだ完全には解明されていませんが、有力な説がいくつかあります。
ひとつは「酸素不足」です。
無呼吸になると、体の中に十分な酸素が行き渡らなくなり、組織が“酸欠”のような状態になります。
この「酸素が少ない環境」は、がん細胞が生きのびたり増えたりしやすい条件になることが知られています。
もうひとつは、「ホルモンバランスの乱れ」です。
睡眠が乱れると、体の中で分泌されるホルモンのリズムも狂ってしまいます。
これによって、免疫力の低下や細胞の修復力の低下などが起こり、がんの成長を助けてしまう可能性があるのです。
無呼吸と聞くと、「自分はそんなに重症じゃない」と思う人もいるかもしれません。
しかし、自分では気づきにくいのがこの病気の厄介なところです。
たとえば、次のようなサインがある人は注意が必要です。
これらに思い当たる場合は、睡眠時無呼吸の可能性があります。

睡眠時無呼吸は、放っておくと高血圧や糖尿病、心臓病などのリスクも高まります。
さらに、今回紹介したように「がんのリスク」にも関係していることが分かってきました。
ですが、適切な治療を受ければ改善できる病気でもあります。
検査は、専門の医療機関(たとえば呼吸器内科や睡眠外来)で簡単に受けられます。
最近では自宅でできる検査キットもあり、負担もそれほど大きくありません。
もし「いびきがひどい」「呼吸が止まっていると言われた」「寝ても疲れが取れない」と感じている人は、ぜひ一度相談してみてください。
治療を受けることで、夜ぐっすり眠れるようになり、日中の集中力や気分も改善するケースが多く報告されています。
ぐっすり眠ることは、毎日の生活を豊かにするだけでなく、将来の健康を守るうえでもとても大切です。
睡眠の質を上げるために、今日からできることをいくつかご紹介します。
ちょっとした工夫でも、睡眠の質は驚くほど変わります。
寝ている間に呼吸が止まったり、いびきをかいたりすることは、単なる“睡眠の問題”ではありません。
それは体からの「健康のサイン」であり、放っておくとがんをはじめとしたさまざまな病気のリスクが高まることがわかっています。
「最近疲れが取れない」「眠ってもスッキリしない」と感じたら、まずは睡眠の状態を見直してみましょう。
良い眠りは、体の修復とリセットの時間です。
しっかり休める毎日を取り戻すことが、がんを防ぐための第一歩になるかもしれません。