近年、「パワハラを受けた」という相談が増えています。とはいえ、必ずしもパワハラそのものが急増したわけではありません。むしろ、被害を受けた側が声を上げやすくなったという社会的な変化が背景にあるといえるでしょう。
一方で、「自分はそんなつもりはなかったのに、パワハラ加害者だと言われた」という相談も増えています。今回は、こうした“未自覚な加害性”の背景と、パワハラ加害者になりやすい傾向、そして行動を修正するための具体的な対策について考えていきます。

パワーハラスメント(以下、パワハラ)とは、職場での優位な立場を利用して、部下などに一方的に精神的・身体的な攻撃を加えることを指します。
直接的な暴力や罵倒だけでなく、間接的な攻撃や不当な扱いも含まれます。
代表的な例としては以下のようなものがあります。
パワハラを受けた側は、仕事への意欲の低下、ストレスの蓄積、うつ病や適応障害の発症など深刻な影響を受けることがあります。また、職場全体にも悪影響が広がり、緊張感のある雰囲気や過剰な気遣い、報告・連絡・相談の減少といった弊害が生じやすくなります。

「最近パワハラが増えたのではないか?」という質問をよく受けますが、実際には「件数が増えた」というよりも、「声を上げやすくなった」という社会的変化が大きいと考えられます。
かつては、職場がある種の“密室”であり、外部への相談が難しい環境でした。また、個人の権利や尊厳に対する意識が今ほど強くなかったため、明確でないハラスメント行為が黙認されることも多かったのです。
しかし近年は、法的な整備やSNSなどの普及により、被害を訴える場が広がりました。また、メンタルヘルスやストレスケアに関する啓発も進み、「これはおかしい」と感じたことを表明できる土壌が整いつつあります。
その結果、以前なら問題視されなかった行動が、今ではパワハラとして認識されるケースが増えているのです。

無自覚のうちにパワハラ加害者になってしまう人には、いくつかの傾向が見られます。ここでは代表的な4つのパターンを紹介します。
「自分の時代はこれでうまくいった」「昔はこれが普通だった」という感覚のまま指導を行うと、今の基準ではパワハラと見なされる可能性があります。
特に、部下のプライベートへの過度な介入や、過剰な叱責などは、時代の変化に伴って許容されなくなってきています。
こだわりが強く、相手に自分のやり方を押し付けてしまうケースがあります。また、場の空気を読まずに無配慮な発言をしてしまったり、相手の話を聞かないなど、意図せず相手を傷つけることもあります。
衝動的に怒ってしまったり、気分や態度が安定しないことが特徴です。さらに、相手に過剰に干渉してしまうこともあり、結果として相手を委縮させてしまうことがあります。
自慢話やマウンティングを繰り返したり、自分の都合で部下に過剰な業務を押し付けるケースがあります。また、意に沿わない相手を攻撃してしまうこともあり、これがパワハラと受け取られることがあります。
無自覚な加害者から脱するためには、「気づく」「分析する」「変える」という3段階のステップが重要です。
まずは、自分の行動や思考の特徴を客観的に振り返ることから始めます。
いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる領域にいる人も少なくありません。これは障害ではなく、性格や特性の範囲内で起こる傾向のことです。
自分の傾向を理解することができれば、行動の修正は十分に可能です。
気づくきっかけとしては、以下のような場面が挙げられます。
特性そのものが問題なのではなく、それが他者に対して不利益をもたらす行動に現れることが問題です。
特性を完全に変えることは難しくても、行動は変えることができます。
たとえば、
行動を変えることで、自分自身も周囲も変わっていきます。
ポイントは以下の3つです。
行動の変化によって、他害的な言動が減り、職場の雰囲気が健全化します。その結果、他者からの信頼や評価が改善し、自身のメンタル面にも良い影響が及びます。

パワハラとは、意図の有無にかかわらず、相手に精神的・身体的な苦痛を与える行為です。
近年は、個人の尊厳や人権への意識が高まり、以前なら許容された指導方法がパワハラと見なされることもあります。
自分の特性を理解し、未自覚な加害性に気づくことは、パワハラを防ぐ第一歩です。
そして、特性そのものを無理に変えるのではなく、「行動」から変えていくことが重要です。
自分の言動を客観的に見つめ直し、問題行動を修正していくこと。
それが、自分自身と周囲の人々を守る最も確実な方法なのです。