夜、ぐっすり眠っているはずなのに、隣で寝ている人から「変な声がする」「うなっている」「まるでうめき声のようだ」と言われたことはありませんか?
実はそれ、「カタスレニア(Catathrenia)」と呼ばれる、非常に珍しい睡眠中の呼吸現象かもしれません。
いびきや無呼吸など、睡眠中に起こるトラブルはよく知られていますが、この「睡眠関連うなり」は、医学的にもまだ研究が少ない非常にマニアックな現象です。今回は、医師の間でも話題になるほど珍しいこの「カタスレニア」について、丁寧に解説していきます。

私たちが眠っている間、体はただ「休んでいる」わけではありません。
呼吸、筋肉の動き、脳の活動、夢、そして音声――さまざまな現象が同時に起きています。
たとえば代表的なものに、
などがあります。
これらはいずれも「睡眠中の異常行動」として知られていますが、今回ご紹介する「カタスレニア」は、その中でも特に珍しい症状です。

カタスレニアとは、眠っている間に「ん~~~」という
うなり声のような音を発する症状のことです。
「睡眠関連うなり」とも呼ばれています。
いびきは息を**吸うとき(吸気時)**に音が出ますが、
カタスレニアはその逆で、
**息を吐くとき(呼気時)**
に声のような音が出るのが特徴です。
呼吸のリズムでいうと、
「吸って~(静か)
↓
止めて(少し間が空く)
↓
ん~~~~~(吐きながら声)」
というパターンを繰り返します。
うなり声の長さは個人差がありますが、2秒から長いと40秒以上続くこともあります。
音の高さも人によって異なり、高音でうなる人もいれば、低いうなり声の人もいます。

驚くことに、カタスレニアは呼吸が止まるわけではなく、酸欠も起きません。
そのため、健康面での重大なリスクはほとんどないとされています。
ただし問題は、「音が大きい」こと。
隣で寝ている人が眠れなくなるほどのうなり声が続くため、
家族やパートナーとの同室睡眠が難しくなるケースもあります。
本人はほとんど自覚がないため、
**「一緒に寝ている人が指摘して初めて気づく」**
ということが多いのです。
はっきりとした原因はまだ解明されていませんが、研究によると
以下のような要因が関係していると考えられています。
初期の研究では「男性に多い」と言われていましたが、最新の報告では
男女差はほとんどないと考えられています。
また、発症年齢も幅広く、子どもから大人まで確認されています。
ただし、
ストレスが多い生活をしている人や、睡眠リズムが不規則な人
に多い傾向があるようです。
ここがまた、この症状の難しいところです。
実は、カタスレニアに対して明確に効果のある薬はありません。
抗不安薬や睡眠導入剤、筋弛緩剤などを使っても改善しないことが多いのです。
また、リラクゼーション法としてよく知られる
ヨガ・瞑想・カウンセリング
なども、残念ながら直接的な改善にはつながらないことがほとんどです。
ただし、睡眠時無呼吸症候群(SAS)にも使われる
「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」が一部で効果が見られた
という報告があります。
CPAPとは、寝ている間に鼻や口に装置をつけて、一定の圧力で空気を送り込み、
気道の閉塞を防ぐ治療法です。
これによって、呼気の際に異常な声帯振動が起こりにくくなり、
うなり声が軽減するケースがあるとされています。
ただし、全ての人に効果があるわけではなく、医師の診断と指導のもとで行う必要があります。
多くの睡眠障害は、健康に悪影響を与える可能性があるため治療が必要ですが、カタスレニアは例外です。
身体的な害はなく、命に関わることもないとされています。
しかし、同居している人が眠れなくなったり、心理的ストレスを抱えたりする可能性があるため、「うるさいけれど危険ではない」といっても、無視してよいわけではありません。
もし家族に指摘されたり、録音で自分のうなり声を確認した場合は、
睡眠外来や耳鼻咽喉科で一度相談してみることをおすすめします。

うるさいけれど、命にかかわる危険はない――
それが「カタスレニア」という不思議な睡眠現象です。
もしあなたやご家族が夜中に「ん~~~」
という音を発しているようなら、少しだけ注意して観察してみてください。
必要以上に不安になる必要はありませんが、気になる場合は専門医に相談し、
安心して眠れる環境づくりを心がけましょう。