
統合失調症は、脳の働きに一時的な不調が生じる病気で、悪化すると「幻聴」「妄想」「思考の混乱」などの症状が目立ちます。
原因のひとつとして、脳内の神経伝達物質であるドーパミンの過剰な働きが関係していると考えられています。
特に「急性期」と呼ばれる発症初期の段階では、脳が過敏な状態となり、外からの刺激に強く反応してしまいます。この時期に現れる症状は「陽性症状」と呼ばれ、幻聴や妄想、不眠、興奮、混乱などが見られます。
代表的な陽性症状として、まず「幻聴」があります。これは、実際には存在しない声が聞こえてくる症状です。次に「妄想」——現実とは異なることを強く信じてしまう状態です。中でも「誰かに狙われている」「監視されている」と感じる被害妄想は非常に苦しいものです。
では、なぜ現実とは違う内容を信じてしまうのでしょうか。
それは、脳が過覚醒状態にあるためです。ドーパミンの作用が強まり、脳が休まらず、感覚が鋭敏になりすぎてしまうのです。同じ音や光でも、実際よりも強く感じられ、世界全体が圧倒的に感じられます。こうした過敏な状態では、「世界が変わって見える」「自分だけが狙われているように感じる」といった体験が起こりやすくなります。
最初は小さな幻聴が聞こえる程度だったものが、次第に声の数や内容が強まり、「命令口調の声」や「自分の噂をする声」へと変化していくことがあります。
こうした幻聴が続くと、次第に「誰かに見張られている」「攻撃されるかもしれない」と感じるようになり、被害妄想が強まります。結果として、常に緊張し、心が休まらない状態になります。
このような状態が続くと、興奮しやすくなり、感情のコントロールが難しくなることもあります。ある方は混乱して言葉が出にくくなり、別の方は動けなくなる「混迷状態」に陥ることもあります。

急性期の状態では、「自分が病気である」という認識(病識)を持つことが難しくなります。そのため、「自分は狙われている」という確信が強く、治療を拒んでしまうケースも少なくありません。
しかし、薬を飲まずに症状が進むと、興奮や混乱が悪化し、本人や周囲の安全に危険が及ぶこともあります。
したがって、治療を受けることが何より大切です。薬を服用できるかどうかが、回復への重要な分かれ道になります。
外来治療で薬を続けることが難しい場合や、危険が差し迫っている場合には、入院治療が必要になることがあります。入院の目的は「安全の確保」と「十分な休養」です。
入院にはいくつかの形態があります。
入院中は、まず「急性期の治療」として薬の調整や副作用の管理を行い、環境を整えて休養をとります。状態が落ち着いたら、「リハビリ期」に入り、生活リズムを整えたり、「作業療法」などで社会復帰への準備を進めていきます。
症状が落ち着いてくると、次は「疾患教育」が行われます。
これは、統合失調症という病気を理解し、「なぜ薬が必要なのか」「再発を防ぐにはどうすればよいのか」を学ぶ大切なステップです。病気を理解することで、治療に前向きに取り組めるようになります。
また、退院後も継続的なサポートが必要です。
生活に不安がある場合は、訪問看護やデイケア、作業所などを利用して、社会とのつながりを保ちながら治療を続けることが望まれます。
こうした支援体制を整えることを「ケースワーク」と呼びます。再発を防ぎ、安心して生活できる環境づくりの要です。

統合失調症は、症状が落ち着いた後も再発のリスクがあります。
再発予防のためには、以下の3つが特に重要です。

「本当に狙われている」と感じるほどの体験は、本人にとって非常に現実的で、恐ろしいものです。しかしそれは、脳が過敏になりすぎた状態——いわゆる急性期の症状による可能性が高いのです。
統合失調症の急性期では、現実との区別が難しくなり、幻聴や被害妄想に圧倒されてしまいます。
この時期には、治療と休養が何よりも重要です。適切な薬の使用と支援体制を整えることで、症状を落ち着かせ、再び穏やかな日常を取り戻すことができます。
治療を受けることは決して恥ずかしいことではありません。
「狙われている」と感じるほどの苦しみを一人で抱え込まず、信頼できる医療機関や支援者に相談することが、回復への第一歩になります。