私たちは日常の中で、ふとした瞬間に過去の「嫌なこと」を思い出してしまうことがあります。
忘れたいのに頭から離れない。思い出した途端、胸がざわついたり、気持ちが沈んでしまう。
そうした体験には、実は心理学的にも明確なメカニズムが存在しています。
本稿では、「嫌なことを思い出す」という現象を、心の働きや精神医学的な観点から丁寧に解説し、最後にその対処法についてもお伝えします。

「嫌なことを思い出す」と一言でいっても、実はその思い出し方には大きく2つのタイプがあります。
それが「侵入思考(しんにゅうしこう)」と「フラッシュバック」です。
侵入思考とは、自分の意図に反して否定的なイメージや考えが頭に浮かんでしまう現象を指します。
たとえば「もう終わったことなのに、何度もその場面が頭に浮かんでくる」「考えたくないのに、つい考えてしまう」といった状態です。
こうした思考が繰り返されると、気分の落ち込みが強まり、うつ状態が悪化することもあります。
フラッシュバックは、過去のつらい出来事を、まるで“再体験”しているかのように鮮明に思い出してしまう現象です。
そのときの感情や身体感覚まで蘇るため、強い不安や恐怖を感じることがあります。
一度きりではなく、繰り返し起こるのが特徴です。
この2つの現れ方は異なりますが、共通点も多くあります。
どちらも「自分の意図とは関係なく、突然思い出してしまう」という点、そして「思い出すことで感情的に巻き込まれ、不安定になる」点が共通しています。
さらに、何度も繰り返されることで、日常生活にまで影響が及ぶことが少なくありません。
このような現象の背景には、さまざまな心の不調が関係していることがあります。
侵入思考とフラッシュバック、それぞれに多い原因を見ていきましょう。
主に以下の3つが挙げられます。
フラッシュバックの原因として代表的なのが以下の3つです。

嫌なことを思い出すときに最も注意すべきは、「感情的に巻き込まれてしまう」ことです。
思い出した瞬間の苦しさから、思考が止まらなくなり、気分がさらに不安定になってしまう。
その不安定さがまた新たな思い出しを引き起こす——。
こうした悪循環に陥ることがあります。
これらが重なると、嫌な思い出から抜け出すことが難しくなります。

重要なのは「思い出しても巻き込まれない」ことです。
嫌なことを思い出すこと自体は完全に防ぐのが難しいため、「どう受け止め、どう流すか」が大切になります。
うつ病や強迫性障害など、脳の働きに関係する疾患が背景にある場合は、適切な治療を受けることが第一です。
薬物療法や認知行動療法などによって、脳内のバランスを整え、思考の悪循環を緩和できます。
強いストレス環境に置かれていると、思い出しの頻度や強度が高まります。
安心して過ごせる環境づくりが非常に重要です。
職場や家庭などで過度な緊張を強いられないよう、環境を整えたり、支援を求めたりすることが大切です。
また、生活リズムを整え、疲労をためないことも心の安定につながります。
嫌な記憶が浮かんでも、それは「脳の誤作動」であり、今の現実とは違うということを意識することが重要です。
「今ここにいる自分」と「過去の出来事」を切り離して捉えることで、感情の巻き込みを減らすことができます。
そのための具体的な方法としては、

「嫌なことを思い出す」という現象には、「侵入思考」と「フラッシュバック」の2種類があります。
どちらも、自分の意思に反して記憶が蘇り、感情が揺さぶられるという共通点を持っています。
問題は「思い出すこと」そのものではなく、「思い出した後に巻き込まれてしまうこと」です。
悪循環に陥らないためには、
この3つが柱となります。
思い出すことを無理に止めるのではなく、「思い出しても大丈夫」と思えるように心の余裕を育てることが、回復への第一歩です。