間欠性爆発性障害

間欠性爆発性障害

「間欠性爆発性障害」とは──怒りが抑えられない人の心の背景と治療

「あの人はキレると止まらない」「怒り出すと手が付けられない」。
そう言われる人が、あなたの身近にもいるかもしれません。あるいは、自分でも「怒りを抑えたいのに止められない」と悩んでいる方もいるでしょう。
このように突発的で強い怒りを自分で制御できない状態を、精神医学では「間欠性爆発性障害(Intermittent Explosive Disorder)」と呼びます。

本記事では、この間欠性爆発性障害について、症例・原因・診断・治療法までを丁寧に解説していきます。

1. 間欠性爆発性障害の具体例

1. 間欠性爆発性障害の具体例

Aさんは普段とても穏やかな性格です。しかし、何かの拍子にスイッチが入ると、怒りが一気に爆発してしまいます。
恋人との関係がそれで壊れたこともあれば、職場での衝突から退職に追い込まれた経験もあります。
「もう二度と同じことを繰り返したくない」と何度も後悔するものの、いざ同じような場面に遭遇すると、どうしても怒りを抑えることができません。

このように、「普段は冷静なのに、ある瞬間に感情が爆発する」──それが間欠性爆発性障害の典型的な姿です。

2. 間欠性爆発性障害とは

2. 間欠性爆発性障害とは

間欠性爆発性障害は、**「突然の強い怒りが前触れなく起こり、その場の衝動に任せて爆発してしまう」**という特徴を持つ精神疾患です。
怒りの爆発は通常、短時間でおさまりますが、その後に激しい後悔や自己嫌悪が訪れます。

怒りの特徴として、以下の3点が挙げられます。

  1. ストレスに比べて怒りの強さが極端に大きい
  2. 30分以内など、比較的短時間で沈静化する
  3. 計画的ではなく、衝動的な反応である

このような爆発的怒りは、家庭や職場などの人間関係を壊すだけでなく、暴力や犯罪に発展するリスクもあります。
また、怒りの後に強い後悔や罪悪感、不安が残ることで、うつ病や不安障害を併発するケースも少なくありません。

3. 背景にある原因──遺伝・脳・環境

3. 背景にある原因──遺伝・脳・環境

間欠性爆発性障害の発症には、いくつかの要因が関与していると考えられています。

  1. 遺伝的要因
     親や近親者に同様の症状がある場合、発症リスクが高まることが知られています。
  2. 生理学的要因
     脳内の神経伝達物質「セロトニン」の働きが低下していると、感情のブレーキが効きにくくなります。
  3. 環境的要因
     幼少期の虐待体験、家庭内暴力の目撃、慢性的なストレスなどが発症に関係することがあります。

これらの要素が重なり合うことで、怒りをコントロールする脳の機能がうまく働かなくなってしまうのです。

4. 診断基準(DSM-5に基づく)

アメリカ精神医学会の診断基準DSM-5では、以下のように定義されています。

  • A. 反復する行動の爆発
     ① 言語的・身体的攻撃が3か月以上、週2回以上続く
     ② 物や人への損壊・損傷を伴う爆発が12か月間に3回以上ある
     (いずれかを満たす)
  • B. 怒りの強さが状況に対して不釣り合いである
  • C. 行動が計画的ではなく、衝動的である
  • D. 爆発によって社会的・職業的機能に著しい支障が生じる
  • E. 発症は6歳以上である
  • F. 他の精神疾患では説明できない

つまり、「突発的」「不釣り合い」「衝動的」な怒りが、生活に深刻な影響を及ぼす場合に診断されます。

5. 鑑別疾患と併存しやすい病気

間欠性爆発性障害と似た症状を示す病気も多く、正確な診断には専門的な見極めが必要です。

ADHD(注意欠如・多動症)

不注意・多動・衝動性が特徴で、「怒りの爆発」が見られることがあります。
ただし、ADHDでは不注意や落ち着きのなさも伴う点が異なります。両者が併存するケースもあります。

反社会性パーソナリティ障害

他人の権利を軽視し、無責任な行動を取る特徴を持つ人格障害です。
衝動的な行動は共通していますが、「他者への配慮の欠如」や「反社会的態度」は、間欠性爆発性障害には必ずしも見られません。

その他の鑑別

  • 躁うつ病(躁状態での衝動)
  • 自閉スペクトラム症(ASD)
  • 重篤気分調節症(少年期に慢性の怒りを伴う障害)

さらに、うつ病・不安障害・ASDなどが併存することもあり、これらが症状を悪化させることもあります。

6. 治療の方向性──「怒りを制御する力」を取り戻す

6. 治療の方向性──「怒りを制御する力」を取り戻す

間欠性爆発性障害の治療は、多面的なアプローチが重要です。主な方法を4つ紹介します。

気づきと受け入れ

まずは、自分の「怒りの爆発」やそれによる影響を客観的に認識することから始まります。
強い怒りを抑えられない自分を責めるのではなく、「病気として理解し、対策できることがある」と受け入れる姿勢が大切です。
この段階では、自己否定感からうつ状態に陥ることもあるため、医師やカウンセラーのサポートが重要です。

アンガーマネジメント(怒りのコントロール法)

怒りを感じたときに衝動的に反応せず、「6秒間待つ」「深呼吸をする」「一度その場を離れる」といった具体的な技法を身につけていきます。
日頃から練習を重ねることで、実際の怒りの場面でも少しずつ制御が可能になります。

併存症の治療

ADHDやうつ病などを併発している場合、それらの治療が怒りの改善にも直結します。
抗うつ薬や気分安定薬が有効なこともあり、医師による慎重な薬物療法が行われます。

試行錯誤を続ける

上記の方法でも難しい場合は、大学病院などの専門医療機関で、さらなる検査や治療法を模索します。
場合によっては頓服薬を活用し、衝動のピークを乗り越える工夫をしていくこともあります。

7. まとめ

間欠性爆発性障害は、「怒りが止められない」という症状を中心とした精神疾患です。
社会生活や人間関係に深刻な影響を及ぼす一方で、治療や訓練によって改善を目指すことが可能です。

自分を責めすぎず、まずは専門家に相談することが第一歩です。
怒りを適切に扱うことは、決して「性格を直す」ことではなく、「脳の働きを整える」こと。
正しい知識と支援があれば、穏やかな日常を取り戻すことができます。