
――不安にならないために知っておきたいこと――
がんの治療を受けている方の中には、「めまい」を感じる人が少なくありません。
めまいといっても、「ぐるぐる回る」「ふわふわする」「立ち上がると倒れそうになる」など、その感じ方は人それぞれです。突然めまいに襲われると、「もしかして病気が悪化したのでは?」と不安になるのも当然でしょう。
実際、がん患者さんにみられるめまいには、いくつもの原因があります。中には早めの受診が必要なものもあれば、しばらく様子を見ても大丈夫なケースもあります。
ただし、見た目だけでは区別がつかないことも多いため、原因を知っておくことが大切です。
ここでは、がん患者さんによく見られる「めまい」の主な原因を5つに分けて、わかりやすくお伝えします。
めまいの中で最も注意が必要なのが、脳にできた腫瘍や転移によるものです。
がんが脳にできると、腫瘍が大きくなるにつれて頭の中の圧力が高くなり、さまざまな症状を引き起こします。特に、体のバランスをとる働きがある「小脳」や「脳幹」という部分にできると、めまいやふらつきが起こりやすくなります。
めまいのほかに、「頭が重い」「吐き気が強い」「目の焦点が合いにくい」「体の一部がしびれる」などの症状が一緒に出ている場合は注意が必要です。
このような症状があるときは、夜間でもすぐに治療を受けている病院に連絡し、医師の指示を仰ぎましょう。
中には、めまいをきっかけに検査をしたところ、脳に腫瘍が見つかったというケースもあります。
軽い症状に見えても、続くようであれば油断しないことが大切です。
次によく見られるのが「貧血」によるめまいです。
白血病の方や抗がん剤治療中の方、また出血をともなうがん(胃がんや子宮がんなど)の方に多くみられます。
貧血によるめまいは、「フワフワする」「頭がぼんやりする」といった感覚が特徴です。立ち上がるときにふらついたり、長く歩くと息切れしたりすることもあります。
こうしためまいは、血液の中の赤血球が減って酸素が足りなくなることで起こります。
多くの場合、貧血が改善すればめまいも落ち着いてきます。
鉄分が足りないなど原因がはっきりしている場合は、主治医と相談しながら適切な治療を受けましょう。食事内容を見直したり、必要に応じて鉄剤などの薬を使うこともあります。
がん治療では多くの薬が使われますが、その一部には「めまい」を引き起こすものがあります。
たとえば、痛みをやわらげるオピオイド系の薬、気持ちを落ち着かせる抗うつ薬や抗不安薬、血圧を下げる薬、利尿薬、アレルギー薬、そして一般的な頭痛薬などでもめまいが起こることがあります。
また、一部の抗がん剤には「末梢神経障害」と呼ばれる副作用があり、手足のしびれやふらつきを感じることがあります。これがめまいとして感じられる場合もあります。
もし「薬を飲んだあとにふらつくようになった」「点滴のあとにめまいが出る」といったことがあれば、自己判断せず主治医に伝えましょう。
薬の種類や量を調整することで改善できる場合があります。
「立ち上がった瞬間にクラッとする」「朝、起き上がるとふらつく」といった経験はありませんか?
これは「起立性低血圧」と呼ばれるもので、急に体を起こしたときに血圧が下がり、脳に流れる血液が一時的に減ってしまうことで起こります。
がんの治療による体力の低下や、脱水、食事量の減少、あるいは薬の影響でも起こることがあります。
水分をしっかりとる、急に立ち上がらずゆっくり動く、体を少し動かしてから立つなど、日常の工夫でかなり防ぐことができます。
また、塩分を極端に控えすぎていると血圧が下がりやすくなることもあるため、食事内容も見直してみましょう。
がんと診断されたり、治療を続けたりする中で、心のストレスはどうしても避けられません。
不安や緊張が続くと、自律神経のバランスが乱れ、体の調子にも影響が出ます。その結果、めまいやふらつきが起こることがあります。
「検査結果を待っているときにめまいがした」「治療のことを考えると体がふわふわする」といった場合は、心の負担が関係しているかもしれません。
このようなときは、我慢せず主治医や看護師、あるいは心理士に相談してみてください。
話を聞いてもらうだけでも、心が少し軽くなることがあります。睡眠や食事のリズムを整えることも、ストレスによるめまいの改善につながります。

もしめまいを感じたら、まずは「転ばないようにすること」が最優先です。
すぐにしゃがむ、壁やイスに手をつく、低い姿勢をとるなどして安全を確保しましょう。
無理に歩こうとしたり、急に立ち上がったりするのは危険です。
短時間でおさまり、繰り返し起こらないようであれば、次の通院時に医師へ伝えるだけでも大丈夫です。
しかし、次のような場合はすぐに病院へ連絡してください。
これらの症状があるときは、脳の異常など緊急の原因が隠れていることがあります。
夜間や休日であっても、ためらわずに病院に連絡しましょう。

めまいは、多くのがん患者さんが経験する身近な症状のひとつです。
原因はひとつではなく、脳の病変、貧血、薬の影響、血圧の変化、精神的なストレスなど、さまざまな要因が関わっています。
中には、命に関わることもあるため、軽く見ないことが大切です。
一方で、原因がはっきりして適切に対処すれば、改善できるケースも多くあります。
不安なときは、ためこまず主治医に相談してください。
安心して治療を続けるためにも、「めまい」を体からのサインとして受け止め、上手に付き合っていくことが大切です。