みなさんは、最近しっかり笑っていますか?
「笑う門には福来たる」ということわざがあるように、昔から笑いは健康や長寿と深く関係していると言われてきました。実は、この「笑い」が、がんの予防や治療のサポートになる可能性があることが、さまざまな研究からわかってきているのです。

笑いと健康の関係を世の中に広めたのは、アメリカのジャーナリストであり『笑いと治癒力』の著者でもあるノーマン・カズンズという人物です。
彼は若いころ、当時は治療法がほとんどなかった膠原病(こうげんびょう)という難病を発症しました。痛みが強く、体を動かすこともつらい状態でしたが、病室にユーモアの本やコメディ映画を持ち込み、自分で「笑いの治療」を始めたのです。
その効果は驚くべきものでした。たった10分間お腹を抱えて笑うと、少なくとも2時間は痛みを感じずに眠ることができたそうです。さらに、彼は笑う前後で自分の血液を検査し、体の炎症を示す値が実際に下がっていることを確認しました。最終的に、彼は医師から「治る見込みがない」と言われていた病気を、笑いの力で克服したのです。
では、なぜ笑うことで体の調子が良くなるのでしょうか。
その理由のひとつは、「笑い」がストレスを減らしてくれることです。
インドで始まった「笑いヨガ」という取り組みでは、冗談やコメディを使わず、ただ「理由なく笑う」ことを行います。笑う動作とヨガの呼吸法を組み合わせた運動法で、誰でも簡単にできるのが特徴です。
ある研究では、参加者が月に1回、45分間の笑いヨガを6か月続けたところ、ストレスを感じると分泌されるホルモン(コルチゾールなど)が明らかに減ったという結果が出ています。つまり、笑うことで心が軽くなるだけでなく、体の中でもストレスを減らす反応が起きているのです。
笑うと

笑いの効果は、心だけでなく体の防御システムにも及びます。
日本の研究では、笑うことで「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」という免疫細胞の働きが高まることが確認されています。NK細胞は体の中をパトロールし、体調をくずす原因になる細胞を見つけて処理してくれる、いわば“体の警備員”のような存在です。
さらに面白いことに、「作り笑い」よりも「楽しいと感じながら笑う」方がNK細胞の働きがより高まることもわかっています。つまり、心から笑うことが一番のポイントなのです。
がんの治療を受けている人にとっても、「笑い」は大きな味方になることが報告されています。
日本で行われた研究では、胃がんや大腸がんの患者さん41名を対象に、笑いのプログラムを実施しました。その結果、抗がん剤治療を受けている間でも、笑うことで免疫力の低下を防げることがわかったのです。
また、最近の別の研究では、笑いのプログラムを受けたがん患者さんは、痛みがやわらぎ、生活の質(QOL)が向上したという報告もあります。
つまり、「笑うこと」は薬ではないけれど、心と体の両方を支えてくれる“自然の治療法”といえるでしょう。
実際、世界的に有名ながん専門誌『ランセット・オンコロジー』でも、2015年に「Laughter is the best form of therapy(笑いは最高の治療法である)」というタイトルの記事が掲載されました。世界の専門家たちも、笑いの力を無視できないと感じているのです。
「笑いの力」を信じて、実際に病気を乗り越えた人もいます。
ケリー・ターナーの著書『がんが自然に消える生き方』には、笑いでステージ4の乳がんを克服したサランヌという女性の話が紹介されています。
サランヌさんは30代で乳がんを宣告され、がんは脇の下やお腹の奥、首のリンパ節などにも広がっていました。そんな中で彼女はノーマン・カズンズの話を知り、「笑いでがんを治す」と決意。小さな娘さんと一緒に、毎日2回、朝と夕方に笑う時間をつくりました。変な顔をしたり、踊ったり、ジョークを言ったりして、親子でお腹の底から笑い合ったのです。
さらに、抗がん剤治療の初日には「抗がん剤コメディ・パーティ」を開き、病室を笑いで包みました。やがて彼女は、同じように病気と向き合う人たちのために「コメディで治そう財団」まで設立します。
そうしてサランヌさんは、治療を受けながらも笑いの力を信じ続け、診断から2年後には検査でがんの影が消えたといいます。
それから13年たった今でも、彼女は再発することなく、幸せな生活を送っているそうです。

これまでの研究や体験から、「笑い」は体の免疫を高め、がんをはじめとする病気に立ち向かう力をサポートしてくれることがわかってきました。
とくに、NK細胞のような免疫の働きが活発になることで、私たちの体は本来持っている“治る力”を発揮できるようになります。
笑うことは特別な道具も薬もいりません。自分でできて、お金もかからない最高の健康法です。
コメディ映画や落語、バラエティ番組、YouTubeのお笑い動画など、どんな形でも構いません。自分が「楽しい」と思えるもので笑うことが何より大切です。
1日1回、お腹を抱えて大笑いする時間をつくってみましょう。
そのたびに、体の中では免疫細胞が活性化し、ストレスが軽くなり、心が前向きになります。
笑いはまさに、誰でもできる「自然の免疫療法」なのです。