【大人の発達障害】〇〇に答えられないと採用されなかった話

 社会において、あることができない人に対して、日本人は時折「できない人」というレッテルを貼りがちです。しかし、一部の人が不得意なことがあったとしても、他の分野で高い業績を上げ、活躍している例は少なくありません。

 発達障害もその一例で、能力には凹凸があるものの、特定の領域で並外れた才能や強みを発揮できることが特徴です。このため、その能力が発揮されるかどうかは、環境や活かし方に左右されます。

 今回は、面接で「ある質問」に答えられないことで不採用になった事例を取り上げ、対策と重要性についてお話しします。この質問に適切に対応できるかどうかが、就職や転職において非常に大きな差を生みます。


面接の決め手となる「障害についての質問」

 発達障害当事者の就職活動において、自分の特性を理解し、それを適切に伝えることは極めて重要です。「障害によってどのような症状が出るか」という質問に答えられずに採用されなかったケースが多くあります。

 面接でたとえ他の質問には完璧に答えられたとしても、この質問に応えられないことで不採用になった例が数多くあるようです。逆に、この質問に誠実に答える準備をしていると、企業が重視しているポイントを押さえられ、ライバルに差をつけられるのです。

 面接官が「障害によってどんな症状が出るのですか?」という質問をするのは、応募者が自身の障害をどれだけ理解し受け入れているかを確認するためです。応募者がこの質問に自分の言葉で具体的に答えることで、面接官にとって好印象を与えることができ、採用される可能性を高めることができます。


企業側が抱える課題と面接官の意図

企業側が抱える課題と面接官の意図

 日本の企業は法定雇用率の引き上げを受け、障害者雇用を以前よりも推進していますが、多くの企業はまだ障害者雇用のイメージやノウハウが不足しているのが実情です。

 行政や企業が行うアンケートでも「障害者雇用のイメージがわかない」「支援の方法がわからない」といった回答が目立ちます。そのため、企業は面接を通じて応募者がどれだけ障害を受容できているかを確認し、自社での働き方をイメージできるかどうかを見極めようとしています。

 障害受容がしっかりとできている応募者であれば、企業側もその人に合った支援の提供がスムーズにできると考えるのです。具体的にどのようなサポートが必要で、どのように仕事を割り振ればその人の能力を最大限に活かせるかを把握できれば、採用後のミスマッチを防ぎ、長期的な雇用につながります。


障害受容を問う理由:企業の不安と課題

 企業が「障害受容」について質問する背景には、企業サイドの過去の苦い思い出や問題点があることもあります。障害者雇用に取り組み、サポートを試みたものの、問題が解決できなかったケースでは、企業側に不安が残っていることが少なくありません。

 例えば、ある企業では発達障害の人を雇用したところ、プライベートでのトラブルによりメンタル不調を起こして無断欠勤や遅刻が頻発したという事例がありました(あくまでこれはその人の1例に過ぎないのですが、こうした1例で企業側にステレオタイプが形成されてしまうのも事実です。ご了承願います)。企業は頻繁な面談や対応を試みたものの、退職に至ったのです。

 このような過去の経験から、企業は再び同じリスクを負うことを避けるため、面接で応募者の自己理解や障害の受容を問うことがあるのです。この点を応募者がきちんと理解し、自分の特性や症状について具体的に説明できると、企業側の不安を軽減することができます。


採用された実例:ADHDの女性の面接対応

 実際に面接でこの質問にしっかりと答えた例として、ADHDを持つある女性がいます。彼女は面接で次のように伝えました。

 「私の症状としては、思いついたことをすぐ口にしてしまう、気になることを繰り返し質問してしまうことがあります。しかし、現在通っている訓練機関で、自分がどのような状況でそうした兆候が出るのかを学び、コントロールが可能になりました。

 例えば、気になることがあると頭の中がそわそわしてしまいます。そのようなときは、深呼吸をして『この質問はいま必要か』を自問するようにしています。もしも場に合わない質問をしてしまった場合でも、『今はその質問は必要ありませんよ』と指摘していただければ、すぐに切り替えが可能です。

ですので、ご協力をいただけるとありがたいです。」

 この回答により、面接官は「自己理解ができている」と評価しました。もちろん、これだけで採用が決まるわけではありませんが、障害が受容できているということを企業側に示し、自分の言葉で特性を説明することで、働く姿を具体的にイメージしてもらうことができたのです。


面接に向けた準備の大切さ

面接に向けた準備の大切さ

 障害受容の質問にしっかりと答えられるようにするためには、自分の特性や症状を理解し、適切に伝えるための準備が必要です。これから就職を目指す人や転職を考えている人は、自己理解を深め、面接で自分の言葉で伝えられるように練習しましょう。自分自身を理解し、自分の言葉で表現できると、その言葉には自然と説得力と誠実さが生まれます。

 面接の成功は、応募者自身の自己理解と企業側に働くイメージを持ってもらう能力にかかっています。しっかりと準備を行い、採用のチャンスを最大限に引き上げましょう。