最近、「がん」は高齢者だけの病気ではなくなってきています。世界中で若い世代にがんが増えており、日本でも同じ傾向が報告されています。私たち大人が今できること――それは、子どもを将来のがんから守るための正しい知識を持ち、日々の生活を少しずつ見直すことです。

2023年に医学誌『BMJ Oncology』が発表した研究によると、過去30年間で50歳未満のがん患者は世界全体で約79%も増加しました。特に大腸がんの増加が顕著で、アメリカでは55歳以下で診断される割合が1995年の11%から2019年には20%へと倍増しています。驚くべきことに、最も急増しているのは20代です。
日本でもこの傾向は例外ではありません。欧米やオーストラリア、ブラジルと同様に、日本でも若い世代の大腸がんが増加しています。25歳から49歳の層での発症率が年々上昇しており、かつて「中高年の病気」とされていたがんが、若年層にも広がっているのです。
一般的に、がんは「年を取ると遺伝子の傷が増え、発症する」と考えられています。ところが最近の研究では、がんのもとになる遺伝子や染色体の異常は、実は子どもの頃から始まっていることがわかってきました。
たとえば、「クロモスリプシス」と呼ばれる染色体の破壊現象があります。これは染色体がバラバラに壊れた後、誤ってつなぎ合わされることで遺伝子の一部が欠けたり変形したりする現象です。最新の研究では、この異常の多くが「子ども時代」や「思春期」にすでに起きていることが明らかになっています。
また、乳がんに関係する乳腺の遺伝子変化も、思春期の頃から始まるという報告があります。こうした遺伝子の小さな異常が少しずつ積み重なっていくと、将来的にがんを引き起こす可能性が高まります。
つまり、「がんの芽」はすでに子どもの体の中で生まれている可能性があるのです。

がんの原因には、遺伝的な要因だけでなく、生活環境や食習慣も深く関わっています。なかでも注目されているのが、腸内環境とがんの関係です。
大腸がんの研究で、「コリバクチン」という毒素を作り出す大腸菌が注目されています。この毒素は大腸の粘膜に遺伝子の傷をつけ、がんのリスクを高めることが分かっています。そして、この菌が多いのは「西洋型の食事」を好む人――つまり、肉類や高脂肪の乳製品、揚げ物、甘いデザート、白いパンやパスタ、バターやマーガリンなどを多く摂る人々です。
こうした食事を続けると、腸内のバランスが崩れ、遺伝子に悪影響を与える菌が増えてしまいます。反対に、野菜や果物、発酵食品、食物繊維を多く含む和食中心の食生活は、腸内環境を整え、がんの予防につながることが明らかになっています。
子どもをがんから守るために、今できる最も身近なこと――それが「食生活の見直し」です。難しいことをする必要はありません。大切なのは、毎日の食卓で小さな選択を意識することです。
・スナック菓子や清涼飲料などの「超加工食品」はできるだけ控える
・ファーストフードや揚げ物を食べる回数を減らす
・お菓子の代わりに果物を
・ごはんや味噌汁、魚、野菜を中心にした和食を基本にする
そして、何より大切なのは「家族で一緒に食事を作ること」です。子どもと一緒に買い物をし、旬の野菜を選び、一緒に料理を作る。そうした体験が、子どもの「食べる力」を育て、自然と健康的な食習慣を身につけるきっかけになります。
子どもの未来の健康は、今日の食卓から始まります。
「忙しいから」「時間がないから」とコンビニ食やインスタント食品に頼るのではなく、ほんの少しでも手作りを取り入れてみましょう。その一歩が、将来の大きな差につながります。

最近の研究では、食生活の改善によってがんのリスクを大幅に減らせることがわかっています。例えば、赤身肉や加工肉を減らす、砂糖入り飲料を控える、野菜や海藻、豆類を積極的に摂るなどのシンプルな工夫が、遺伝子の損傷を防ぎ、体の修復力を高めるのです。
また、子どもの頃から運動の習慣を持つことも大切です。体を動かすことで代謝が上がり、免疫力が強化されます。睡眠不足やストレスもホルモンバランスを乱し、がんリスクを高めるため、しっかり休む時間も必要です。
がんは突然やってくるものではありません。長い時間をかけて、少しずつ体の中で育っていく病気です。
だからこそ、子どものうちから体を守る「予防」が何より重要です。親が食生活や生活習慣を整える姿勢を見せることが、子どもにとって最高の教育になります。
子どもたちは、私たちの未来そのものです。
「食べること」「生きること」「健康を守ること」――その基本を、家庭の食卓から伝えていきましょう。小さな一口の積み重ねが、がんに負けない体をつくります。
子どもをがんから守るために、今日からできることを、あなたの家庭から始めてみませんか?