
日本では、今や年間およそ100万人が新たに「がん」と診断されています。かつては特別な病気と思われていたがんも、いまでは誰にとっても身近な病気になりました。
がんによって亡くなる人も年々増えており、その大きな原因のひとつが「高齢化」です。年を重ねるほどがんのリスクは高まるため、長寿社会の日本ではがんの発症も増えていくのは自然な流れといえます。
しかし、この「がんによる死亡率」には、日本国内でも大きな地域差があることをご存じでしょうか。
同じ日本に住んでいても、都道府県によってがんで亡くなる人の割合が大きく異なるのです。ある調査では、男性の場合、死亡率の差が最大で1.4倍にもなると報告されています。
今回は、国立がん研究センターの統計データをもとに、「がん死亡率が高い都道府県ワースト5」をご紹介します。さらに、なぜ地域によって差が出るのか、その背景についても見ていきましょう。
全国を100としたとき、大阪府のがん死亡率は107とやや高めです。
大阪では、男女ともに「肝臓のがん」が多いのが特徴で、男性では「膀胱がん」、女性では「肺がん」が目立ちます。
理由として考えられているのは、「がん検診の受診率の低さ」です。がんは早期に見つけて治療を始めるほど助かる可能性が高まりますが、検診を受けない人が多い地域では、発見が遅れて進行した状態で見つかるケースが増えます。
また、大阪府の中でも地域によって経済的な格差が大きく、生活習慣や医療へのアクセスにも差があることが、がんの発症率や死亡率に影響していると考えられています。
福岡県も全国平均よりやや高く、特に「肝臓がん」と「肺がん」が多い傾向にあります。
九州地方はもともと肺がんが多い地域として知られていますが、福岡県の場合、昔から炭鉱の町が多く、長年の粉じんや大気汚染の影響が関係しているのではないかといわれています。
また、工業や交通などが発達している地域では、生活習慣や環境要因が複雑にからみ合っており、生活の中にがんのリスクを高める要因が潜んでいる可能性もあります。
秋田県は「がんにかかる人の割合(罹患率)」が全国でもっとも高い県とされています。そのため、がんで亡くなる人の割合も自然と高くなる傾向にあります。
秋田では、「食道」「胃」「大腸」「胆のう・胆管」「すい臓」など、消化器系のがんが多いのが特徴です。
とくに胃がんのリスクとして知られているのが「塩分のとりすぎ」です。秋田県は「しょっぱい食べ物が好き」な地域として有名で、味の濃い漬物や汁物を日常的に食べる人が多いといわれています。
ただし、秋田県ではがん検診を積極的に行っており、その結果、早期のがんが見つかるケースも多くなっています。そのため、「発見されるがんの数」が増えて、統計上は死亡率が高く見えている可能性もあります。
北海道は、全国の中でも喫煙率(たばこを吸う人の割合)が高く、それががん死亡率の高さに関係していると考えられています。
北海道では「頭頸部がん」と呼ばれる、顔から首にかけてできるがんが多いのが特徴で、これは喫煙と深く関わるがんの一つです。
また、肺がんの死亡率も高く、寒冷地ならではの生活習慣――屋内での喫煙機会が多いことや、運動不足、食生活の偏りなど――が影響している可能性も指摘されています。
広大な地域で医療機関までの距離が長く、早期発見が難しいことも背景の一つといえそうです。
がんによる死亡率が全国で最も高いのは青森県です。全国平均を100とすると、青森県は124と大きく上回っています。
注目すべきは、がんに「かかりやすい」わけではなく、「亡くなりやすい」という点です。つまり、がんにかかる人の数は全国平均と同程度なのに、亡くなる人の割合がとても高いのです。
青森県では、がんが見つかったときにはすでに進行しているケースが多いといわれています。
理由としては、がん専門の病院まで距離がある、交通の便が悪い、また「病院に行くのをためらう人」が多いといった地域特性も関係していると考えられます。
がんは「早く見つけて、早く治療する」ことが何よりも大切ですが、そのチャンスを逃してしまう人が少なくないようです。

6位は長崎県(女性では全国3位)、7位が岩手県(女性では4位)、8位が福島県、9位が埼玉県、10位が香川県という結果になっています。
また、がんの種類ごとに見ると次のような傾向もあります。
このように、がんの種類によっても地域差があり、生活習慣や環境、食文化、医療体制など、さまざまな要因が関わっていることがわかります。
ここまで、がんの死亡率が高い都道府県を紹介してきましたが、これらのデータを「怖い」と思うよりも、「自分の生活を見直すきっかけ」として活用していただきたいと思います。
がん死亡率の高い地域には共通点があります。
それは、「塩分の多い食事」「喫煙率の高さ」「検診受診率の低さ」「医療アクセスの不便さ」などです。
これらはどれも、少しずつ生活の中で改善できることばかりです。
たとえば、
こうした小さな積み重ねが、自分自身の健康を守る大きな力になります。
まとめ

がん死亡率が高い都道府県の上位5つは、
1位 青森県、2位 北海道、3位 秋田県、4位 福岡県、5位 大阪府。
地域によって差があるのは、食生活、喫煙率、検診率、経済状況、医療へのアクセスなど、さまざまな要因が関係しています。
「住んでいる地域が高リスクだから不安」と思うのではなく、そこから学び、自分の生活習慣を少しでも良い方向に変えることが大切です。
がんは、早期に見つけて適切に対応すれば、十分に乗り越えられる病気です。
地域の差よりも、自分自身の「日々の選択」が未来を左右する――そう考えて、今日からできる健康習慣を見直してみましょう。