皆さんは、1日のうちどれくらいの時間を座って過ごしていますか?
仕事、食事、移動、テレビやスマホの時間を合わせると、気づかないうちにかなり長い時間を座って過ごしている方も多いのではないでしょうか。
実際、私自身も日によっては8〜9時間も座っていることがあります。
最近の研究では、「長時間座っていること」ががんのリスクを高める可能性があることがわかってきています。
体を動かさない生活が健康に悪いということは以前から知られていますが、座っているだけでも体に悪影響を及ぼすことがあるのです。

2024年に発表された日本の研究では、座って過ごす時間と乳がんの発症リスクの関係が調べられました。
対象は35歳から69歳の女性およそ3万6千人。1日の座る時間が「7時間未満」と「7時間以上」の2つのグループに分けて、がんの発症率を比べました。
その結果、座っている時間が7時間以上のグループでは、7時間未満のグループに比べて乳がんになるリスクが36%も高いことがわかりました。
年齢や体格、飲酒や喫煙の有無などを考慮したうえでの結果なので、「座る時間」が独立したリスクとして関係していることが示唆されています。
では、「運動すれば帳消しになるのでは?」と思う方もいるでしょう。
しかし、調査では意外な結果が出ています。
7時間以上座る人の中で、
それぞれについて乳がんのリスクを調べたところ、どのグループでも7時間未満の人に比べてリスクは下がらず、むしろ高いままだったのです。
つまり、「長時間座る」という習慣そのものが体に悪影響を与えており、あとから運動を加えても十分に打ち消せない可能性があるということです。
同じように、2020年に報告された日本の別の研究でも、職場で座っている時間とがんの発症率の関係が調べられました。
3万人以上を対象とした結果、仕事中に7時間以上座っていた人は、全体的ながんのリスクが高い傾向にありました。
さらに詳しくみると、
という大きな差が見られました。
つまり、長時間座って過ごす生活は、乳がんだけでなく、他のがんのリスクも高める可能性があるということです。
実は、日本人は世界の中でも特に「座っている時間が長い国民」と言われています。
世界20カ国を対象とした調査では、平日の座る時間の平均は約5時間。
一方、日本人はそれより2時間も長い平均7時間という結果でした。
確かに、昔に比べて便利な生活になり、外に出て体を動かす機会は減っています。
買い物もネットで済ませられますし、エンタメもテレビや動画配信、スマホ、ゲームと、ほとんどが「座ったまま」できるものばかりです。
便利さの裏で、知らないうちに私たちはどんどん動かなくなっているのです。

長時間座っていると、体を動かす筋肉がほとんど使われなくなります。
とくに、太ももやお尻などの大きな筋肉が使われないことで、血流が悪くなり、代謝が落ちてしまいます。
その結果、体脂肪が増えやすくなったり、血糖値が上がったり、ホルモンのバランスが崩れたりします。
こうした変化が、がんの発生や進行に関わると考えられています。
また、座っている時間が長い人ほど、ストレスがたまりやすく睡眠の質も下がる傾向があるという報告もあります。
つまり、心身の両面から「座りすぎ」が悪影響を及ぼしているのです。
では、どうすれば座る時間を減らせるのでしょうか?
ポイントは、「特別な運動を頑張る」よりも、「こまめに立ち上がる習慣をつくる」ことです。
電車やバスではできるだけ立つ、あるいは一駅分歩くようにする。
それだけでも1日の活動量が増えます。
テレビや動画を見るときは立って見る、または家事をしながら見る。
少し動きながら過ごすことで血流が良くなります。
長時間座りっぱなしにならないように、1時間に1回は立って伸びをしたり、歩いたりする。
可能であれば、スタンディングデスク(立って仕事ができる机)を使うのもおすすめです。
また、コピーを取りに行く、遠いトイレに行くなど、あえて動く工夫をしてみましょう。
スマートウォッチや歩数計を活用し、1日1万歩を目標にしてみましょう。
数字で確認できるとモチベーションが上がります。

「1日7時間以上座っていると、がんのリスクが高まる」という研究結果は、決して大げさな話ではありません。
もちろん、座ること自体が悪いわけではなく、「座りすぎること」が問題なのです。
仕事柄、どうしても座る時間が長いという人も多いと思います。
しかし、1時間ごとに立ち上がる、移動のときに歩く、家でダラダラしすぎないといった小さな工夫でも、健康リスクを減らすことは十分に可能です。
「少しでも座る時間を減らす」ことが、がんをはじめとするさまざまな病気を防ぐ第一歩になります。
今日から少しずつでも、体を動かす時間を増やしていきましょう。