研修講師という仕事は、自らの経験をノウハウとして体系化し、それをわかりやすく伝えることで受講者の成長を支援する大切な役割を担っています。
しかし、せっかくのノウハウを伝えても、受講者が「先生はできるけれど、私には無理だ」と感じてしまったとしたら、その研修は成功とは言えません。
研修の理想的な形は、受講者が「やってみたい」「できそう」「できるかもしれない」と前向きな気持ちを抱くことです。講師がどんなに高いスキルを持っていても、それが受講者に届かず、行動につながらなければ意味がありません。
本記事では、研修講師として受講者に「私にもできる」と思ってもらえるノウハウの伝え方について、3つのポイントを中心に解説します。これから講師を目指す方、すでに登壇している方の参考になれば幸いです。

最初のポイントは、「ゴールのレベルを高く設定しすぎない」ことです。
講師は多くの経験を積み重ねて今のスキルに至っています。そのため、自分にとっては「当たり前」のことでも、受講者にとっては初めて触れる内容であることが多いのです。
研修のゴールを一気に高みに設定すると、受講者は「難しい」「自分にはできない」と感じてしまいます。重要なのは、最初の一歩を「小さな成功体験」にすることです。
例えるなら、いきなり十段の跳び箱を飛ばせるのではなく、一段から少しずつ段階を上げていくこと。受講者の現状に寄り添いながら、達成感を積み重ねるプロセスを設計することが、講師の役目です。
次に意識したいのは、「ノウハウを3つにまとめる」ということです。
研修では伝えたい内容が多くなりがちです。たとえば「プレゼンテーション研修」なら、笑顔・話す速度・間の取り方・ジェスチャー・視線など、重要な要素がいくつも思い浮かびます。
しかし、初めて学ぶ受講者にあれもこれも伝えると、頭の中が整理できず、「結局どれを意識すればいいのか分からない」となりやすいのです。
そこで効果的なのが、「まず3つに絞る」ことです。
たとえば、
この3つを重点項目として研修を構成します。最初は笑顔だけを意識して練習し、できるようになったら話す速度、次にジェスチャーというように段階的に進めます。
こうすることで、受講者は着実にスキルを積み上げることができ、学びの実感と自信を得られます。

3つ目のポイントは、「簡単なノウハウから始める」ことです。
どんなに重要なノウハウでも、最初から難易度が高いと受講者は挫折してしまいます。研修序盤では、すぐに実践でき、変化を実感しやすい内容から始めましょう。
たとえばプレゼン研修なら、「間をとる」「強調ポイントを作る」といった高度な技術よりも、まずは「笑顔で話す」「語尾を下げる」といった基本動作を意識させることが効果的です。
小さな成功を積み重ねることで、受講者は自信を持ち、より難しいステップに挑戦する意欲が生まれます。

研修講師に求められるのは、自分のすごさを見せることではなく、受講者の可能性を引き出すことです。講師が一方的に「正解」を示すのではなく、受講者の立場に寄り添い、「できるかもしれない」という気持ちを芽生えさせる指導が大切です。
受講者が「やってみよう」「できた」と感じる瞬間こそ、研修の最大の成果です。そのためには、ゴール設定を適切にし、ノウハウを絞り込み、シンプルな内容から始めることが欠かせません。
受講者と共に一歩ずつ成長していく姿勢を忘れずに、より多くの「できた!」の瞬間を生み出していきたいですね。