肩こりの原因と改善法

私たちの多くが一度は経験する「肩こり」。国が行う国民生活基礎調査によると、男性では腰痛に次いで2番目に多い症状で、1000人中およそ60人が肩こりに悩まされています。一方、女性ではこの40年間、肩こりが常に1位。1000人中120人ほどが肩こりを訴えており、実に12%を超える方が日常的に不快感を抱えている計算になります。
この数字には0歳児なども含まれるため、実際の成人ではさらに高い割合になると考えられます。まさに国民病といっても過言ではありません。

「肩こり」の“肩”とはどこか?

「肩こり」の“肩”とはどこか?

まず押さえておきたいのは、「肩こり」という言葉が指している部位についてです。
日本人が「肩がこる」と言うとき、多くの場合は肩甲骨の内側から首の下あたりを指しています。しかし、実はこの範囲を「肩」と表現するのは日本独自の文化。海外では「neck(首)」と呼ばれる部分にあたります。

つまり、私たちがいう「肩こり」は、世界的には「首の付け根の痛み」や「首のこり」と表現されるものです。
この違いが、日本人は肩がこりやすいといわれる理由の一つとも言われていますが、実際のところ本当に日本人だけが特別に肩こりを感じやすいのでしょうか。

世界的にも多い「肩こり」=「首の痛み」

ノルウェーで行われた調査では、首の痛みを訴える人の割合が約15%と報告されています。しかも日本と同様、男性より女性のほうが多く、年齢とともに増加する傾向も見られました。
これは日本の統計とほぼ同じ数値です。
つまり、肩こりは日本人特有の症状ではなく、人間であれば誰にでも起こりうる普遍的な現象だといえるのです。

肩こりの主な原因は3つ

肩こりにはさまざまな原因が存在します。その中でも、医学的に特に関係が深いと考えられる3つの原因について解説します。

【原因①】血管や神経の圧迫によるもの

まず1つ目は、筋肉の間で血管や神経が圧迫されてしまうことです。
肩甲骨の内側には「肩甲背神経」や「頚横動脈」といった構造が走っています。これらは表層の筋肉と深層の筋肉の間を通っており、常に腕の重みで引っ張られた状態にあります。

人間の肩は「懸垂関節」と呼ばれる構造をしており、腕をぶら下げて支える仕組みです。つまり、私たちの腕は常に数キログラムの重さで筋肉を下方に引っ張っています。その結果、筋肉と筋肉の間の隙間が狭くなり、血管や神経が圧迫されるのです。
これが長時間続くと血流の悪化や神経の興奮を引き起こし、痛みやこりにつながります。

興味深いことに、筋肉そのものが硬くなっているとは限らないという研究結果もあります。筋硬度計という装置で筋肉の硬さを測定したところ、肩こりのある人とない人で統計的な差はほとんど見られませんでした。つまり、筋肉が硬いから肩がこるというよりも、筋肉の間で神経や血管が圧迫されていることが主な原因の一つなのです。

【原因②】筋肉が腕を支えきれないタイプ

2つ目は、筋力不足や関節の不安定性が関係するタイプの肩こりです。
私たちの腕1本の重さはおよそ3〜4kgあります。その重さを四六時中、筋肉が支えているのです。生まれつき筋肉が細かったり、関節を支える力が弱い人では、腕を支えきれず骨がわずかにずれてしまうことがあります。
このような状態を「肩不安定症」と呼びます。

肩不安定症の方は、肩関節の位置が下がったり、わずかにずれた状態で日常生活を送っているため、筋肉に常に無理な負担がかかります。その結果、肩周囲の筋肉が疲労し、慢性的な肩こりが起こりやすくなるのです。

【原因③】首の椎間板や加齢変化によるもの

3つ目の原因は、首の骨(頸椎)や椎間板の老化による影響です。
頸椎の間には「椎間板」と呼ばれるクッションのような組織がありますが、年齢を重ねるとこの椎間板がすり減ったり、変形してしまうことがあります。その結果、骨と骨の間が狭くなり、神経が圧迫されて肩こりや手のしびれを引き起こします。

このような首由来の肩こりは、特に30代以降から増加し、姿勢の悪化やデスクワークなども悪化要因になります。
単なる筋肉疲労ではなく、首の構造的な変化が関係しているケースです。

肩こりの治療と改善法

肩こりの治療と改善法

原因によって有効な治療法は異なりますが、代表的なものを挙げてみましょう。

血流・神経圧迫が原因の肩こり

血流の悪化によるタイプでは、温熱療法ストレッチが効果的です。
温めることで血管が拡張し、滞った血流が改善されます。加えて、軽いストレッチを行うと筋肉の緊張がやわらぎ、神経の圧迫も軽減されます。

また、痛みが強い場合は肩こりスポットと呼ばれる部位に局所注射を行うこともあります。麻酔剤やステロイド剤を併用し、神経の炎症を抑える方法です。

そして、日常生活でできる一番簡単な工夫が腕をぶら下げないこと
腕が常に重力で引っ張られていることが肩こりの根本原因の一つなので、机に肘をつくだけでも肩への負担が軽減されます。

筋力不足による肩こり

筋肉が支えきれないタイプの方には、筋力トレーニングリハビリが重要です。
肩甲骨周囲の筋肉(特に僧帽筋・菱形筋・肩甲挙筋など)を鍛えることで、肩関節を安定させることができます。軽いダンベル運動やチューブトレーニング、姿勢改善のエクササイズが有効です。

首の椎間板が関係する肩こり

首の変形が関与している場合には、保存的治療が基本です。
頸椎カラー(首を固定する装具)を一時的に装着したり、牽引治療を行って神経の圧迫を軽減します。また、椎間板の周囲に注射を行うこともありますが、これは専門施設で慎重に実施されます。
さらに、鎮痛剤や湿布などの内服・外用薬を併用し、長期的に症状を和らげていくことが多いです。

まとめ:肩こりは「一つの原因」ではない

まとめ:肩こりは「一つの原因」ではない

肩こりという症状は一見シンプルですが、その原因は実に多様です。
血流の問題、筋肉の支持力、首の構造的変化——。どれも同じ「こり」という感覚を生みますが、根本的な仕組みは異なります。

したがって、効果的な治療を行うためには「どのタイプの肩こりなのか」を見極めることが大切です。
温める・支える・鍛える——この3つの方向から自分に合った方法を見つけることで、長く続く肩こりとも上手に付き合っていけるでしょう。