【書籍解説】筋について「そもそも人体運動器」

私たちの体は、どんなに小さな動きも、どんなに微細な感覚も
「神経」という情報のネットワークによってコントロールされています。
今回は、この神経の仕組みを少し掘り下げて、

「なぜ考えることや感じることができるのか」
「どうやって体が動くのか」


をわかりやすくお話ししていきます。

■ 神経とは「情報を伝える道」

■ 神経とは「情報を伝える道」

脳から全身へ、そして全身から脳へ──。
神経は、まるで電線のように体のすみずみまで張り巡らされています。
脳からつながる太いケーブルが「脊髄神経」、
そこから枝分かれして腕や脚に伸びていくのが

「末梢神経(まっしょうしんけい)」

です。

これらの神経を細かく見ると、実は
「束」になっていることがわかります。

たとえるなら、そうめんを何本もまとめて、
さらに外側をラップのような膜で包んだような構造です。
外側から順に

「神経外膜」
「神経周膜」
「神経内膜」

という層があり、それぞれが中の
繊細な神経線維を保護しています。

■ 神経細胞(ニューロン)の役割

神経は、細胞の集まりです。その中で最も重要なのが

「神経細胞(ニューロン)」

と呼ばれる細胞です。
ニューロンは、情報を受け取る「樹状突起」と、
情報を送り出す

「軸索(じくさく)」

という部分を持っています。

樹状突起は、他の細胞から伝わってくる刺激を
キャッチするアンテナのような役割。

一方で軸索は、受け取った情報を
次の細胞に送るための長いケーブルのようなものです。

この情報伝達は、まるで“伝言ゲーム”のように
連続して行われています。

ひとつの細胞が感じたことや命令を、
隣の細胞へと素早くバトンタッチしていくのです。

■ 情報を素早く伝える「ミエリン鞘(しょう)」

人間の体は、熱いものに触れた瞬間に

「アツッ!」

と感じて手を引っ込めますよね。
この一瞬の反応ができるのは、神経が電気信号を
とても速く伝えられる仕組みを持っているからです。

軸索の外側には「ミエリン鞘」と呼ばれるカバーがあります。
これは電線の絶縁カバーのような役割を持ち、

電気信号(神経の伝達)を飛び飛びに伝えることで、
スピードを格段に上げています。

この「跳躍伝導」という仕組みによって、
脳から指先までの情報が一瞬で届くのです。

ミエリン鞘は、ただの膜ではなく、

実は

「シュワン細胞」

と呼ばれる細胞が軸索に巻きついてできた構造です。

このカバーがある神経を
「有髄神経(ゆうずいしんけい)」、ないものを「無髄神経」と呼びます。
電車にたとえると、有髄神経は特急、無髄神経は各駅停車のようなもの。
つまり情報の伝達速度が大きく違うのです。

■ 中枢神経と末梢神経のちがい

■ 中枢神経と末梢神経のちがい

神経は大きく分けて2種類あります。
ひとつは

「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」、

もうひとつは「末梢神経」です。

中枢神経は「脳」と「脊髄」。
体の司令塔のような役割を果たしています。

末梢神経は、その命令を全身に届けたり、
体の感覚を脳に送り返したりする通信ラインです。

さらに末梢神経は、「体性神経」と「自律神経」に分類されます。

  • 体性神経:意識して動かす筋肉(手を動かす・歩くなど)や、
    熱い冷たいを感じる感覚を担当。
    → 運動神経と知覚神経に分かれます。
  • 自律神経:自分の意思とは関係なく働く神経。
    → 心臓を動かしたり、呼吸を整えたり、胃腸を
    動かしたりといった「生命維持の自動運転」をしています。

自律神経はさらに「交感神経」と「副交感神経」に分かれます。
前者は緊張・興奮のスイッチ(戦うモード)、後者は
リラックスのスイッチ(休むモード)です。

このバランスが崩れると、自律神経失調症のような不調が起こることもあります。

■ 脊髄反射とは? 脳を介さない素早い反応

熱いフライパンに触れた瞬間、考えるより先に手を引っ込める――。
これは「脊髄反射(せきずいはんしゃ)」と呼ばれる現象です。

通常、感覚は「末梢 → 脊髄 → 脳 → 筋肉」という経路で
伝わりますが、脊髄反射は脳をスキップして「脊髄 → 筋肉」と直接つながります。
このおかげで、私たちは危険から瞬時に体を守ることができるのです。

最も有名な例が「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)」です。
病院で膝の下を軽く叩かれると、足がピョンと動くあの反応です。
これは、叩かれた刺激が脊髄を通じて筋肉を一瞬で縮ませる「防御反応」なんですね。

■ 神経のけがと回復

神経も体の一部なので、ケガをするとダメージを受けます。
たとえば、強い圧迫や切断によって神経が傷つくと、感覚が
鈍ったり、筋肉が動かしにくくなったりします。

神経の損傷には大きく3段階あります。

  1. ニューロプラクシア:軽度の障害。
    一時的に圧迫された状態で、数日〜数週間で自然に回復することが多いです。
  2. アクソノトメーシス:中程度の損傷。
    神経の軸索(情報を送る部分)までダメージを
    受けており、部分的な回復に時間がかかります。
  3. ニューロトメーシス:重度の損傷。
    神経が完全に切れてしまい、自然回復は難しく手術などの対応が必要です。

この分類は、英国の神経学者サンダーランド氏やセドン氏によって提唱されました。
彼らは神経損傷の回復予測をより正確に行うため、損傷の程度を科学的に体系化したのです。

■ 神経の奥深さを知ることの意味

■ 神経の奥深さを知ることの意味

神経は、私たちの意識・感覚・動作すべてを支える生命の基盤です。
一見当たり前のように動いている手や足も、何億という神経細胞が連携して働いているおかげです。

「体の動きがスムーズであること」
「痛みや温度を感じられること」
「ストレスを感じることさえも」

――それらは、神経の働きが正常に機能している証拠なのです。

もし疲れやストレスで神経のバランスが崩れれば、体も心も不調になります。
だからこそ、休息を取ること、リラックスすること、体を温めることは、
神経のケアにもつながっているのです。

まとめ

  • 神経は、脳と体をつなぐ情報ネットワーク。
  • ミエリン鞘によって信号が高速で伝わる。
  • 中枢神経と末梢神経、自律神経などが連携して生命を支える。
  • 脊髄反射は脳を介さない防御反応。
  • 神経の損傷にも段階があり、回復力に差がある。

神経の仕組みを理解すると、日常の

「当たり前の動き」

がどれほど精密なしくみの上に成り立っているかがわかります。
私たちの体は本当に緻密で、よくできた“生きたシステム”なのです。