私たちの体は、どんなに小さな動きも、どんなに微細な感覚も
「神経」という情報のネットワークによってコントロールされています。
今回は、この神経の仕組みを少し掘り下げて、
「なぜ考えることや感じることができるのか」
「どうやって体が動くのか」
をわかりやすくお話ししていきます。

脳から全身へ、そして全身から脳へ──。
神経は、まるで電線のように体のすみずみまで張り巡らされています。
脳からつながる太いケーブルが「脊髄神経」、
そこから枝分かれして腕や脚に伸びていくのが
「末梢神経(まっしょうしんけい)」
です。
これらの神経を細かく見ると、実は
「束」になっていることがわかります。
たとえるなら、そうめんを何本もまとめて、
さらに外側をラップのような膜で包んだような構造です。
外側から順に
「神経外膜」
「神経周膜」
「神経内膜」
という層があり、それぞれが中の
繊細な神経線維を保護しています。
神経は、細胞の集まりです。その中で最も重要なのが
「神経細胞(ニューロン)」
と呼ばれる細胞です。
ニューロンは、情報を受け取る「樹状突起」と、
情報を送り出す
「軸索(じくさく)」
という部分を持っています。
樹状突起は、他の細胞から伝わってくる刺激を
キャッチするアンテナのような役割。
一方で軸索は、受け取った情報を
次の細胞に送るための長いケーブルのようなものです。
この情報伝達は、まるで“伝言ゲーム”のように
連続して行われています。
ひとつの細胞が感じたことや命令を、
隣の細胞へと素早くバトンタッチしていくのです。
人間の体は、熱いものに触れた瞬間に
「アツッ!」
と感じて手を引っ込めますよね。
この一瞬の反応ができるのは、神経が電気信号を
とても速く伝えられる仕組みを持っているからです。
軸索の外側には「ミエリン鞘」と呼ばれるカバーがあります。
これは電線の絶縁カバーのような役割を持ち、
電気信号(神経の伝達)を飛び飛びに伝えることで、
スピードを格段に上げています。
この「跳躍伝導」という仕組みによって、
脳から指先までの情報が一瞬で届くのです。
ミエリン鞘は、ただの膜ではなく、
実は
「シュワン細胞」
と呼ばれる細胞が軸索に巻きついてできた構造です。
このカバーがある神経を
「有髄神経(ゆうずいしんけい)」、ないものを「無髄神経」と呼びます。
電車にたとえると、有髄神経は特急、無髄神経は各駅停車のようなもの。
つまり情報の伝達速度が大きく違うのです。

神経は大きく分けて2種類あります。
ひとつは
「中枢神経(ちゅうすうしんけい)」、
もうひとつは「末梢神経」です。
中枢神経は「脳」と「脊髄」。
体の司令塔のような役割を果たしています。
末梢神経は、その命令を全身に届けたり、
体の感覚を脳に送り返したりする通信ラインです。
さらに末梢神経は、「体性神経」と「自律神経」に分類されます。
自律神経はさらに「交感神経」と「副交感神経」に分かれます。
前者は緊張・興奮のスイッチ(戦うモード)、後者は
リラックスのスイッチ(休むモード)です。
このバランスが崩れると、自律神経失調症のような不調が起こることもあります。
熱いフライパンに触れた瞬間、考えるより先に手を引っ込める――。
これは「脊髄反射(せきずいはんしゃ)」と呼ばれる現象です。
通常、感覚は「末梢 → 脊髄 → 脳 → 筋肉」という経路で
伝わりますが、脊髄反射は脳をスキップして「脊髄 → 筋肉」と直接つながります。
このおかげで、私たちは危険から瞬時に体を守ることができるのです。
最も有名な例が「膝蓋腱反射(しつがいけんはんしゃ)」です。
病院で膝の下を軽く叩かれると、足がピョンと動くあの反応です。
これは、叩かれた刺激が脊髄を通じて筋肉を一瞬で縮ませる「防御反応」なんですね。
神経も体の一部なので、ケガをするとダメージを受けます。
たとえば、強い圧迫や切断によって神経が傷つくと、感覚が
鈍ったり、筋肉が動かしにくくなったりします。
神経の損傷には大きく3段階あります。
この分類は、英国の神経学者サンダーランド氏やセドン氏によって提唱されました。
彼らは神経損傷の回復予測をより正確に行うため、損傷の程度を科学的に体系化したのです。

神経は、私たちの意識・感覚・動作すべてを支える生命の基盤です。
一見当たり前のように動いている手や足も、何億という神経細胞が連携して働いているおかげです。
「体の動きがスムーズであること」
「痛みや温度を感じられること」
「ストレスを感じることさえも」
――それらは、神経の働きが正常に機能している証拠なのです。
もし疲れやストレスで神経のバランスが崩れれば、体も心も不調になります。
だからこそ、休息を取ること、リラックスすること、体を温めることは、
神経のケアにもつながっているのです。
神経の仕組みを理解すると、日常の
「当たり前の動き」
がどれほど精密なしくみの上に成り立っているかがわかります。
私たちの体は本当に緻密で、よくできた“生きたシステム”なのです。