血液たった一滴で「がん」がわかる?リキッドバイオプシーによる癌診断の進歩と限界

血液一滴でがんがわかる?―夢の検査は本当に可能なのか

最近、「血液一滴でがんがわかる」という話を耳にしたことはありませんか?
私たちがもし血液だけでがんの有無や、どの臓器にがんがあるのかを知ることができたら、とても便利ですし、体への負担も少なくなります。
今回は、現状でそのような検査が可能なのか、あるいは将来的に実現する可能性はあるのか、最新の研究を交えながらわかりやすく解説していきます。

現在のがん検査の方法

現在のがん検査の方法

今、がんの有無を調べる方法は、主に内視鏡やレントゲン、CTやMRIなどの画像検査です。
これらは確実に診断するために必要ですが、体に多少の負担がかかりますし、痛みを伴う場合もあります。
そこで注目されているのが、血液や尿など体液を使ってがんの情報を得る「リキッドバイオプシー」です。
リキッドバイオプシーは、簡単に体に負担なく検査できる点が大きな魅力で、世界中で活発に研究が進められています。

リキッドバイオプシーで注目されている4つの情報

リキッドバイオプシーで注目されている4つの情報

では、血液の中の何を調べることでがんの情報を得られるのでしょうか?
現在、特に注目されているのは次の4つです。

  1. 血液中を漂うがん由来のDNA(ctDNA)
  2. 細胞から出る小さな袋状の物質(細胞外小胞・エクソソーム)
  3. 血液中に流れるがん細胞そのもの(循環腫瘍細胞・CTC)
  4. 細胞が出す小さなRNA(マイクロRNA)

順番に見ていきましょう。

1. 血液中のがんDNA(ctDNA)

がん細胞は、成長や死滅の過程で自分のDNAを血液中に放出することがあります。
この血液中のがん由来のDNAを調べるのが「ctDNA」です。
量は非常に少ないですが、最新の技術により少量の血液から検出できるようになってきました。

たとえば、日本の研究では、大腸がんの手術を受けた患者さん1,000人以上を対象に、手術後4週間の血液を調べたところ、ctDNAが残っていた人は再発のリスクが約10倍も高かったという結果が報告されています。
また、海外の研究では、肺がんの手術前にctDNAが検出されなかった患者さんの方が、検出された患者さんより長生きできる傾向がありました。

ただし、がんの早期発見にはあまり向いていません
初期の小さながんでは、血液中に放出されるDNAが少なすぎるため、見つけにくいのです。

2. 細胞外小胞(エクソソーム)

細胞は情報をやり取りするために、小さな袋のような物質を分泌します。これが細胞外小胞で、特に「エクソソーム」と呼ばれるものが注目されています。
血液中にはこのエクソソームが漂っており、中にはタンパク質やRNAといった細胞の情報が含まれています。
この情報を解析することで、がんの有無や種類を判断できる可能性があります

たとえば東京工業大学では、血液中のエクソソームを使ったがん診断の研究が進められており、将来的には簡単な血液検査でがんを調べられる日が来るかもしれません。

3. 循環しているがん細胞(CTC)

がん細胞は成長する過程で血管に入り、体の中を巡ることがあります。
血液中に流れるがん細胞を捕まえて調べる方法が、循環腫瘍細胞(CTC)の検査です。
血液中にがん細胞があるということは、体のどこかにがんが存在するサインになります。

一部のクリニックでは、CTCを用いた検査が自費で受けられますが、すべてのがんが見つかるわけではなく、対象は特定の種類のがんに限られます
つまり、現時点では万能な検査とは言えません。

4. 小さなRNA(マイクロRNA)

細胞は、情報伝達のために「マイクロRNA」と呼ばれる小さなRNAを作り出します。
がん細胞は正常な細胞と違うパターンのマイクロRNAを出すため、血液中のマイクロRNAを分析することで、がんの有無や種類を高精度で判定できる可能性があります。

日本の研究チームは、血液中のマイクロRNAを使い、13種類のがんを区別できる方法を開発しました。
とくに早期の段階でも高い精度で判別できるため、将来的にはがん検診の新しい方法として期待されています。
ただし、費用が高いため、すぐに全国の検診で使われる可能性は低いかもしれません。

現状と将来の展望

現状と将来の展望

現時点では、「血液一滴ですべてのがんを見つけられる」夢のような検査はありません。
一部のマーカーを使った検査はクリニックで受けられますが、十分な臨床データが揃っているわけではなく、まだ確立された方法とは言えません。

それでも、研究は急速に進んでいます。
数年先には、血液一滴でがんの有無や種類を調べられる時代がやってくるかもしれません。
痛みや負担の少ない検査で、早期発見や再発予防ができるようになれば、多くの人の命を守る大きな助けとなるでしょう。

血液一滴でがんがわかる未来は、まだ完全ではありませんが、確実に近づいています。
私たちの健康管理に新しい可能性をもたらす、このリキッドバイオプシーの研究から、今後も目が離せません。