ビタミンDで再発、死亡率が減るのはどんながん?

~身近な栄養素に秘められた“がん予防”のチカラ~

がんの治療を終えたあと、多くの人が抱く不安――それは「再発したらどうしよう」という思いですよね。
そんな中、「サプリメントで再発を防げるなら…」と考えたことがある方もいるのではないでしょうか。

ビタミンCやビタミンE、アスタキサンチンなど、健康に良さそうな成分はたくさんありますが、「本当にがんに効くの?」と聞かれると、実ははっきりとした答えが出ていないのが現実です。
これまでの研究では、がんを直接小さくしたり、寿命を延ばしたりする効果が“確実に”証明されたサプリメントは、ほとんどありませんでした。

そんな中、近年の研究で“ちょっと気になる結果”が報告されました。
それが、ビタミンDのサプリメントです。

■ 日本で見つかった「ビタミンDの意外な可能性」

■ 日本で見つかった「ビタミンDの意外な可能性」

ビタミンDといえば、骨を丈夫にする栄養素として有名ですよね。
でも最近では、免疫やがん予防との関係でも注目されています。

最初に話題になったのは、日本で行われた肺がん患者の研究でした。
手術を終えた患者さんに1年間、ビタミンDのサプリメントを飲んでもらい、プラセボ(偽薬)を飲むグループと比べたところ――

血液中のビタミンDが少なかった人では、生存期間が長くなる傾向が見られたのです。
「もしかして、ビタミンDががんの再発を抑えるのでは?」と注目され始めたのは、ここからでした。

■ 消化管がんを対象にした「アマテラス試験」

次に行われたのが、東京慈恵会医科大学の研究チームによる「アマテラス試験」という臨床研究です。
この試験では、食道・胃・大腸といった“消化管がん”の患者さん417人を対象に、手術後の再発を防げるかどうかを調べました。

患者さんを2つのグループに分け、

  • ビタミンD(1日2000IU)を摂取するグループ
  • プラセボ(偽薬)を摂取するグループ
    にランダムに分けて、5年間にわたり再発や死亡を追跡しました。

その結果が2019年に報告されたのですが……
「全体では差がなかった」というのが当時の結論。
つまり、ビタミンDを飲んでも、飲まなくても、再発や死亡率はほぼ同じだったのです。

■ ところが“詳しく調べてみたら”変わった!

その後、研究チームはこのデータをさらに詳しく分析しました。
すると――ある特徴を持つ患者さんだけに、ビタミンDの効果が現れていたことが分かったのです。

ポイントとなったのは、TP53という遺伝子。
このTP53は「がん抑制遺伝子」と呼ばれていて、DNAに傷がついた細胞を修復したり、異常な細胞を排除したりする“ゲノムの守護神”のような存在です。
しかし、この遺伝子に変異が起きると、その働きがうまくいかず、がんの進行が早くなることがあります。

研究では、患者さんの血液を使って「P53タンパク質が異常に増えていないか」を調べました。
その結果、約3分の1(36%)の患者さんで陽性反応が出たのです。

■ P53陽性の患者では、再発リスクが“70%減”!

■ P53陽性の患者では、再発リスクが“70%減”!

このうち、腫瘍組織でもP53が強く陽性を示した80人の患者さんに注目したところ、驚くべき結果が出ました。

なんと、ビタミンDを摂取していたグループは、プラセボ群に比べて再発・死亡リスクが約70%も低かったのです。
数字だけ見ても、かなりの差ですよね。

つまり――
ビタミンDのサプリメントは、特定のタイプのがん(P53陽性の消化管がん)に限って、再発を防ぐ効果がある可能性があるということです。

一方で、P53が陰性(異常のないタイプ)の患者さんでは、ビタミンDを飲んでも再発率に違いは見られませんでした。

■ どうしてそんな違いが出たの?

「なぜP53陽性のがんだけ効果があったの?」
実はその理由は、まだ完全には分かっていません。

ただ、P53陽性の患者さんでは、体の中で“異常なP53タンパク”が免疫細胞にとっての“目印”になっていると考えられます。
つまり、免疫システムが「これは敵だ!」と認識して、がん細胞を攻撃している可能性があるのです。

そして、ビタミンDには免疫を整える働きがあることが知られています。
そのため、ビタミンDを摂ることで免疫細胞が活性化し、がんに対する攻撃力が高まった――そんな仕組みが考えられています。

■ これからは「オーダーメイドのサプリ治療」へ?

この研究が面白いのは、「すべての人に効く」わけではない、という点です。
同じがんでも、遺伝子の状態によってサプリの効果が変わる――つまり、“あなたの体に合った治療”が必要になるということです。

今後は、手術後にP53の状態を調べて、「陽性ならビタミンDを積極的に摂取する」というようなオーダーメイド型のサプリ治療が実現するかもしれません。

とはいえ、この研究は“追加解析(サブ解析)”という後から行ったデータ分析です。
条件を絞って見た結果なので、すぐに「ビタミンDを飲めばがんが再発しない!」と断言できるわけではありません。
今後は、より多くの患者さんを対象にした研究で、効果を確かめていく必要があります。

■ まとめ ~身近なビタミンに潜む希望~

■ まとめ ~身近なビタミンに潜む希望~

・ビタミンDは、骨だけでなく免疫やがんにも関わる栄養素
・特に「P53陽性」の消化管がん患者では、再発・死亡リスクが約70%低下
・効果の仕組みは、免疫の活性化が関係している可能性あり
・今後は、遺伝子情報に基づいた“個別サプリ治療”の時代へ