【最新研究】コレステロール下げる薬で「がん」が・・・スタチンと肝臓がんについての最新情報

生活習慣病の治療薬として広く知られる「スタチン」。高コレステロール血症や脂質異常症の治療に用いられる薬ですが、最近の研究で、スタチンが「がん」、特に肝臓がんの発症を抑える可能性があることが報告されました。
「コレステロールを下げる薬が、なぜがん予防に?」――一見すると不思議な関係のように思えますが、近年の大規模な研究データがこの“意外な効果”を裏づけています。

一般薬に隠された「思わぬ効果」

一般薬に隠された「思わぬ効果」

実は、病気治療のために開発された薬の中には、本来の目的以外にも有用な効果を持つものが少なくありません。
たとえば、痛み止めとして知られるアスピリンは、心筋梗塞や脳梗塞の予防に有効であることがわかっています。また、糖尿病の薬「メトホルミン」も、がんの発症リスクを下げる可能性が報告され、注目を集めています。

そして今回話題となっているのが、コレステロールを下げる薬「スタチン」です。スタチンは世界中で最も多く使用されている薬の一つであり、日本でも「クレストール」「リバロ」「リピトール」「ローコール」などの名前で広く処方されています。
血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を低下させ、動脈硬化や心血管疾患を防ぐことが目的の薬ですが、近年、その“副次的な効果”としてがんリスクの低下が注目されているのです。

178万人を対象にしたイギリスの大規模調査

2023年6月、イギリスの国民健康データベース「UKバイオバンク」を用いた研究が発表されました。対象となったのは、登録者約178万人という非常に大規模な集団です。
研究チームは、この中でスタチンを服用している人と、服用していない人の間で肝臓病や肝臓がんの発症率、死亡率を比較しました。

その結果、スタチンを服用していた人は、服用していなかった人に比べて

  • 肝細胞がんの発症リスクが42%低下
  • 肝臓病関連の死亡リスクが28%低下
    という顕著な差が見られました。
    さらに、別のデータベース「TriNetX」を用いた150万人以上の解析では、肝細胞がんの発症リスクが74%も低下していたと報告されています。

このように、複数の大規模研究で一貫して「スタチンを飲んでいる人は肝臓がんのリスクが大幅に低い」という結果が確認されており、研究者たちはこの現象に強い関心を寄せています。

背景:増え続ける「脂肪肝がん」

かつて、肝臓がんの主な原因はB型・C型肝炎ウイルスの感染でした。しかし、ウイルス性肝炎の治療が進んだ現在では、「NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)」からの肝臓がん発症が増えています。
NASHとは、アルコールをあまり飲まない人でも、脂肪の蓄積や炎症が進んで肝臓が傷つく病気です。放置すれば肝硬変、そして肝がんへと進行する危険があります。

日本では、肝臓がんは死亡原因の第5位。5年生存率は30〜40%と依然として低く、治療が難しいがんの一つとされています。
そのため、「薬による予防」が可能になることは、医療界にとっても極めて大きな意味を持ちます。

なぜスタチンでがんが減るのか?コレステロール低下だけではない“抗がん作用”

なぜスタチンでがんが減るのか?コレステロール低下だけではない“抗がん作用”

では、なぜコレステロールを下げる薬が、がんの発症を抑えるのでしょうか。
そのメカニズムは一つではなく、いくつかの生物学的な作用が複合的に関係していると考えられています。

研究によると、スタチンには次のような抗がん作用があることが分かっています。

  • がん細胞の増殖を抑える
  • がん細胞の浸潤・転移を防ぐ
  • がん細胞をアポトーシス(自然死)に導く
  • 抗がん剤の治療効果を高める
  • がん組織周囲の免疫環境を整える

これらはすべて、スタチンが細胞内の「メバロン酸経路」という代謝経路に作用することによって起こると考えられています。この経路は、がん細胞の生存や増殖にも関わる重要な仕組みであり、その一部をスタチンが抑えることで、がん細胞の“燃料供給”を断つような効果が期待できるのです。

肝臓がんだけでなく、他のがんにも効果?

興味深いことに、スタチンの効果は肝臓がんに限りません。
世界中の臨床データでは、乳がん、胃がん、大腸がん、すい臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がんなど、さまざまながんで、スタチンを服用している患者の生存率が上昇しているという報告があります。

ある研究では、スタチン服用者のがん死亡リスクが最大で50%低下していたという結果も。
こうしたデータを受け、現在では「スタチン+抗がん剤」や「スタチン+免疫チェックポイント阻害薬」といった併用療法の研究も進められています。

生活実践的アドバイス:肝臓を守る日々の工夫

今回の研究は薬の効果に焦点を当てたものですが、肝臓を守るには日常生活も欠かせません。
スタチンを服用していない人でも、以下のような習慣が肝臓の健康維持につながります。

  • 内臓脂肪を減らす食事管理:糖質や脂質を控え、野菜や魚中心の食生活に。
  • 適度な運動:週に3〜4回、30分程度の有酸素運動を習慣化する。
  • アルコールの摂取制限:飲酒はほどほどにし、肝臓を休ませる日をつくる。
  • 定期的な健康診断:血液検査で肝機能や脂質の値を確認し、早期発見に努める。

こうした基本的な生活習慣の積み重ねが、スタチンの効果をより引き出す可能性もあります。

今後の展望:肝臓がん予防への新たな一手となるか

今後の展望:肝臓がん予防への新たな一手となるか

スタチンが肝臓がんの発症を抑えるという発見は、まだ研究段階ではあるものの、臨床応用の可能性を大きく広げるものです。
特に、脂肪肝やNASHに悩む人が増える中、スタチンの服用が「肝臓がんへの進行を防ぐ」一助となる可能性が期待されています。

もちろん、スタチンは医師の管理下で使用すべき薬であり、「がん予防のために自己判断で飲む」ことは勧められません。しかし、今後、スタチンの新たな使い道として「がん予防薬」という選択肢が現実味を帯びてくるかもしれません。

まとめ:コレステロール薬ががん医療を変える日

今回紹介した最新研究は、スタチンが単なるコレステロール降下薬ではなく、がんを含めた全身の健康を守る“多機能薬”であることを示唆しています。
脂質異常症の治療薬が、がん予防にもつながる――そんな未来が少しずつ見え始めています。

今後の臨床試験の結果によっては、「スタチン」が肝臓がんの発症を防ぐ新しい選択肢として注目される日も近いかもしれません。