【踵はどこ?】人間と馬の骨格を解説

【踵はどこ?】人間と馬の骨格を現役医師が解説

踵(かかと)はどこ?―人間と動物の足の構造を比べてみよう

私たち人間にとって「踵(かかと)」という言葉は、とても身近なものです。靴を履くときに感じる足の後ろの出っ張り、立つときに体重を支える硬い部分、そこが踵だと誰もが理解しています。
しかし、同じ哺乳類である動物たち――特に馬や犬、鳥など――の「踵」は、私たちが想像する場所とはまったく違う位置にあることをご存じでしょうか?
今回は、人間と動物の足の構造を比較しながら、「踵はどこにあるのか?」という疑問を丁寧に解き明かしていきます。

1⃣ 人間の踵の位置と役割

1⃣ 人間の踵の位置と役割

まず、人間の足から見ていきましょう。
人間の踵は、足首の関節(距腿関節:きょたいかんせつ)のすぐ下にある**踵骨(しょうこつ)**という骨によって形成されています。
この踵骨は、足の中でもっとも大きな骨の一つであり、体重を地面に伝える重要な役割を果たしています。
足首は前方に曲がる構造を持ち、歩行の際には踵から着地してつま先へと体重を移動させる「ローリング運動」が可能です。
つまり、人間の足首の裏側にある出っ張りが「踵」なのです。

2⃣ 馬の「踵」はどこにある?

2⃣ 馬の「踵」はどこにある?

では、馬の足を見てみましょう。
馬の脚を観察すると、下の方が逆向きに曲がっているように見えます。人間の足首とはまるで反対の方向に関節が曲がっているようで、少し不思議に感じるかもしれません。
さらにその一つ上の関節を見てみると、今度は前の方に曲がっているようにも見えます。見慣れた人間の脚の構造と比べると、まるで関節の曲がる方向が逆転しているように感じるのです。

多くの人は、馬の脚の中ほどにある折れ曲がりを「膝」と思いがちですが、実はそれは人間でいう「踵」にあたる部分です。
つまり、馬の「踵」は脚の中ほどにあり、地面からはかなり離れた位置にあるのです。
では、地面に触れている一番下の部分――蹄(ひづめ)は何なのかというと、これは実は**人間でいう「指先」**にあたります。

3⃣ 骨格で見る「足の対応関係」

この不思議な違いを理解するには、骨の構造を比較してみるのが分かりやすいでしょう。

人間の足には、

  • 踵骨(かかとの骨)
  • 中足骨(足の甲の部分の骨)
  • 趾骨(指の骨:基節骨・中節骨・末節骨)
    という順番で骨が並んでいます。

馬の場合、この構造は大きく変形しています。
蹄の中には人間の指にあたる骨――つまり「趾骨(しこつ)」が入っています。
その上の長く伸びた太い骨(「中手骨」または「中足骨」)が、人間でいうと足の甲から指の根元にかけての部分に相当します。
そしてその上、少し出っ張って後ろに伸びた関節部こそが「踵」に当たるのです。
つまり、馬の踵は「地面に接していない」位置にあり、脚の中ほどの関節の裏側に隠れているということになります。

4⃣ 犬や鳥の「踵」を見てみよう

4⃣ 犬や鳥の「踵」を見てみよう

馬だけでなく、犬や鳥でも同じような構造の違いが見られます。

犬の場合、後ろ脚の中ほどに少し飛び出して見える部分があります。ここが**踵(かかと)**にあたるのです。
地面に触れている部分――つまり犬の肉球のうち、いちばん後ろの丸いパッド――それが踵だと思われがちですが、実際にはもっと上にある関節が踵の位置になります。
犬が立っている姿をよく見ると、実は常に「つま先立ち」をしている状態であることがわかります。

では鳥の場合はどうでしょうか。
鳥の足はさらに独特で、「どこが膝でどこが踵なのか」が非常に分かりにくい構造をしています。
見えている「曲がっている部分」を膝だと思っている人も多いですが、実際にはそれは踵の関節にあたります。
鳥の本当の膝関節は体の中に隠れており、羽毛の下に隠れて見えないのです。
つまり、鳥もまた「つま先立ち」で生活している動物だといえます。

5⃣ 骨格の数は同じ、形と向きが違うだけ

ここまで見ると、動物によって足の形や関節の位置が大きく違うように思えるかもしれません。
しかし実は、人間も動物も骨の数や並びの順序はほとんど同じなのです。
違うのは、骨の形と角度、そしてどの部分を地面に着けているか――この3点だけです。

人間は、踵を地面につけて立ち、足全体で体重を支える「かかと歩行」の生き物です。
一方で、犬や猫、馬、鳥などは「つま先歩行」をしています。
進化の過程で、速く走る、跳ねる、高く飛ぶといった機能を優先させるために、足の形が変わり、踵の位置も高い場所へと移動したのです。

6⃣ 進化がもたらした足の多様性

人間が直立二足歩行をするようになったのに対して、動物たちは四足歩行や跳躍、飛翔といった動作を行うために、それぞれの環境に適した足の形を進化させてきました。
馬の長くしなやかな脚は、広い草原を速く走るために特化した構造です。踵を高い位置に持ち上げることで、バネのような脚の動きを実現し、少ないエネルギーで長距離を走ることができます。
犬や猫も同様に、つま先で立つことで軽やかな動きを可能にしています。
一方で、人間は安定性を優先したために、踵を地面につけて体をまっすぐ支えるようになりました。
この違いが、私たちの歩行と動物たちの走行との決定的な差を生んでいるのです。

7⃣ まとめ:踵の位置で見える「進化の足跡」

7⃣ まとめ:踵の位置で見える「進化の足跡」

「踵はどこにあるのか?」という単純な疑問をきっかけに、私たちは人間と動物の体の構造の違い、さらには進化の歴史にまで目を向けることができます。
人間も動物も、同じように骨が並んでいるのに、姿形や動き方がまったく違う――それは、環境と生き方に合わせて骨の形や角度が少しずつ変化していった結果なのです。

つまり、馬の脚の中ほどに見える関節の裏側が「踵」、
犬の後ろ足の出っ張りも「踵」、
そして人間の足の裏にある硬い部分も「踵」。
見た目は異なりますが、どれも同じ位置の骨――踵骨が担う部分なのです。

動物の足を観察するとき、ぜひ「この子の踵はどこだろう?」と考えてみてください。
きっと、その動物がどのように進化し、どんな環境で生きてきたのか――その足の形が雄弁に語ってくれるはずです。