9分でわかる!ASD(自閉スペクトラム症)の特性と苦手なこと

 近年、発達障害への理解が少しずつ進んでいますが、依然として職場や社会において、ASD(自閉スペクトラム症)をはじめとする発達障害への理解が不足している場面が多く見られます。ASDの方は、日常生活や職場でその特性ゆえに困難を感じることがありますが、その一方で特性を理解し適切に対応することで、本人の強みを活かした環境を作り、生産性を向上させることが可能です。

 この記事では、ASDの3つの代表的な特性とそれに関連する苦手なこと、さらに職場や社会における対応策について解説します。


ASDとは?

 ASD(自閉スペクトラム症)は、発達障害の一つで、社会的なコミュニケーションや行動の特性に特徴があります。特性は人によって異なりますが、一般的には以下のような特徴が挙げられます。

  1. 社会的なマナーや暗黙のルールがわからない
  2. 言葉の裏を読むのが苦手
  3. 変化を嫌い、強いこだわりを持つ

 日本では、ASDの方は約100人に3人の割合で存在すると推測されています(諸説あり)。こうした特性は、本人が社会生活を送る上で苦労を感じる一方で、正しい理解と配慮があれば、その強みを活かした活躍が可能です。


ASDの3つの主な特性と苦手なこと

1.社会のマナーや暗黙のルールが分からない

 ASDの方は、社会的なマナーや「暗黙のルール」を理解するのが苦手です。たとえば、普通なら相手の気持ちを考えて控える発言を、率直にしてしまうことがあります。

<具体例>
 例えば、初対面の人が派手な服を着ていた場合、多くの人は「似合っていない」と思っても口には出しません。しかし、ASDの方は「その服、似合っていないですね」や「どうしてそんな服を着ているんですか?」と正直に言ってしまうことがあります。このような発言は、本人に悪意があるわけではなく、自分が感じたことをそのまま言葉にしてしまうためです。

 また、対人関係以外でも暗黙のルールを認識しにくい場面があります。たとえば、結婚式にジーパンを履いて出席したり、静かな電車の中でも大声で話したりするなど、周囲から「非常識だ」と見られる行動を取ってしまうこともあります。こうした特性は、周囲とのトラブルや誤解につながることがあります。

<職場での影響>
 職場では、暗黙のルールや「空気を読む」ことが求められる場面が多くあります。例えば、会議中に「上司に失礼な発言をした」と誤解されることや、チーム内でのコミュニケーションの齟齬が生じることもあります。このような場面では、ルールや期待される行動を具体的に伝えることが重要です。


2.言葉の裏を読むのが苦手

 ASDの方は、言葉を文字通り受け取る傾向が強く、言葉の裏にある意図や感情を読み取るのが難しいことがあります。これにより、冗談や皮肉、社交辞令が通じにくく、コミュニケーションが円滑に進まない場合があります。

<具体例>
 真冬の日、家族が震えながら「お茶頂戴」と言った場合、多くの人は「温かいお茶」を出すでしょう。しかし、ASDの方は「お茶」という言葉をそのまま受け取り、冷たいお茶を出してしまう可能性があります。

 また、たとえ相手が冷たい口調で「あっそう、頑張ってね」と言った場合でも、それを純粋な応援の言葉として受け取ることがあります。このように、表情や口調、言葉の背景にある意図を読み取ることが難しいため、相手の本意を誤解してしまうことがあります。

<職場での影響>
 仕事の場面では、「考えておく」という上司の曖昧な返事を「承認された」と捉えるなど、誤解が生じやすくなります。これにより、スケジュールや業務進行に支障をきたすこともあります。職場では、明確な指示やフィードバックを心がけることが大切です。


3.変化を嫌い、強いこだわりを持つ

 ASDの方は、予定や環境の変化に対して強い不安を感じる傾向があります。急な変更があると、それが業務に影響を与えるだけでなく、本人がパニックを起こすこともあります。

<具体例>
 例えば、電車の遅延によって通勤経路が変更された場合、強い不安を感じ、職場に行けなくなることがあります。また、自分の決めた手順やルールに強くこだわる傾向があるため、上司や同僚からの指示を柔軟に受け入れることが難しいこともあります。

<職場での影響>
 職場で急なスケジュール変更や、新しいプロセスの導入が行われると、ASDの方にとっては大きなストレスとなります。これにより、業務のパフォーマンスが低下することもあります。変化を伴う場合は、事前に説明を行い、本人が適応しやすいように配慮することが重要です。


ASDの強みを活かす働き方

 ASDの特性には、苦手なことだけでなく、強みもあります。ASDの方は、一つの物事に対して非常に高い集中力を発揮し、特定の分野において卓越した成果を上げることができます。また、こだわりの強さがプラスに働く場合もあります。たとえば、プログラミングや研究職など、ルールやプロセスが明確で、一つの課題に深く取り組むことが求められる職種には向いているとされています。
 逆に、接客業や営業職のように、多くの人とのコミュニケーションや複数のタスクを同時進行する仕事は苦手とされる場合があります。

 職場では、ASDの特性に合った役割を与え、その能力を最大限に活かせる環境を整えることが重要です。


職場や社会での対応策

ASDの方が社会で活躍するためには、周囲の理解と協力が不可欠です。以下のような対応が有効です:

  1. 明確なルールと指示を提供する
    曖昧な表現を避け、具体的かつ明確に伝えることで、誤解を減らします。
  2. 予定変更や環境の変化を事前に伝える
    急な変更を避け、事前に変更内容を共有することで、本人が適応しやすくなります。
  3. 特性に合わせた役割を与える
    強みを活かせる職場配置を行い、本人のパフォーマンスを引き出します。
  4. 職場全体での理解を促進する
    ASDに関する知識を職場で共有することで、誤解や偏見を減らします。

まとめ

ASD(自閉スペクトラム症)の主な特性は以下の通りです:

  1. 社会のマナーや暗黙のルールが分からない
  2. 言葉の裏を読むのが苦手
  3. 変化を嫌い、強いこだわりを持つ
    (以上の特性はASDの代表的な特性として認知されているものであり、ほかにも特性はあります。また、ASDだからといって、すべての特性があてはまるというわけではありません。)

 こうした特性が原因で、社会や職場で誤解や困難が生じることがありますが、周囲が適切に理解し、配慮を行うことで、本人の能力を活かし、働きやすい環境を整えることが可能です。

 ASDの方が自身の強みを活かして充実した生活を送れる社会を目指すためにも、まずは特性への理解を深めることから始めてみませんか?