がんの予防において、日常生活で意識すべきことのひとつが体型の維持です。「適正体重を保つことが大切」とよく言われますが、実際にはどのような体型ががんのリスクを高めるのか、あるいはがんによる死亡率を押し上げるのかについて、正確に理解している人は少ないかもしれません。今回は、日本人を対象とした過去の研究や最新の国際データを踏まえて、がんと体型の関係について詳しく解説します。

まず、日本人のがん予防の基本として推奨されているのは「適正体重の維持」です。しかし、単に体重やBMI(体格指数)だけを見ても、がんのリスクを正確に判断することはできません。過去の研究では、BMIとがんによる死亡率の関係は逆J字型、あるいはU字型を示すことがわかっています。これは、痩せすぎも肥満もがんによる死亡率を高めることを意味しています。つまり、極端な痩せ型や肥満型の体型は、どちらもがんリスクを無視できないということです。
特に肥満によって罹患リスクが増えると報告されているがんには、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がんなどがあります。膵臓がんは治療が難しいことで知られていますが、肥満が重要な危険因子のひとつであることも明らかになっています。例えば、BMIが30以上の場合、膵臓がんになるリスクは約30〜40%増加するという報告があります。
しかし、同じ「肥満」といっても、体型には大きな違いがあります。肥満は大きく分けると「皮下脂肪型」と「内臓脂肪型」に分類されます。皮下脂肪型はお腹の下などに脂肪がつくタイプで、見た目で確認しやすい特徴があります。一方、内臓脂肪型は内臓の周囲に脂肪が蓄積するタイプで、見た目からは分かりにくいのですが、より健康リスクが高いことがわかっています。
今年1月に報告された研究では、イギリスの大規模データベース「UKバイオバンク」を用いて、38万人以上の男女を対象に内臓脂肪の量とがん発症リスクとの関係を調べました。内臓脂肪の量は、腹囲、BMI、血液中の中性脂肪、HDLコレステロール(善玉コレステロール)などを用いて算出される「内臓脂肪インデックス」で評価されました。その結果、内臓脂肪インデックスが高い人では、内臓脂肪が少ない人に比べて、以下の6つのがんのリスクが明らかに上昇していました。
つまり、内臓脂肪が多い体型は、これらのがんになる危険性が高くなることを示しています。

さらに注意すべきは、肥満の中でも「サルコペニア肥満」という特殊な体型です。サルコペニア肥満とは、筋肉量が減少して筋力や身体機能が低下した「サルコペニア」の状態に加えて、BMIが25以上の肥満がある状態を指します。見た目では単なる肥満に見える場合もありますが、筋肉量が少ないため、健康リスクはさらに高まります。
サルコペニア肥満はCT画像などで筋肉量を測定することで診断が可能です。例えば、あるCT画像では、正常な体型の人は骨格筋が十分で皮下脂肪が少ないのに対し、サルコペニア肥満の人は骨格筋が減少し、内臓脂肪が極端に増えていることが確認されます。
サルコペニア肥満が危険なのは、がんになるリスクが高まるだけではありません。昨年6月に発表されたJAMA Network Openの研究では、6790人の固形がん患者を対象に、握力や体組成計で筋肉量と肥満の有無を評価し、サルコペニア肥満と生存率、生活の質、ICU入室率との関連を調べました。その結果、サルコペニア肥満の患者は全体の4.4%、肥満患者の約15%でしたが、この体型があると男女ともに死亡リスクが1.5倍以上に高くなることがわかりました。また、生活の質の低下やICUへの入室率も増加していました。つまり、サルコペニア肥満は、がんの発症リスクだけでなく、治療の成績や生活の質、さらには生存期間にも悪影響を及ぼすのです。

以上のことから、がん予防の観点で最も危険な体型は、「内臓脂肪型の肥満」であり、さらに「筋肉量が低下しているサルコペニア肥満」であると言えます。したがって、健康的な体型を維持するためには、単に体重を減らすだけでなく、筋肉量を維持することも非常に重要です。
具体的には、有酸素運動による脂肪燃焼と、筋トレによる筋肉維持・増強の両方を生活習慣に取り入れることが推奨されます。筋肉量を維持することで、内臓脂肪の蓄積を抑え、将来的ながんリスクの低減につながります。
健康な体型を意識することは、単に見た目の問題ではなく、将来のがんリスクを下げ、生活の質を守るためにも非常に重要です。適正体重の維持と筋肉量の確保を日々の生活に取り入れ、体型と健康を両立させましょう。