日本では、がんによる死亡原因の中でも
「胃がん」はいまだに上位を占めています。
特に、若い世代に見られる「スキルス胃がん」は、
早期発見が難しく予後が悪いことでも知られています。
その胃がんの最大の原因とされているのが、
**ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)**です。
近年では、ピロリ菌を除菌することで胃がんのリスクを
約50%減らすことができると報告されており、
検査や除菌治療を受ける人も増えています。
しかしながら、ピロリ菌と胃がんの関係については、
いくつかの「誤解」が広まっているのも事実です。
そこで今回は、
**「ピロリ菌と胃がんに関する3つの誤解」**
について、わかりやすく解説していきます。

まず最初に多くの人が抱きやすいのが、
「ピロリ菌の検査で陰性だった=胃がんにはならない」
という誤解です。
一見すると安心できそうな結果ですが、実はそう単純ではありません。
ピロリ菌の検査には、血液・尿・呼気などを用いる方法があります。
これらの検査で「陰性」と出た場合でも、
過去に感染していた可能性を否定できないのです。
例えば、過去にピロリ菌に感染していた人が、何らかの理由で
偶然除菌されていたというケースがあります。
風邪や尿路感染症の治療で抗生剤を服用したことがきっかけで、
結果的にピロリ菌が消えてしまうこともあります。
また、胃の粘膜が萎縮してしまった結果、
ピロリ菌が自然に消失した
というケースもあります。
しかし、この「自然消失」はむしろリスクが高い状態を意味します。
胃の粘膜が長年炎症を受け続け、萎縮してしまったために
菌が住めなくなっただけで、
すでに「胃がんの温床」となっている可能性があるのです。
そのため、ピロリ菌の検査が陰性であっても、
一度は胃カメラ(内視鏡)検査を受けて、
胃の状態を確認することが大切
です。
もしも「萎縮性胃炎」などの診断を受けた場合は、
胃がんのリスクが残っているため、
年に1回程度の定期的な内視鏡検査が推奨されます。
次に多いのが、
「ピロリ菌を除菌したからもう安心」
という思い込みです。
実際には、除菌後も胃がんのリスクが完全に
ゼロになるわけではありません。
ピロリ菌を除菌した時点で、すでに胃炎が進行していた場合、
粘膜のダメージは残っています。
このような状態では、たとえ除菌後でも
胃がんが発生する可能性があるのです。
除菌治療はあくまで
「これ以上悪化させない」
ための手段であり、
すでにできてしまったダメージを
完全に元に戻すものではありません。
したがって、除菌後も
年に1回程度の内視鏡検査を継続することが非常に重要
です。
また、除菌後には胃酸の分泌が元に戻るため、
逆流性食道炎などの症状が出る場合もあります。
これも除菌後の経過観察を怠らない理由の一つです。
3つ目の誤解は、「ピロリ菌を除菌すると食道がんが増える」というものです。
確かに、一部の報告では、除菌によって胃酸分泌が回復し、
逆流性食道炎が増える傾向があるとされています。
その結果、食道の「腺がん」というタイプのがんが
増える可能性があるのではないか、と指摘されることもあります。
しかし、現時点ではこれはあくまで仮説に過ぎません。
ピロリ菌の除菌と食道がんの発症との間に、明確な因果関係がある
という科学的証拠は得られていません。
たとえば、スウェーデンで行われた約8万人を
対象とした長期追跡研究では、
除菌を行っても食道腺がんの発症率は上昇しなかった
という結果が報告されています。
また、食道の腺がんは、胃がんと比較して
発症頻度が圧倒的に低いという事実もあります。
したがって、ピロリ菌を除菌することによって
胃がんのリスクを大幅に減らすメリットのほうが、
食道がんを心配するリスクよりもはるかに大きいと考えられています。
ここまでお伝えしたように、ピロリ菌と胃がんの
関係には多くの誤解がありますが、
大切なのは「検査と定期的な観察」を怠らないことです。
胃がんの予防のためには、次の3つを意識することが重要です。

ピロリ菌は、胃がんの最大の原因といわれています。
しかし、
「陰性だから安心」
「除菌したからもう大丈夫」
と思い込むのは危険です。
過去の感染歴や胃の状態によっては、除菌後もリスクが残ることがあります。
また、
「除菌で食道がんが増える」
という話も現時点では科学的根拠がありません。
胃がんのリスクを最小限にするためには、
定期的な胃カメラ検査とピロリ菌検査を
受け続けることが最も確実な予防策です。
早期発見・早期治療によって、胃がんは防ぐことができます。
「今は大丈夫」と思わず、健康な未来のために一度、
検査を受けてみてはいかがでしょうか。