今回は「食物繊維でリスクが減るがんトップ5」というお話です。
食物繊維というと、便通を整えるものというイメージが強いですが、それだけではありません。腸の中の環境を整え、体全体の健康を支える大切な栄養素でもあります。
しかし最近、特に若い世代を中心に食物繊維の摂取量が減ってきていることが問題になっています。便利な食生活の広がりで、手軽なパンや加工食品を食べることが増え、ごはんや野菜、豆などを食べる機会が減っているためです。
食物繊維には、肥満や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を予防する効果があることが知られています。そして最近では、「がん」にも関係していることが分かってきました。

これまでにも「食物繊維を多く摂る人は大腸がんになりにくい」といった研究結果はよく知られていました。腸内細菌のバランスが整うことで、大腸の健康を守ることがその理由のひとつです。
ところが最近の研究では、大腸だけでなく、全身のさまざまながんにも関係していることが明らかになってきました。
イギリスで行われた大規模な調査(UKバイオバンクという健康データベースを活用したもの)では、36万人以上を約9年間追跡し、食物繊維の摂取量と17種類のがんの発症リスクを調べました。
調査の結果、1日に9.6グラム未満しか食物繊維を摂っていない人に比べて、19グラム以上摂っている人では、がん全体の発症リスクが約10%低いことが分かりました。
特に効果が見られたのは、シリアル、果物、野菜などに含まれる食物繊維でした。つまり、自然の食品から摂ることがポイントということです。

では、具体的にどの種類のがんのリスクが下がるのでしょうか?
研究の結果、特に食物繊維の摂取と関係が深かったのは次の5つのがんでした。
第5位:腎臓がん
腎臓がんでは、食物繊維を多く摂っている人でリスクが25%低下していました。
第4位:膀胱がん
尿をためる臓器である膀胱のがんも、リスクが28%低下していました。
第3位:肺がん
肺がんでは、リスクが33%減少していました。特にたばこを吸っている人や、過去に吸っていた人でこの効果が見られたと報告されています。
第2位:食道がん
飲み物や食べ物の通り道である食道のがんでは、リスクが34%低下していました。
第1位:子宮頸がん
そして最もリスクが下がっていたのが子宮頸がんです。
食物繊維を最も多く摂っているグループでは、リスクがなんと67%も低下していました。
この結果から、食物繊維の力が腸の外にも及び、全身のがんのリスクを左右していることが見えてきます。
では、どうして食物繊維を摂るとがんのリスクが下がるのでしょうか?
まだすべてが分かっているわけではありませんが、主な理由としては「腸内環境の改善」と「免疫力の向上」が考えられています。
食物繊維を摂ると、腸の中で善玉菌が増えます。善玉菌は腸の粘膜を守り、炎症を抑えたり、有害物質を減らしたりする働きをします。その結果、免疫のバランスが整い、体の防御力が高まります。
実際、今回のトップ5に入っているがん――子宮頸がん、肺がん、尿路系(腎臓・膀胱)のがんなどは、免疫の働きが関係しやすいタイプのがんです。つまり、体の免疫が活発に働くことで、がんの芽を早い段階で抑えることができる可能性があるのです。
残念ながら、日本人の食物繊維の摂取量は年々減っています。
背景には、食生活の変化があります。かつての日本食では、玄米や雑穀、根菜、豆、海藻など、自然と食物繊維を多く摂ることができました。ところが、パンやパスタなど精製された穀物が中心になり、野菜の摂取量も減少傾向にあります。
このため、意識して食物繊維をとることがますます大切になっています。

厚生労働省が示す目標量では、1日の摂取量は男性で20グラム以上、女性で18グラム以上が理想とされています。
しかし、実際には日本人の平均摂取量はこの目標に届いていません。
食物繊維を多く含む食べ物には、以下のようなものがあります。
とくに野菜は、スープや味噌汁にするとかさが減り、たくさん食べやすくなります。
① さばと根菜のみそ汁
具だくさんの味噌汁は、食物繊維をたっぷり摂れる理想的な一品です。ごぼう、にんじん、大根などの根菜を入れると、腸にやさしく満足感も得られます。さばを加えることで、良質な脂質やたんぱく質も摂取できます。
② 野菜たっぷりスープカレー
たくさんの野菜をスープ仕立てにしたカレーです。カレー味にすることで食べやすく、いも類や豆、きのこ類を加えれば、自然に食物繊維の量を増やせます。
食物繊維は便通を整えるだけではなく、体の中の免疫の働きをサポートし、がんのリスクを下げる可能性がある栄養素です。
特に、腎臓がん・膀胱がん・肺がん・食道がん・子宮頸がんのリスク低下が報告されており、これは私たちの日常の食事を少し見直すことで実現できる予防効果でもあります。
毎日のごはんに野菜や豆、海藻を一品プラスすることから始めてみましょう。
小さな積み重ねが、将来の大きな健康につながります。