【意外?】皮下脂肪が多いと「がん」生存率が・・・身体組成とがんの予後についての研究を紹介

私たちの体は、筋肉や脂肪、骨、水分など、さまざまな成分でできています。最近では体重だけでなく、体脂肪率や筋肉量などを測定できる「体組成計」を使う人も増えました。こうした「体の中身のバランス」を示すものを「身体組成」といいます

では、この身体組成が「がん」とどんな関係があるのでしょうか?

これまでの研究で、がん患者さんの筋肉が少ないと、治療をしても思うように効果が得られず、結果として生存率が下がることがわかってきました。つまり、体力の土台となる筋肉は、がんと闘う上でとても重要だということです。

では、「脂肪」はどうでしょうか?
「太っていると健康に悪い」と思われがちですが、がんの場合は少し違うかもしれません。今回は、皮下脂肪(皮膚のすぐ下についている脂肪)とがんの生存率の関係について、最近の研究を紹介します。

胃がんと皮下脂肪の関係

胃がんと皮下脂肪の関係

2023年6月に海外の医学雑誌に発表された研究では、胃がんの患者さん158人を対象に、治療前のCT画像から「腰のあたりの皮下脂肪の量」を調べました。そして、皮下脂肪の多いグループと少ないグループに分けて、その後の生存率を比べました。

結果は意外なものでした。
皮下脂肪が多い人のほうが、明らかに生存率が高かったのです。
死亡のリスクは、脂肪が少ない人に比べておよそ6割も低かったという結果でした。

肺がんでも同じ傾向

続いて、2023年9月に発表された別の研究では、肺がんの患者さん750人を対象に同じような調査が行われました。こちらもCT画像を使って皮下脂肪と筋肉量を測定し、脂肪の多いグループと少ないグループを比べています。

その結果もやはり、皮下脂肪が多い人のほうが長く生きる傾向が見られました。
5年後の時点での死亡リスクは、およそ4割も低くなっていたのです。つまり、ある程度の皮下脂肪が体にある人のほうが、治療後も良い経過をたどる可能性が高いということになります。

大腸がんでも同じような結果

さらに、2021年に韓国の大学病院で行われた研究では、大腸がんの患者さん987人が対象になりました。手術を受けた時点での皮下脂肪の量と、その後の経過を比べたところ、皮下脂肪が多い人は再発が少なく、生存率も高いという結果になりました。

脂肪が多いグループでは、再発や死亡のリスクが5割ほど低下していたそうです。

「太っている方がいい」って本当?

「太っている方がいい」って本当?

こうした研究をまとめてみると、がんの診断時に皮下脂肪が多い人のほうが、生き延びる可能性が高いという傾向が見えてきます。
つまり、がりがりにやせているより、ある程度ふっくらしているほうが良い結果になることが多い、ということです。

ただし、ここで注意が必要です。
今回の研究で良い影響があったのは「皮下脂肪」であって、「内臓脂肪」ではありません。内臓脂肪は、健康診断などで「メタボ」として問題視される脂肪で、増えすぎると生活習慣病や動脈硬化のリスクが高くなります。がんの場合でも、内臓脂肪が多い人は逆に生存率が下がるという研究があります。

ですから、「太っていたほうがいい」といっても、どんな太り方でもいいわけではありません。皮膚の下にやわらかくつく皮下脂肪がある程度あることが大切で、内臓のまわりに脂肪がつきすぎるのは避けたほうがいいということです。

すべてのがんに当てはまるわけではない

また、すべてのがんで同じ結果になるとは限りません。
たとえば、乳がんの研究では、皮下脂肪が多い人のほうが再発しやすく、生存率も下がるという報告があります。これは、女性ホルモンと脂肪の関係が影響していると考えられています。

つまり、「脂肪があるほうがいい」という話は、がんの種類や治療法によっても変わってくるということです。脂肪は一概に悪いものではありませんが、がんのタイプによってはリスクになることもあります。

痩せすぎはリスク、でも「健康的な太さ」を意識

ここまでの研究を総合すると、「やせすぎ」はがんの治療や回復に悪い影響を与えることが多いようです。
食事が十分にとれない、筋肉が減って体力が落ちる、免疫力が下がる——こうした状態では、がんと闘う力が弱くなってしまいます。

一方で、適度な皮下脂肪は、エネルギーの貯金のような役割を果たし、治療中の体への負担を和らげるクッションにもなります。また、皮下脂肪がある程度あると、体温を保ちやすくなり、体調を安定させる効果も期待できます。

まとめ

まとめ

今回紹介した研究からわかるのは、「太っている=悪い」とは言い切れないということです。
がんの治療やその後の経過を考えると、少しふっくらしているほうが生き延びやすいという結果が複数の研究で示されています。とくに、皮膚の下につく皮下脂肪は、体を守るバリアのような役割を果たしているのかもしれません。

ただし、内臓脂肪が増えすぎるのは別問題です。
そして、がんの種類によっては脂肪が多いほど不利になるケースもあります。結局のところ、「やせすぎず、太りすぎず、バランスのとれた体を維持すること」が、健康の基本であり、がんと闘う力を支える最も大切なポイントだといえるでしょう。

今回は、「皮下脂肪が多い人は『がん』に強い?」という、少し意外な研究結果についてお伝えしました。
数字や専門的な言葉だけで判断せず、自分の体をいたわり、バランスを大切にすること。それが、がんを遠ざけ、もし病気と向き合うことになっても、前向きに生きる力になるはずです。