私たちの皮膚は、健康状態を映す「鏡」とも言われています。肌の状態や変化は、体の内部で起きている変化や病気の兆候を映し出すことがあります。そのため、皮膚に現れる変化、特にブツブツや発疹は、単なる皮膚のトラブルとして片付けられるだけでなく、体全体の健康状態を知る手がかりとなる場合があります。近年、皮膚の症状とがんとの関連についての研究が進み、皮膚の異常ががんの「前兆」となるケースも報告されてきました。今回は、特に「皮膚にブツブツができる病気」に焦点を当て、それがどのようにがんと関連している可能性があるのかを解説していきたいと思います。

じんま疹は、皮膚に赤く盛り上がった膨疹(ぼうしん)が現れ、数時間から数日で跡形もなく消える特徴的な皮膚症状です。一般的には、食べ物や薬によるアレルギー反応が原因となることが多いですが、運動や温度変化、さらには精神的なストレスによっても発症することがあります。
しかし、じんま疹が単なるアレルギー反応だけでなく、体内での病気のサインである可能性も報告されています。特に注目されるのが、がんとの関連です。今年6月に発表された論文(British Journal of Dermatology)では、デンマークの医療データベースを用いたコホート研究により、じんま疹患者のがん発症リスクが検討されました。この研究では、じんま疹と診断された患者とそうでない人を比較し、その後のがん罹患率を追跡しました。結果として、じんま疹患者は診断後1年以内にがんを発症するリスクが49%上昇し、さらにその後数年間もリスクが6%増加していたことが報告されています。特に、血液のがんであるリンパ腫が多く、非ホジキンリンパ腫に関してはリスクが約3倍になることが示されました。
この研究結果から、じんま疹が出現した際には、短期間でのがん発見の可能性が高まることが示唆されます。したがって、長引くじんま疹や原因不明の症状がある場合には、皮膚科の受診に加えて、内科での検診も検討することが望ましいと言えます。

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜伏した後、免疫機能の低下や過労、ストレスなどを契機に再活性化して発症する病気です。「痛かゆい」と表現されることが多く、神経に沿って赤い発疹が出現するのが特徴です。発疹は体の左右どちらか一方に沿って現れるため、見た目でも帯状であることがわかります。
近年の研究では、帯状疱疹とがんとの関連も報告されています。2019年に発表されたJournal of Infectious Diseasesの研究では、オーストラリアの国民データベース(24万人以上)を用いた観察研究により、帯状疱疹と診断された人がその1〜2年後に血液のがんを発症するリスクが約2倍になることが示されました。また、イギリスを対象にした研究では、帯状疱疹が認められた人は、その後がんが発見されるリスクが平均2.4倍、若年層では6.6倍に上昇することも報告されています。さらにアジア人男性を対象とした研究では、帯状疱疹が診断された男性に前立腺がんのリスクが上昇するという結果もあります。
これらの研究結果から、帯状疱疹は単なる皮膚疾患に留まらず、体内でのがんのサインとして現れる可能性があることが分かります。特に、体力の低下やストレスが重なった時に発症する帯状疱疹は、免疫機能の低下を反映していることもあり、注意深く観察する必要があります。
まれではありますが、がんが皮膚に転移することもあります。皮膚転移は、乳がんで最も多く見られ、その他には肺がん、腎臓がん、大腸がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がんなどでも報告されています。皮膚転移の特徴としては、比較的かたく、出血しやすいブツブツやしこりとして現れることが多く、がんの治療を行わなければ徐々に大きくなり、広がる傾向があります。
過去の研究では、がんで死亡した患者1000人の病理解剖を行ったところ、肝臓や肺、骨などの内臓に転移があるケースが多く見られましたが、その中で皮膚への転移も10%未満ではあるものの確認されました。皮膚への転移は、内臓がんの発見の契機になる場合もあり、皮膚に出血しやすいブツブツやしこりが出現した場合には、早期に医療機関で診察を受けることが重要です。

以上のように、じんま疹や帯状疱疹、さらには皮膚へのがん転移といった皮膚症状は、体内で何か異常が起きているサインである場合があります。特にじんま疹や帯状疱疹は、がんの前兆や体内のがんの存在を知らせてくれるサインとして現れることがあるため、軽視せずに注意深く観察することが大切です。
長引く症状や繰り返す症状、悪化している症状がある場合には、まず皮膚科を受診すると同時に、必要に応じて内科での総合的な検診を受けることをおすすめします。皮膚は私たちの体の健康状態を映す鏡であり、日常的に観察することで、早期発見や早期対応につなげることが可能です。
皮膚の異常は、多くの場合は単なる皮膚疾患であることが多いものの、その背後に隠れた病気を早く発見する手がかりとなることもあります。日頃から自分の皮膚の変化に敏感になり、必要に応じて医療機関で相談することが、健康を守るうえで非常に重要です。
この記事では、皮膚症状とがんの関係を整理し、日常でどのように注意すべきかを解説しました。皮膚に異常を感じたら自己判断せず、早めの受診を心がけましょう。