がん治療というと、多くの人がまず
「手術」
や
「抗がん剤治療」
を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、近年ではこれらに並ぶ“第三の治療法”として、
放射線治療が注目されています。
身体への負担が少なく、通院しながら治療を
続けられるケースも多いことから、
「体にやさしいがん治療」
として広がりを見せています。

放射線治療は、がん細胞を狙って放射線を照射し、
細胞の増殖を止めたり死滅させたりする治療法です。
「手術のように体を切らない」
「抗がん剤のように全身に副作用が出にくい」
といった特徴があります。
特に、近年注目されている「SBRT(体幹部定位放射線治療)」は、
最先端の放射線治療のひとつです。
この方法は、多方向から放射線を集中的に当てることで、
がんのある部分だけに高い線量を届けることができます。
周囲の健康な組織への影響を最小限に抑えられるため、
まさに「ピンポイント照射」と呼ばれています。
さらに、従来の放射線治療が数週間かけて20〜30回行うのに対し、
SBRTではわずか4〜10回ほどの短期間で治療が完結します。
通院回数も少なく済み、副作用も軽いことから、
仕事や日常生活を続けながら治療を受けられる点が大きな利点です。
がんの治療法を選ぶ際、患者さんや
家族が最も心配するのは「体への負担」でしょう。
手術は確実に腫瘍を取り除ける反面、身体への
ダメージが大きく、回復に時間がかかります。
一方、放射線治療は痛みがほとんどなく、入院も不要
であることが多いため、
「高齢者」
や
「体力の低下している患者さん」
にとって大きなメリットがあります。
実際、海外の報告では、早期肺がんを対象とした調査で、
手術を受けた患者よりもSBRTを受けた患者の方が、
治療後30日以内および90日以内の死亡率が低かった
というデータがあります。
特に70歳以上の高齢者ではその差が顕著で、
「体力的なリスクを減らせる治療法」
として注目されています。
もっとも、長期的な生存率や再発率については、まだ明確な結論は出ていません。
一部の研究では
「3年生存率がSBRTのほうが良好だった」
とする報告もありますが、すべての症例で手術に代わるとは限りません。
それでも、高齢者や手術が難しい患者にとっては、
確実に選択肢の幅を広げている治療法といえます。

2020年の診療報酬改定により、SBRTの保険適用範囲はさらに広がりました。
現在は以下のようながんが対象になっています。
このように、かつては限られた症例にしか使えなかったSBRTが、
今ではさまざまながんに対して応用できるようになっています。
これにより、より多くの患者さんが「体にやさしい治療」を選べるようになったのです。
もちろん、放射線治療が
「万能な治療法」
というわけではありません。
治療効果が高いのは、腫瘍がある程度限局している場合に限られます。
たとえば、胃や大腸といった消化管のがんでは、
周囲の臓器が放射線の影響を受けやすく、適用が難しいことがあります。
また、副作用がまったくないわけではありません。
照射部位によっては、皮膚の赤みや倦怠感、
臓器の炎症などが起こることもあります。
こうした点は、主治医や放射線科医と十分に相談し、
メリットとリスクを理解したうえで治療法を選ぶことが大切です。

外科的治療に比べて放射線治療は、
体への負担が少なく、痛みも少ないという点で、
患者さんの生活の質(QOL)を大きく改善する可能性があります。
特に、高齢者や合併症を持つ方など、
「手術リスクが高い患者さん」
にとっては、SBRTは重要な選択肢の一つになり得るでしょう。
ただし、放射線治療の長期的な効果については、
今後の研究を待つ必要があります。
現時点では、
「手術が可能な人は手術、難しい人には放射線治療」
という住み分けが現実的です。
がん治療は、どの方法を選んでも“完璧”はありません。
大切なのは、
「自分の体にとって何が一番やさしい治療なのか」
を考えることです。
手術・薬物療法・放射線治療──それぞれの長所と限界を知り、
医師とともに最適な方法を選ぶことが大切です。