看護師も知っておきたい!NPPVが急性心不全に効果的な理由を解説!

 医療現場では、急性心不全や呼吸不全の患者さんに対して「NPPV(非侵襲的陽圧換気:Non-invasive Positive Pressure Ventilation)」が使用されることがあります。特に、急性心不全においてNPPVが効果を発揮する理由を理解しておくことで、治療の目的や効果をより深く把握し、患者さんのケアに役立てることができます。

 今回は、NPPVの仕組みや適応、急性心不全における効果、さらには看護師が注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。


NPPVとは?—非侵襲的な呼吸補助

 NPPVは「非侵襲的陽圧換気」という名の通り、侵襲性の少ない呼吸補助法です。気管挿管や気管切開によって気道を確保し、機械で呼吸を補助するような侵襲性の多い呼吸補助法は、患者さんにとって大きな身体的負担を伴います。

 一方で、NPPVは鼻や口を覆うマスクを装着し、機械で空気を送り込むことで呼吸を補助します。気管挿管や気管切開を必要としないため、患者さんへの負担が軽減される治療法です。

NPPVが適応される患者さん

NPPVが使用されるのは、以下のような病態や状態の患者さんです:

  1. COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪
  2. COPD患者の抜管後やウィーニング(人工呼吸器からの離脱)
  3. 心原性肺水腫(急性心不全を含む)
  4. 免疫不全患者の呼吸不全

 これらの患者さんは、酸素化や換気の改善を必要としながらも、非侵襲的に治療を進められる可能性があります。特に急性心不全におけるNPPVの効果については、呼吸と循環の両方に作用する点が重要です。


NPPVが改善する呼吸状態の3つの異常

NPPVは以下の3つの呼吸状態の異常に対して有効です。

①酸素化の異常

 酸素化の異常とは、血液に十分な酸素を取り込めない状態を指します。例えば、肺水腫の患者さんでは、肺胞内に液体が漏れ出し、酸素の取り込みが阻害されることがあります。
⇒NPPVの効果:陽圧換気によって肺胞に高濃度の酸素を送り込むことで、酸素化を改善します。また、NPPVがかける圧力は、肺毛細血管から肺胞への液体漏出を抑制する働きもあります。その結果、動脈血酸素分圧(PaO2)が早期に改善されます。

②換気量の異常

 換気量の異常は、体内の二酸化炭素が適切に排出されない状態を指します。例えば、COPD急性増悪では換気障害により高二酸化炭素血症が起こります。
⇒NPPVの効果:陽圧換気により二酸化炭素を効率的に排出できるようになり、換気不良による低酸素血症が改善されます。

③呼吸仕事量の異常

 呼吸仕事量とは、呼吸を維持するために必要なエネルギー量を指します。例えば、頻呼吸や努力呼吸(呼吸補助筋を使用した呼吸)によって呼吸筋が疲労すると、呼吸状態を維持することが困難になります。
⇒NPPVの効果:陽圧による呼吸補助を受けることで、呼吸仕事量が軽減します。その結果、呼吸筋が消費する酸素量が減少し、全身の酸素化も改善されます。


NPPVの循環動態への影響—急性心不全に効果的な理由

NPPVは呼吸状態の改善だけでなく、循環動態にも影響を与えることが特徴です。急性心不全においては、NPPVによる前負荷の軽減と後負荷の軽減が心臓への負担を減少させます。

①前負荷の軽減

 前負荷とは、心臓が収縮する前に心室にかかる負荷、すなわち心室に流入する血液量を指します。本来健康な心臓では寝室に入ってくる前負荷が大きければ大きいほど、心臓のポンプ機能、つまり血液を前進へ送り出す能力は大きくなります(フランク=スターリングの法則)。

 しかし、心臓の機能が低下している非代償性心不全の方の場合は前負荷に見合った心拍出量を維持できず、血液が渋滞を起こしてしまいます。その結果、肺うっ血になり、さらにはうっ滞した血液の圧力によって肺胞内に水が漏れだしてくる肺水腫を引き起こします。

⇒NPPVによる前負荷軽減の仕組み

 NPPVの使用により、吸うときに圧力がかかるだけでなく、常に陽圧がかかるため、胸腔内圧が上昇します。その結果、肺毛細血管を流れる血液量が低下し、静脈還流量が低下し、心臓に戻る血液量が減少します。それに伴い、心室の前負荷が軽減され、肺うっ血が改善されます。

 また、ラシックスなどの利尿剤を使用することによって尿として外へ水分を排出させる治療が並行して行われることもあります。この際、看護師は膀胱留置カテーテルの挿入を迅速に行い、尿量のモニタリングを徹底する必要があります。

 利尿剤の使用によってどのくらいの尿が出たかを医師は確認したいですし、患者さんは尿意を催しますから、尿を我慢していると交感神経が優位となって、これもまた心臓への負担となるので、タイミングを見て早々に対応をするようにしましょう。


②後負荷の軽減

 後負荷は「心臓が収縮した直後に心臓にかかる負荷」を指します。左心室や右心室が動脈に血液を送り出すときには血液を動脈圧に抗いながら押し出します。動脈硬化のある方や末梢血管収縮によって末梢血管抵抗が増加している方の場合は後負荷が増大しているといえます。

 急性心不全では、酸素不足や交感神経の活性化により末梢血管が収縮し、後負荷が増大します。他にも何らかの原因で心臓機能が急激に悪化して血液を重要な臓器へうまく届けられないような状態に陥ったとき、人の体は重要な臓器へ血液酸素を届けようと末梢の血管を収縮させて、手足や皮膚への血流を後回しにし、その分重要な臓器へ血液が流れるように後負荷を高めて対処していきます。

⇒NPPVによる後負荷軽減の仕組み

 酸素化の改善によって、交感神経優位の状態が解除されます。末梢血管の収縮が緩和され、後負荷が軽減します。また、前負荷軽減によって、全身へ押し出す血液量の減少し、心臓への負担が軽減されます。そして、陽圧換気によって、心臓周囲圧の上昇し、陰圧が減少することで心臓への収縮負荷が軽減されます。

これらの効果により、急性心不全の患者さんの心臓の働きをサポートすることが可能です。


看護師が知っておくべきNPPV使用時の注意点

NPPVは有用な治療法である一方で、使用に際して注意すべきポイントがあります。

1.適応外の患者さん
 • 意識が低下している患者さん
 • 気道確保が困難な患者さん
 • 重度の不整脈や血圧の不安定がある患者さん
 これらの場合、NPPVの使用がかえって患者さんに危険を及ぼす可能性があります。

2.マスク装着時のトラブル
 NPPVはマスクを用いるため、以下の問題が起こりやすいです。
 • 皮膚トラブル:長時間装着による圧迫傷や摩擦傷。
 • 不快感:圧力やマスクの締め付けによる不快感。
 適切なマスクサイズの選定や、皮膚保護剤の使用、定期的な観察が必要です。

3.使用中のモニタリング
 NPPV使用中は以下の点を観察し、適切な対応を行う必要があります。
 • 血液ガス分析(PaO2やPaCO2)の結果
 • 呼吸状態(頻呼吸や努力呼吸の有無)
 • 循環動態(血圧や心拍数)
 患者さんの状態に合わせて設定を調整し、早期に異常を察知することが重要です。


まとめ—NPPVが急性心不全に効果的な理由

 NPPVは、急性心不全の治療において重要な役割を果たします。その効果を正しく理解することで、看護師は患者さんに対して適切なケアを提供することができます。

<おさらいポイント>

  1. 呼吸状態の改善
    酸素化の異常、換気量の異常、呼吸仕事量の異常を改善。
  2. 循環動態の改善
    前負荷と後負荷を軽減し、心臓への負担を軽減。
  3. 看護師の役割
    導入準備、皮膚ケア、モニタリングの徹底が求められる。

NPPVは患者さんの呼吸と循環の両方をサポートする治療法です。

その仕組みや注意点を理解し、質の高いケアを目指しましょう。