食中毒の原因と辛い症状を広げない為に救急看護師がすべきこととは

 食中毒は、細菌やウイルスで汚染された食品を摂取することで発症する疾患の一つです。

 腹痛程度の軽症で済むケースもありますが、炎症が波及して重症化すれば、発熱、意識障害、呼吸不全、ショックなど命に関わることもあります。そのため、食中毒の患者さんが救急外来に来院した場合、看護師は迅速かつ的確な対応が求められます。

 この記事では、食中毒の原因や症状、予防策、救急看護師が取るべき行動を詳しく解説します。


食中毒の原因と特徴

食中毒には大きく分けてウイルス性と細菌性があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

1.ウイルス性食中毒

 ウイルス性食中毒の代表例はノロウイルスです。このウイルスは感染力が非常に強く、わずかな量でも体内に入れば発症します。

 • 主な特徴
  o 感染経路:汚染された手指や食事を介して感染。
  o 特性:低温や乾燥に強く、特に冬場に流行しやすい。
  o 症状:下痢、嘔吐、腹痛を引き起こし、脱水症状を伴うことが多い。

 ノロウイルスの感染は家庭や職場、学校などで集団発生するケースが多く、患者本人だけでなく周囲の人々への感染拡大を防ぐことが重要です。

2.細菌性食中毒

 細菌性食中毒は、細菌が食品中で増殖し、それを摂取することで感染します。特に高温多湿の環境を好むため、夏場(6月~8月)に多く発生します。

以下は代表的な細菌とその特徴です:
 • サルモネラ菌
  o 主な感染源:鶏卵や鶏肉。
  o 症状:激しい腹痛、下痢、発熱を伴う。
 • カンピロバクター
  o 主な感染源:鶏肉や牛肉の不十分な加熱。
  o 症状:下痢、腹痛、発熱。
 • 黄色ブドウ球菌
  o 主な感染源:調理者の手や傷口を介して食品に付着。
  o 症状:毒素による嘔吐が主症状。
 • ウェルシュ菌
  o 主な感染源:土壌や腸内、調理後の食品を室温で放置することで増殖。
  o 症状:腹痛、下痢。


食中毒の症状と重症化のリスク

典型的な症状

 • 下痢:水様便や粘血便を伴うことがある。
 • 嘔吐:脱水症状を引き起こしやすい。
 • 腹痛:しばしば強い痛みを訴える。

重症化のリスク

症状が悪化すると次のような合併症を引き起こす可能性があります:
 • 脱水症状⇒嘔吐や下痢が続くことで、体内の水分や電解質が失われる。特に高齢者や小児は注意が必要です。
 • 発熱やショック症状⇒感染が全身に広がると、体温上昇や血圧低下、意識障害などを引き起こします。
 • 腎障害や神経症状⇒重症の細菌感染では腎機能低下や神経系への影響が現れることもあります。


救急看護師が取るべき対応

救急看護師が取るべき対応

救急外来では、食中毒が疑われる患者に対して迅速かつ的確な対応が必要です。

以下に具体的な手順を示します。

1.問診の徹底

食中毒の診断には、患者の食事履歴や症状の経過を把握することが重要です。

問診時には以下を確認します:
 • 食事内容:何をどれくらい食べたか。
 • 発症時期:食事からどのくらいの時間で症状が出たか。
 • 便や嘔吐物の状態:色や形状、臭いの異常がないか。
 • 周囲の状況:家族や職場の同僚など、似た症状を訴える人がいるか。
 • 渡航歴:海外渡航歴がある場合、特定の感染症を疑う。

2.身体所見と観察

患者さんのバイタルサインや身体症状を観察します。

特に以下のポイントを重点的に確認します:
 • 脱水症状:皮膚のツルゴール低下、口渇、尿量減少など。
 • ショックの兆候:血圧低下、頻脈、意識障害。
 • 神経症状:けいれんや意識混濁がないか。

3.感染予防の徹底

救急外来では、食中毒患者が他の患者や医療従事者に感染を広げないよう、感染予防を徹底します。
 • 標準予防策
  o 手袋やマスクを着用し、嘔吐物や排泄物に直接触れない。
  o リネン類や器具は使用後に適切に処理する。
 • 環境整備
  o 患者さんが使用したベッドや周囲を、施設基準に従い清掃・消毒する。


食中毒治療と看護師の役割

食中毒の治療は症状の重さや原因によって異なりますが、看護師が対応すべき重要な場面がいくつかあります。

1.脱水症状への対応

 食中毒の患者さんは嘔吐や下痢により脱水症状を起こしやすいため、水分と電解質の補給が欠かせません。

 軽症であれば経口補水液(ORS)を用いますが、嘔吐や重度の脱水症状がある場合は点滴による輸液が必要です。看護師は輸液の準備や患者の状態観察を行い、適切な治療が進むようサポートします。

2.感染予防指導

患者さんが帰宅後、周囲に感染を広げないためには、適切な感染予防の知識が必要です。以下のポイントを指導します:
 • 手洗いの徹底:石鹸と流水で20秒以上洗浄する。
 • 嘔吐物や排泄物の処理:次亜塩素酸ナトリウムを使用する。
 • 食材管理:生肉や卵を適切に加熱し、調理器具を清潔に保つ。


家庭でできる食中毒予防策

家庭でできる食中毒予防策

厚生労働省が推奨する「食中毒予防の3原則」を紹介します。

1.つけない

 o 食材や調理器具を清潔に保つ。
 o 生肉や魚を扱った後は手指や器具を洗浄する。

2.増やさない

 o 食材を適切に冷蔵保存(10℃以下)する。
 o 調理後は室温で放置せず、速やかに冷却する。

3.やっつける

 o 食材を十分に加熱(75℃以上で1分以上)。
 o 再加熱時も中心部まで加熱する。


まとめ

 食中毒は、細菌やウイルスによる感染症として、日常生活の中で簡単に発生する可能性があります。特に救急外来では、迅速な診断と適切な治療が重要です。

救急看護師が心がけるべきポイント

  1. 問診と観察の徹底:症状や食事履歴、周囲の状況を把握する。
  2. 感染予防:手洗い、標準予防策、環境整備を徹底する。
  3. 患者指導:食中毒予防や感染防止のポイントを伝える。

食中毒は予防可能な疾患です。

患者さんだけでなく、医療従事者自身も感染を防ぐために対策を徹底し、適切なケアを提供していきましょう。