がんの治療を乗り越えたあと、誰もが恐れるのは「再発」です。
がんの再発や転移を左右する主な要因は、がんの進行度や悪性度、そして治療の効果など医学的なものが中心ですが、食事や生活習慣も無関係ではありません。
「食べ物ひとつでがんが急に進行する」ということはありませんが、毎日の積み重ねが体の状態を作り、その差が長期的な再発リスクを左右する可能性があるのです。
そこで今回は、数多くの研究結果をもとに、がん再発のリスクを高める食べ物の特徴を3つのキーワードで整理します。

まず最初のキーワードは「肉中心」です。
特に、牛肉・豚肉などの赤身肉や、ベーコン・ハム・ソーセージなどの加工肉を多く摂る食事は、がんの再発リスクを高めるとされています。
2007年に医学誌『JAMA』に発表された研究では、手術を受けたステージⅢの大腸がん患者1000人以上を対象に、治療中の食事パターンと再発との関係を調べました。
その結果、「肉・脂肪・精製穀物・デザート」などを多く摂る西洋型(ウエスタンダイエット)の人は、そうでない人に比べてがん再発のリスクが約3倍に上昇していたのです。
なぜ肉中心の食事が問題なのでしょうか?
その理由は主に3つあります。
もちろん、肉はたんぱく質源として必要です。
大切なのは「バランス」です。植物性たんぱく質(豆類、豆腐)や魚を中心にし、肉は週に数回・少量を目安にすることが望ましいとされています。

2つ目のキーワードは「精製」です。
白いパン、白米、うどん、ベーグルなど、精製された穀物は、見た目がきれいで食べやすい反面、がんの再発リスクを上げる可能性があります。
2022年に『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』に発表された研究では、ステージⅠ〜Ⅲの大腸がん患者1600人以上を対象に、食事内容と「炎症性食事スコア」との関係を調べました。
このスコアは、食品が体内にどれほど炎症を引き起こすかを数値化したものです。
すると、スコアが高い(炎症を起こす食事が多い)人ほど、大腸がんの再発率が高くなることが分かりました。
炎症を引き起こしやすい食品には、白米・白パン・マフィン・ベーグルなどの精製穀物が含まれます。
精製食品はビタミン・ミネラル・食物繊維が取り除かれており、血糖値を急上昇させる「高GI食品」となります。
血糖値の急変動はインスリンを過剰に分泌させ、がん細胞の増殖シグナルを刺激します。
一方、玄米や全粒粉パンなどの未精製穀物には、血糖値の上昇をゆるやかにし、腸内環境を整える食物繊維が豊富に含まれています。腸内フローラが整うことで免疫機能が高まり、がん細胞の再発を抑える働きが期待できます。

3つ目のキーワードは「加糖」です。
砂糖で甘くした飲料やお菓子は、がん再発のリスクを確実に押し上げる要因とされています。
2014年に『プロス・ワン(PLOS ONE)』誌に発表された研究では、ステージⅢの大腸がん患者1000人以上を対象に、加糖飲料の摂取量と再発リスクを調べました。
結果として、1日2本以上の加糖飲料(炭酸飲料や砂糖入りジュースなど)を飲む人は、ほとんど飲まない人よりも再発リスクが60%以上高いことが分かりました。
さらに、BMIが25以上の肥満傾向にある人では、リスクが2倍以上にもなっていたのです。
加糖飲料は、短時間で大量の糖分を体内に取り込むため、血糖値とインスリンが急上昇します。
この状態が続くと、体内で慢性的な炎症や酸化ストレスが生じ、がん細胞の再成長を促す環境が整ってしまうのです。
「甘い飲み物くらい…」と思うかもしれませんが、500mlの炭酸飲料には角砂糖15〜20個分もの糖が含まれています。
水やお茶、無糖コーヒー、炭酸水などに置き換えるだけでも、体の負担は大きく減らせます。
3つの研究を通して見えてきた共通点は、
がんの再発を高める食事には「肉中心」「精製」「加糖」という3つの特徴があるということです。
逆に、再発リスクを下げる食事は、野菜・果物・全粒穀物・魚・豆類を中心とした食事です。
いわゆる「地中海食」や「伝統的な和食」は、この条件を満たしており、抗酸化作用・抗炎症作用・免疫機能の維持に優れています。
食べることは、人生の喜びのひとつです。
だからこそ、「好きなものを我慢する」ではなく、「体が喜ぶものを選ぶ」という意識が大切です。
がん再発を防ぐための食事は、特別な治療食ではありません。
日々の食卓で少しずつ「いい選択」を積み重ねることこそが、最も確実で、最もやさしい治療の延長線なのです。