フコイダンはがんに効くのか?

私たちの食卓によく登場する海藻。味噌汁の具や酢の物、サラダなど、日常的に口にする機会が多い食材です。その中でも、最近とくに注目されているのが「フコイダン」という成分です。名前を聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。健康食品やサプリメントの広告で、「免疫を整える」「がんに良い」といった言葉とともに紹介されることもあります。では、このフコイダン、本当にがんに効果があるのでしょうか。今回は、その真相について分かりやすくお話ししていきます。

■ フコイダンとは?

■ フコイダンとは?

フコイダンとは、海藻の表面にあるネバネバしたヌメリ成分のことをいいます。特に「褐藻(かっそう)」と呼ばれる種類の海藻に多く含まれており、代表的なものには、モズク・コンブ・アカモクなどがあります。手で触るとヌルヌルして糸を引くような粘りがありますが、あれがフコイダンです。

この成分は、海藻が波や紫外線などのダメージから自分の身を守るために作り出すもので、自然の防御成分ともいえます。私たち人間にとっても、健康を支えるさまざまな働きがあると注目されてきました。

■ 「がんに効く」と言われる理由

フコイダンが話題になったのは、動物実験や細胞の研究で「がん細胞の増殖を抑える作用がある」と報告されたことがきっかけです。実験では、フコイダンを加えるとがん細胞の動きが鈍くなったり、自然に死んでいく(これを「細胞死」といいます)ケースが見られたりしたことが分かっています。

また、フコイダンにはがんが成長するために必要な「新しい血管をつくる働き(血管新生)」を抑える力もあるのではないかと考えられています。がんは大きくなるために自分で栄養を運ぶ血管を作り出しますが、フコイダンはその血管を作るサインを弱め、成長を妨げるような働きを示したという報告もあります。

■ 免疫力を高める働きも

もうひとつ注目されているのが、フコイダンが「免疫」をサポートするという点です。人の体には、がん細胞やウイルスなどの異物を見つけて攻撃する“ナチュラルキラー細胞(NK細胞)”と呼ばれる免疫細胞があります。研究によると、フコイダンを摂取するとこのNK細胞の数が増えたり、働きが活発になったりするというデータがいくつか報告されています。

日本の研究チームによる調査でも、男性のがん患者さんの体内で、このNK細胞の活動がフコイダンの摂取後に高まったという結果が出ています。免疫がしっかり働けば、体はがん細胞の発生や増殖を抑える力を保ちやすくなります。そのため、直接がんを治すというよりも、「がんに負けにくい体をつくるサポートをしてくれる」と考えるのが良いかもしれません。

■ 疲労感や筋肉の減少にも関係?

■ 疲労感や筋肉の減少にも関係?

がんの治療を受けている方の中には、強い疲れや体力の低下、筋肉が減ってしまう「サルコペニア」と呼ばれる状態に悩む人も少なくありません。動物実験の結果ですが、フコイダンにはこうした疲労感を軽くしたり、筋肉の減少を防いだりする可能性があることも報告されています。

筋肉の量は、健康や生活の質を保つうえでとても大切です。体力を維持し、治療に向き合うための支えとして、フコイダンのような成分が役立つ可能性はあります。

■ 抗がん剤との併用での効果は?

さらに、いくつかの研究では、フコイダンを抗がん剤などの治療と組み合わせたときに、治療効果を少し高める可能性があるという報告もあります。たとえば、大腸がんの患者さんを対象にした小規模な研究で、抗がん剤治療に加えてフコイダンを摂取したグループの方が、わずかですが生存期間が長くなる傾向を示したという結果がありました。

ただし、この研究は参加者が少なく、はっきりとした結論を出すにはまだデータが足りません。現時点では「フコイダンを飲めばがんが治る」と断言できる科学的な根拠はない、というのが専門家たちの一致した見解です。

■ フコイダンを含む食べもの

■ フコイダンを含む食べもの

では、フコイダンを摂るにはどうすればよいのでしょうか。実は特別なことをしなくても、日常の食事で取り入れることができます。フコイダンが多く含まれているのは、次のような海藻です。

  • モズク(特に沖縄産のオキナワモズク)
  • アカモク(東北地方でよく食べられる粘りの強い海藻)
  • ガゴメ昆布(北海道産でとても粘りが強いのが特徴)

これらの海藻を味噌汁、酢の物、サラダなどに取り入れるだけでも、自然にフコイダンを摂ることができます。特に筆者のおすすめは「アカモク」です。お箸でつかむと糸を引くほどの強い粘りがあり、独特の風味と食感を楽しめます。ご飯にかけたり、ポン酢で和えたりして食べるととてもおいしいですよ。

■ サプリメントは必要?

最近では「低分子フコイダン」といったサプリメントも多く販売されていますが、価格が高いものが多く、中には誇張された宣伝も見られます。基本的には、普段の食事で海藻を食べていれば十分だと考えられます。もし海藻類が苦手だったり、どうしても食べられない場合は、信頼できるメーカーのサプリメントを少量試してみるのも一つの方法です。

ただし、「がんが治る」「薬の代わりになる」といった過剰な期待は禁物です。あくまで、体を整える“サポート”の位置づけとして考えましょう。

■ まとめ

フコイダンは、海藻のネバネバに含まれる自然の恵みです。がんを直接治すという確実な証拠はまだありませんが、実験や一部の研究では、体の免疫を助けたり、疲労を軽くしたり、治療を支えるような働きが報告されています。

健康づくりの基本は、バランスのとれた食事・十分な休養・適度な運動です。そのうえで、フコイダンを含む海藻を取り入れることは、体の力を自然に引き出す手助けになるでしょう。

海の恵みを上手に活かしながら、日々の食生活を整えていくことが、病気に負けない体づくりへの第一歩です。