マムシ咬傷の対応について
マムシとはどんな生き物?
マムシは日本全土に生息する毒蛇で、主に春から秋にかけて、特に7月から9月にかけて多く見られます。この蛇は胴体が太く尻尾が短いのが特徴で、頭部は三角形をしています。山間部の水田や小さな川辺などに生息しているため、川遊びや虫取りなどのアウトドア活動が盛んな季節には遭遇する可能性が高くなります。
マムシが危険とされる理由は、その毒にあります。マムシの上顎には毒牙が2本あり、この牙から噛みついた瞬間に毒を体内に注入します。この毒が皮下や筋肉内に入り込むと、30分程度で激しい疼痛や腫脹を引き起こします。
マムシの毒による症状
マムシに噛まれると、毒の影響で以下のような症状が現れます:
- 皮下・筋肉内への毒の侵入による症状
- 血管内に毒が入った場合の症状
- 疼痛と腫脹がより重症化
- 急激な血小板減少
- 斜視や複視といった神経症状
- 横紋筋融解症やそれに伴う急性腎障害
マムシに噛まれた患者の手足は大きく腫れ上がることが多く、血小板の減少により出血傾向が見られることがあります。また、まれに神経毒の影響で視覚異常(斜視や複視)が生じる場合があります。さらに重症化すると、横紋筋融解症や急性腎障害といった全身管理が必要な病態を引き起こす可能性もあります。
マムシに噛まれた場合の初期対応
マムシに噛まれた場合、医療機関への搬送までに次のような初期対応を行うことが推奨されています:
- 傷口の洗浄
- きれいな水で3分以上、傷口をしっかり洗い流します。
- 毒の排出
- 噛まれてから40分以内であれば、傷口を洗いながら毒を絞り出すようにします。
- 冷却と緊縛
- 噛まれた部位を冷やすとともに、毒が広がらないように手足の付け根部分を軽く縛ることがあります。
- ただし、過剰な緊縛は血流障害を引き起こす可能性があるため、最近では実施しない場合もあります。
医療機関での治療
医療機関では、以下のような治療が行われます:
- 傷口の再洗浄と清潔保持
- 皮膚の切開と排毒
- 噛まれてからの時間が短い場合、皮膚を切開して毒を排出する処置が検討されます。
- 輸液と抗菌薬投与
- 静脈確保を行い、細胞外液の投与を開始します。
- 感染予防のため、セファゾリンなどの抗菌薬を投与します。
- 破傷風予防のため、破傷風トキソイドやテタガムを使用することもあります。
- セファランチンの投与
- マムシの毒の成分を緩和するために、セファランチンという薬剤が早期から投与されます。
抗マムシ血清の使用
重症度が高い場合(Grade3以上)には、抗マムシ血清の投与が検討されます。この血清は馬にマムシ毒素を免疫して生成されたもので、受傷後6時間以内に投与することで腫れや症状の改善が期待できます。ただし、以下の点に注意が必要です:
- 必須投与ではない
- 副作用として、アナフィラキシーショックや血清病を引き起こす可能性がある
- 投与前にステロイドを使用し、副作用を軽減する
抗マムシ血清を使用するかどうかは、患者や家族への十分な説明を行い、同意を得たうえで決定します。
重症度分類(Grade分類)
マムシ咬傷の重症度は以下の5段階で分類されます:
- Grade1: 噛まれた局所のみの発赤・腫脹
- Grade2: 手関節または足関節までの発赤・腫脹
- Grade3: 肘関節または膝関節までの発赤・腫脹
- Grade4: 1肢全体に及ぶ発赤・腫脹
- Grade5: 全身症状を伴うもの
Grade3以上では、抗マムシ血清の使用を含めた追加治療が必要とされます。
看護師の役割
マムシ咬傷の患者対応では、看護師は次の点を意識する必要があります:
- 救急搬送前の情報から病態を予測し、必要物品を準備する
- 採血や処置後は圧迫止血を徹底する
- 患者の不安を和らげるため、丁寧な声掛けを行う
- 必要に応じて、医師への確認を行いながら適切な介入を検討する
まとめ
- マムシ咬傷は春から秋にかけて発生しやすい外傷であり、激しい疼痛や腫脹、血小板減少、横紋筋融解症などを引き起こす可能性があります。
- 医療機関受診までに、傷を洗浄して清潔に保つことが重要です。
- 輸液や抗菌薬投与、セファランチンなどが治療に使用されます。
- Grade3以上では抗マムシ血清の使用が検討されますが、副作用リスクも高いため、患者や家族への十分な説明が必要です。
マムシ咬傷は致命的な外傷ではありませんが、適切な初期対応と医療機関での治療が重症化を防ぐカギとなります。患者や家族の不安を取り除くため、医療者全員で連携しながら最善の対応を目指しましょう。